人物で読むイスラム世界

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532260125

感想・レビュー・書評

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  • イスラム世界の近代史には馴染みがないので新鮮な驚きの連続である。読んでいて楽しかった。

    多くのイスラム急進派の言う通り、イスラム世界は、資本主義とも共産主義ともちがう、第三の社会を志向しており、それは現代的であると思う。ポスト・モダンといえばいいのかもしれないし、共産主義亡き今、オルタナティブな存在としても重要である。
    カダフィーやホメイニーやサイイド・クトゥブの主張していることは、リーズナブルであると思う。
    しかしそれが、実際に善政だったのかというと疑問も大いにあるわけで、イスラム内部からの反省と事後評価がいるだろう。

    イスラム世界は政治的に分裂している。それにはいろいろな経緯や理由があるし、それを混迷とか弱体化と捉えることも出来るだろうけど、違う見方もできると思う。いろいろな社会の在り方を試すことが出来るとも言える。
    実際に政治によって苦しむ人がいるわけなので、実社会を実験かシミュレーションのように語るのは気が引けるが、それでもやはり長い歴史で見れば、多様性は生存を保証すると思う。
    アラブ・ナショナリズムをモダンとするのならば、分裂していることそのものも、ポスト・モダン的な事象の一つかもしれん。

    こうやって、イスラム国家を肯定的に考えてみると、この地に石油が出ることは、いいことだったのか悪いことだったのかなんとも微妙だ。
    それに、アメリカの無軌道ぶりが目立つ。反米はひとつの軸になっているけど、これはかなりの部分でアメリカが悪い。

    アメリカにせよイスラムにせよ、啓典の民の特徴なのかもしれないけど、まずさきに敵味方を分けてしまって、敵によって自己の定義をしているように思う。我=¬敵、というかたちで。
    アメリカもイスラムも、どっちもこれをやっている。
    だからアメリカの政策は頓珍漢だし、イスラムの主張はただのファナティックな超保守主義に見える。

    我=¬敵というのは論理性の罠みたいなもので、これをどうやって相克するかというのも、第三極たるイスラムのダイナミズムに期待できるものかもしれない。

  • 2011.01.15 半読
    思った以上に内容が薄く、正直自分程度の知識レベルであれば特に得るものはないのではないかと思われた。少し内容に落胆したが、エジプトの最後の王などは奇人物として印象的ではあった。

  • 一冊の新書で16人の20世紀政治指導者について記述しており、国も時期もバラバラなので内容は分裂気味(そもそもパフラヴィー国王なんてアラビア語を話せずゾロアスター教を称揚していたので「イスラム」なのかすら疑問)。一定の予備知識がある人が再確認を目的とするか、又は関心のある人物の章だけ飛ばし読みするかすればよいのではないか。ファルーク国王とナセル、パフラヴィー国王とホメイニ師という革命を「起こされた側」と「起こした側」がそれぞれ取り上げられているのが面白い。

  • ★羅列的な人物事典★現代イスラム史に登場する人物の解説書。基本的な事項を抑えるのに参考になる。年表があれば相互関係がより分かって便利なのに。以下に要旨。
    ▼シャイフ・ハマド=1950〜、カタール。95年の無血クーデターで父親を追放。アルジャジーラを創設。米、イスラエルと一定の距離を保ち、アラブ世界の調停役に。天然ガス埋蔵量はロシアに次ぎ2位(どこかで3位という表記も見た記憶が)。05年にはひとりあたり所得が4万6000ドルと世界最高に。米モービルとの関係が深い。カタールのアル・ウダイド基地は米国外最大の米軍基地。
    ▼シャイフ・ムハンマド=1949〜、ドバイ。95年の皇太子就任から実権を行使。石油の少ないドバイを金融都市として作り上げる。
    ▼モハンマド・モサッデク=1882〜1967、イラン・ナショナリズムのカリスマ。イギリスが掌握していた石油利権の国有化を51年の首相就任後に実現した。
    ▼ガマル・アブドゥル・ナセル=1918〜1970、エジプト、アラブ民族主義のカリスマ。自由将校団を組織し、54年に軍事政権を倒して大統領に就任。英仏が所有していたスエズ運河の国有化を実現(第2次中東戦争)させ、アラブ世界のヒーローに。第3次中東戦争でイスラエルに敗れ失脚。イスラムもキリスト教も一体となったアラブ人(アラビア語を話す人)の連帯により、欧米やイスラエルをしのごうと考えた。
    ▼カダフィ=1942 〜。リビア生まれのベルベル人。ナセルを信奉し、アラブ民族主義、社会主義的国内改革に影響を受ける。69年の軍事クーデターで政権を掌握。80年代に反米が強まるが、2000年代には歩み寄る。
    ▼ホメイニー=1902〜1989。79年のイラン革命後に帰国。厳格なイスラム法に基づく社会を形成。
    ▼マフムード・アフマディネジャド=1956〜。87年に交通運輸学の博士号を取得。79年の米国大使館占拠事件の実行グループの一人といわれる。イラン・イラク戦争時は革命防衛隊に所属。92年にアゼルバイジャン州の市長、03年にテヘラン市長、05年に大統領。政権中枢には革命防衛隊出身者が多く、保守色を強める。

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著者プロフィール

現代イスラム研究センター理事長。1955年生まれ。慶応義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。UCLA大学院(歴史学)修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。著書『現代イスラムの潮流』(集英社新書)『中東イスラーム民族史』(中公新書)『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書)ほか

「年 『集団的自衛権とイスラム・テロの報復』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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