IFRSに異議あり: 国際会計基準の品質を問う

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532261238

感想・レビュー・書評

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  • IFRSが上場会社へ一律強制適用されることに対して、具体的な理由を挙げ、反論している本。
    少し前に、某投資銀行が、格下げにより負債の時価評価をしたことで利益が上がった、という記事を読んだときは、そんなことができてしまう負債の時価評価って本当に理にかなっているのかどうかわからなかったが、この本により、IFRSの欠陥の一部だということで納得できた。
    ただ、実務的には、プリンシパルベースだからいろいろな解釈ができて問題、会社の恣意性が介在するから問題、というのも、実際にやってみると悪いことばかりではない。
    法律や規定は万能ではなく、どうしてもグレーゾーンや法の抜け穴が存在してしまう。細かく規定すればするほど、そういった抜け穴を探したり、根本的な理由を考えずに基準に従うのみで思考停止に陥りがちであるが、プリンシパルベースで会社に判断の責任があるとなると、皆結構考えるものである。
    また、日本の税務との関連性の問題も記載されていたが、最近は、確定決算主義に無理がある気がしている。会計上は時価主義を採用していても、税務では、確定した決算書において費用処理されていることが前提となってしまうと、税務に引きずられ、あるべき会計処理から遠ざかってしまう。
    この本では、IFRSを適用することで、会計と税務の2つの帳簿が必要になり、負担がかかると書かれているが、確定決算主義はそろそろ見直しても良いころではないかと思う。
    いずれにせよ、国民的議論はまったくと言っていいほど進んでいないのは事実。それは、政府の責任もあるかもしれないが、実務において、企業経営者があまりにも会計を軽視してきたからではないか?
    日本では、そもそも会計に興味のない経営者が多すぎるのは、会計はあくまで「過去の事象の報告」のみであり、将来を語るのに関係がないと思っているからでは?
    IFRSや米国基準のように、時価主義が進むと、会社の今から将来の価値が開示されるようになるので、経営者も無視できなくなる。そうとらえると、時価主義も悪いことばかりではないのではと思う。
    いずれにせよ、もっと議論があってもいい。

  • 前提知識ゼロだと読むのはかなり厳しい。1%くらいしか理解出来なかったので勉強してから読み直す。

  • 4〜5

  • この本では、IFRSが決して高品質ではない事を主張。企業への強制適用に反対している。その理由として大きいのは、IFRSにおける利益というのは「過去の事実」ではなく。「将来生み出すであろうキャッシュフロー予測」を示しているという事。これでは投資家は、企業の比較検討ができないし、また経営者も正しい経営判断を下す事ができない。
    僕が大いに共感した部分は「IFRSでは自己創設ののれんを認める」という事への違和感だ。
    まだまだ勉強不足な僕ではあるが、参考になる事が多い、素晴らしい本だった。

  • タイトルで結論がわかるのはいいことです。「会計不況」って確か2000年代前半の基準変更でも騒がれましたよね。2013年ごろから個人的にまたIFRSに興味を持ち始めたので読み直してみようかな。

  • 会計をあまり勉強していない者による低レベルな議論が多いように思うが、IFRSも完璧ではないと再認識させてくれる。

  • IFRSでは、英国寄りのプリンシプルベースでの考えにより基づいている。一方日本では、ルールベースでの基準が浸透しており、◯◯すること。✕✕は計算に加算しない。など具体的な基準が存在する。このIFRSでは業界で慣例的に利用されている考え方や方式をとった基準を採用しても良い、原理原則が適っていれば良いとされる。
    日本企業が現行の会計基準に加え、IFRSを採用する際、適応段階にかかる労力とコストに見合った効果は本当に見込まれるのだろうか。

  • 「会社はだれのものか」の著者による、IFRSの品質を問う本書。
    著者は「資産負債アプローチ」、「公正価値」、「プリンシプル・ベース」を中心に、
    IFRSの会計基準としての品質を徹底的に批判し、日本の強制適用に向けた動きに対し警鐘を鳴らす。
    思考停止状態で「グローバルスタンダードだから導入する」と言った考えは危険である、と。 

    確かに、IFRSには多くの矛盾が潜んでいると思う。
    例えば、導入推進派が喧伝する「比較可能性が高まる」というメリットについても、
    経営者の意思が重要視されるIFRSでは、かえって比較しにくくなるのは火を見るよりも明らか。

    巷に、手放しでIFRS導入を推奨している書籍が多い中、
    批判的な本書はIFRSの理解を深めるためにも貴重な一冊。

    (とは言え、経理実務上は導入に向けて準備を進めなければならないのが悲しいところ・・・)

  • けっこういい本だ。
    収益費用アプローチと資産負債アプローチのどちらにも意味はあり、それぞれの目的として、実現した結果と可能性の測定ということと整理している。会計学とはこういうことを研究しているのかということを初めて理解した。
    また、価値の測定のため公正価値をもちいることが、市場価格という不完全なものに頼ることになり、かえって恣意性を助長してしまっている現在のIFRSの隘路が良くわかった。たとえればすべてを剛体として設計をするメカ屋みたい。理論を追求して存在しようのない「公正」を実現しようし、破綻する。
    「ものの価値」はそれを人が使う事で生む価値なのか、それを売るときに得るキャッシュなのか。IFRSにおいて可能性を人が評価したプレミアムとして「自己創設のれん」がどうしても登場してしまう。そのことが「価値が人の創意と働き」にあって、市場では測定できない、ということを証明している。

  • 岩井克人先生が、思考停止状態でのIFRS全面導入に強く反対する書。
    この本を読むことで、IFRSの欠点や矛盾点を系統立てて理解することができるのではないでしょうか。
    「資産負債アプローチ、公正価値、プリシンプルベース」というIFRSの会計観には理論面・実務面に多くの問題がある。
    また、多くの欠点を抱えるのにも関わらず、IFRSの導入には膨大なコストがかかる。
    仮にIFRSを選択適用するとしても、日本企業に不利益が生じないようIFRSの内容を変えるべく戦略的に動くべき(黙って導入するなど有り得ない)。
    といったことが書かれています。
    時間があれば、IFRS賛成論者の著作も読んでみようかな。

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著者プロフィール

国際基督教大学客員教授、東京財団上席研究員
東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.d.)。イェール大学経済学部助教授、プリンストン大学客員準教授、ペンシルバニア大学客員教授、東京大学経済学部教授など歴任。2007年4月紫綬褒章を受章。

「2021年 『経済学の宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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