空港は誰が動かしているのか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532263065

感想・レビュー・書評

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  • タイトルと内容がちょっと違う。タメになる部分と自慢話な感じと。

  • 空港のオペレーションの事かと思いきや、空港の経営の話だった。経済用語ばかりで、内容はまったく入ってこない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685127

  • 日本全国の空港の話と関西空港と伊丹空港の経営統合の話。

  • 関西国際空港の経営権売却(コンセッション)にかかわった元官僚による本。最初の3章で空港経営の要点、日本の空港や関空が抱えている問題を総説し、後半の3章で関空伊丹経営統合からコンセッションまでを語る。空港や民間「風」経営の問題点にかかわる総説には的確ながらさほど新味はないが、実際のコンセッションまでのプロセスについては、あまり具体的な話は書けない部分もあるだろうが、「中の人」が書いただけにたいへん臨場感のあるエピソードが多い。また空港という単なる民間企業ではない公共的な性格の強い、ある意味特殊な施設の運営は新鮮でもある。むしろ民間の企業経営の性質を違う立場から照らし出しているようにも読める。

    羽田の年間利用者は新宿駅の2週間分。ボリュームという意味ではニッチな商売

    爆買いブームは一段落したが、中国を中心にアジアからの流入需要は増加するとの筆者の見立て。中間所得者層になると海外旅行に行く余裕が生まれる。2000年台は9.11や新型インフルエンザ、リーマン・ショックなど海外旅行需要には逆風が吹き続けていたので、近年になって反動が来ての爆買いだと。→たしかに。観光産業に力を入れる政策に違和感もあったのだが言われると納得。最近、丸亀ですらほとんどの観光客が中国人だという話を聞いた

    関空・伊丹経営統合についての国交省上司からの唯一の指示は「地元の合意をきちんと取り付けろ」

    関空会社では外部の民間人を役員に指名してきたが、日本に民間の空港運営会社はないので素人ばかり。素人的な改革案を新しい役員が来る度に謳うことになった

    とりあえずコンセッションを前提として高い数値目標を掲げたが、実現できなかった時の対処は政府側と民間側でまったくイメージが違った。政府側は借金完済が大前提なのでコンセッションに失敗してもまたやり直せば良いと、民間側は一度失敗したディールは色眼鏡で見られれてもう無理なので値段を下げてでもコンセッション完遂→ギリギリ爆買いに救われた

    運営権の期間は44年とした。国内勢は前例がないとして否定的だったが、海外勢は40年以上でないとやらないとの意見が多数。ローリスク・ローリターンの商売なので期間を長くとらないと割にあわないと。特に低成長の日本では

    運営権料収入への延払基準適用とか、土地管理会社との連結納税とか、税制でも工夫をしてもらっている

    PFIではレプワラはやらないのか、殿様だなあ

    霞が関でも最終的な権限は大臣にあるが、実質的な意思決定は課長補佐レベルで決まることが多い。一方、民間はトップダウンで現場で物事が決まらなくて、現場の人間とトップの関係の見極めが必要と(これはコンセッションという一発超大型案件の性質にもよると思うが)。
    矛の民間ーやりたくないことはやらなくて良い、選んだフィールで勝てば良い。だからトップダウンで決めやすい
    盾の公共ー担当すべき分野は法律で決められ不作為も責められる。周辺論点すべてに備えなければいけない。実務を取り仕切る現場からのインプットが必要な割合が大きい(トップが往々にして素人というのもあろうが)

    ノンリコース・ローンが一般的でない日本のファイナンスも障害に。しかしプロジェクト・ファイナンスでは違うだろうと。



    いろんな人がいろんなことを言う現場の雰囲気が伝わっておもしろかったです。

  • とりあえず、空港の待ち時間を何とかしようと思ったら、
    これしかなったのか

    しかし、時間が。。。
    とにかく難しい。
    著者の人並み外れた苦労はよくわかる。
    しみじみと染み出てくるこの感じ。

    一度だ妥協を許してしまうと、
    今後、5年10年先が見えなくなってしまう。


    次は、大阪空港に行きますよ。

  • 国交省出身の著者が、自ら携わった関空会社の運営権売却の一部始終をまとめたもの。1つのプロジェクトを最前線で取り仕切った臨場感が伝わってくるようです。
    逆に、タイトルの「空港は誰が動かしているのか」は運営権売却の話を楽しむための知識を得る位置づけで冒頭に纏められているに過ぎないというか。エアライン好きとしては、どちらでも楽しく読めたのでかまいません(笑

    関空会社サイドの視点でプロジェクトが総括されていて、どのような障壁があったのか、どう対処したのか、何を学んだ/得たのか等が結構生々しくまとまっています。著者なりの今後の関空運営へのエールなのかもしれないし、プロジェクトでのアドバイザー他の方へのお礼なのかもしれない。
    一方で、ディールに参加したのは1者のみで、他の会社が見送った理由についての著者なりの見解は記載されているものの、実際にはどうだったのか(まぁ本にできる訳はないでしょうが。。)はちょっと気になるところ。

    ちなみに、この本を読みきって思ったのは、今後この本自体が著者の名刺代わりになるよなぁ。。ということ。
    それくらい1プロジェクトの内容や汗かきがちゃんと纏まっていて、普通のサラリーマンである自分も真似していきたいと思うような言い回しもあり、なんだかそういう意味でも勉強になりました。
    官と民の違いの話は納得できたような、自分の会社はどうだったかなぁ…と思いを巡らせてしまうような。

  • 前著『航空機は誰が飛ばしているのか』は、国交省航空管制部局での業務経験を核にしつつ、航空という分野に一般市民の関心をひくよう様々なエピソード・雑学をおりまぜた一冊であった。
    なので今回もそんな感じの書を期待した。

    だが実際は、関空民営化(コンセッション実現とそれにむけた組織改革)のプロセスを、自らの業務経験の視点から書き起こすというもの。
    したがって、タイトルが大風呂敷であるわりに内容は限定的で、誤解を招く。
    また仮に関空民営化の話がよみたい読者のみをもともと想定していたとしても、記述の内容は整理されず自らの経験からの視野のみによっており、それゆえ、政府の「役所的な仕事ぶり」を批判したり、関空会社の「自分以外の」人々を抵抗勢力かのように記したり、とあたかも「暴露本」気どりな文面がみられ、そうすることで売り上げを(印税を)稼ごうとしているようにもみえてしまう。

    いずれにせよ、空港は本来設置管理者だけでコントロールしているのでなく、(『大空港24時』等にも描かれているように)多くの主体により回っているものだというのに、タイトルのわりに設置管理者のみに光を当てているのはあまりにミスリーディング。

    コンセッションや制度づくりの話はそれなりにためにはなったし、特に、そこに向かう過程で露呈した日本企業の内向きさにも、少しうならされたが。。。

  • ■空港の需要予測は他の交通需要予測でも広く使われている四段階推定法という手法で行われる。考え方は明瞭かつ論理的ですばらしいが,結果を大きく外し続けたのは明らか。
    ①人口増加やGDP(国内総生産)の成長などから,どこでどれくらい交通が発生するか
    ②それを各地域に分けると,どこからどこへどのくらい人が移動するか
    ③その移動を各交通機関でどのくらい分担するか,
    ④各交通機関のどのルートがどの程度使われるか
    を推定し,最終的に個別の施設の利用者数などを予測する。
    ■元々の想定需要が高過ぎて地域の期待や営業目標が潜在的な実力に対して高過ぎる。
    ■ジェット機が飛び始めた昭和30年代から空港の騒音問題が深刻になった。空港は完全にNIMBY(Not In My Backyard=どこかにあって欲しいが我が家の裏にあるのは嫌)の迷惑施設と認識されてきた。
    ■公益法人は構造上の問題を抱えた見かけだけの民間企業。普通の企業に普通に働く仕組みとしての組織ガバナンスが欠如してしまう性質がある。
    ・株主が国
    ・国の担当部局の担当者が株主を代表して会社をモニタリングするが,国家公務員には投資家としての専門性もなければ,多数の目で会社の情報をチェックする一般株主のパワーもない
    ■関空会社は長い経営不振でペーパーダイエットとか電気をこまめに消そうといった細々としたコスト削減は激しく徹底されていた。それなのに何億円もの投資は採算性や必要性について大した議論もされずに通っていく。暴れる虎は放置してハエばかり追い回していては職員が疲弊するだけ。
    ・採算性を厳格に確認する文化が充分でないこと
    ・「公共的な要請」とか「空港設置者の責任で」といった言葉が乱用され正当化されること
    ■「公共性」とは何かとか「空港設置者の責任」とは何かの議論はされず,何となくの雰囲気で終わる傾向がある。
    ■お役所仕事のステレオタイプに「予算要求体質」(「とりあえず要求」「とにかく使い切る」)あり。
    ・要求しても査定で削られるし,要求しないで不足してもタイムリーに増額してくれることは期待できないので「必要かもしれないお金」はとりあえず要求しておく
    ・予算の増減は前年までの実績をベースに議論され要求の際は細かく議論する割には使った後はあまり厳密に議論されないので,もらった予算はとにかく使い切ろうという行動がイメージされる
    ■組織的なミッションやリーダーシップが不在だと経営計画やその目標も方向性を失ってくる。目標の妥当性について「個々の職員の努力が充分か」,「マクロ的にみて妥当な水準か」といった議論は全く深まらない。
    ■経営状況に関する会議について,いずれのテーマにも共通して,多数の参加者を集め,長時間をかけて議論して結局会議の結論がはっきりしないまま解散になる。すると後から「あの部分は修正を前提に了承が得られたのでは?」,「いや単に個人的な意見を言っただけで修正しなければ了承しないとは言っていない」といったような解釈論争が担当レベルで発生したりする。
    ■公共の常識は民間の非常識
    ■交渉を最も難しくしていたのは,公共と民間の組織文化的な違いにより検討・意思決定の仕組みがそれぞれ違うことを相互に理解していなかったこと。
    ■霞が関での仕事は最終的な判断権限はもちろん大臣にあり,その下に事務次官や局長,課長などのように重層的に縦の階層が構築されているが,仕事の論点整理をして方針を提案しているのは30代後半を中心としたいわゆる課長補佐クラス。外部からの指摘であれ内部的な議論であれ,検討すべき論点や課題が浮かべば,いったんは担当課に検討の指示がおり,課長補佐が中心になって論点を整理し,順次上司に了解を取って方針が決定される。関係者が多様な案件については方向性も含めて,課長補佐レベルで
    案を整理し尽くす傾向が強まる。
    ■民間企業はトップダウンの様相が強い。民間企業の場合,現場ではなかなか決断できない。
    ■矛の民間,盾の公共
    ・業界内の全フィールドで勝つ必要もなく,やることとやらないことを自分たちで選ぶことができ,選んだフィールドで勝てればいいという意味で,持っている矛が鋭ければ鋭いほどいいということになり,トップダウンで決めやすい環境にある。
    ・行政は担当すべき分野が法定されており,やるべきだったことをなぜやらなかったのかという不作為を国会など外部から遡って追求されるリスクを抱えているため,必然的に周辺にあるすべての論点に備えができているのかという議論が不可避となっていることから,持っている矛が周囲を完璧に覆えるほど大きく硬ければいいとなる。
    ■日本の政策決定にある「暗黙のルール」
    ・合意形成とは全会一致のことだと日本人は基本的に思っているが,全会一致とどこかにルールが書いてある訳ではない
    ・考え方が了承されているというが,関係者記名押印の文書があるのかと言えばそれはないが有効
    ■改革が行われ給付が切り下げられようとするとマスメディアは生活に困窮する「被害者」を登場させて痛みを訴えるが,今は幼くて意見を言うことができない,または生まれてもいない将来世代の痛みが増大することには鈍感。
    ■国の改革の本質は民間にある。
    ■社会を取り巻く環境全てにビジネスの理解が不足し,以前として地域・住民の過度の公共への依存がある。

  • 国交省航空局、新関空会社で、関空伊丹経営統合とコンセッション(運営権の売却)に携わった著者が日本の空港事情と関空の経営改革の取り組みを振り返り、公共事業の運営権を民間に売却することによる新たなビジネスモデルの可能性に触れる。
    専門的な用語や話題も多く、理解が及ばないところもあったが、当事者ならではの内幕や葛藤が生々しいし、役人的な捉え方・動かし方も感じられた。また、著者自身の問題ではないが、ミスはミスと認められず、サンクコストが赤字事業を継続させる理由になってしまう公共事業の問題点も見せつけられた。
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