巨象も踊る

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532310233

作品紹介・あらすじ

IBM奇跡の復活。辣腕経営者がすべてを語る。

感想・レビュー・書評

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  • ◾️概要
    踊らない巨象と呼ばれたIBMを復活に導いた、名経営者の綴った一冊。

    ◾️所感
    速く動く。間違えた場合でも、行動を起こすのが速すぎたためなら、まだよい。という言葉は、一ビジネスマンにとっての金言にもなると感じました。クイックダーティで仕事を進めたいと思います。

  • 以前にブックオフで安く購入したが積読状態になっていたため、今年最初の1冊として先日読了。

    メインフレーム(大型汎用機)事業の成功以来、圧倒的な地位を確立したIBMだが、それがいつしか市場の重要性を忘れさせ、外部から影響を受けない内向きの社風が作り出されていった。
    その後PC市場が急速に拡大。IBMは先駆者ながら心臓部のソフトをマイクロソフト、CPUをインテルに任せてしまったため先駆者利益を得られず、次第に会社は巨額の赤字を計上、泥沼化していった。

    そのような状況でCEOに就任したルイス・ガースナーは「今現在のIBMに最も必要ないもの。それはビジョンだ」とし、実効性の高い戦略と迅速な実行を宣言。
    当時は業界全体に標準規格がなかったため、「断片をまとめて価値に変える」ことこそIBMが果たすべき役割と考え、会社分割はせず、将来のネットワーク社会を見据えた統合ソリューション提供企業を目指し、”巨象”を再び躍らせるために様々な手段を講じていく。

    一番苦労し、時間をかけたのが企業文化の変革とガースナーは語る。
    難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば迅速に実行すべきであり、具体的に何を、そしてなぜやるのかを周知徹底することが重要。危機に直面している事実を公に認め、社員に認識させる。そのためにはCEOが絶えず社員の前に出て、わかりやすく簡潔でしかも納得できる言葉で話し、組織全体が考え、行動を起こすように促す努力を情熱を持って何年も続けなければならない(幹部や社員に向けての具体的なメール内容が巻末に掲載されている)。

    素晴らしい本であるとは思うが、構成が「戦略」や「企業文化」といった項目に分けられているため、ややストーリーが分断されてしまっている感がある。
    その点で、三枝匡の『戦略プロフェッショナル』『V字回復の経営』、小倉昌男の『小倉昌男 経営学』といった本ほどには引き込まれることはなかった。話の規模が大きすぎるため、読んでいて臨場感があまり沸いてこなかったせいもあるかもしれない。

    しかし、ポーターやハメルらの論理のケーススタディとして、そして「企業文化こそが経営そのもの」というどこか日本的な考え方も含め、大変有用であり教科書になる一冊であると思う。

  • 世界にまたがるアメリカの超巨大企業が潰れかけている。その企業を変革し、救ったのは門外漢の男。巨大企業のあるべき姿、マネジメントの方法

    ●感想
     倒れかけていた巨大企業、IBMを門外漢の社長が復活させた話。改革のために取り組んだ多くのことが語れ、そのどれもが至極真っ当である。大復活のための魔法、裏技などない。愚直に今の現場を改善し続け、社員に声をかけ続け、組織を変えることでしか、企業は変革できないのである。
     巨大企業に勤める管理職員は必読の本と言ってよい。ルイスが入る前のIBMは恰好の反面教師になる。従業員にとっては居心地が良いばかりで、顧客へのサービスは悪くなるばかりであった。一方、ルイスが入った後で目指した企業像は「市場に目を向け、顧客の声を聴き、より良いサービス創造にまい進する」である。書いてみると当たり前の姿だが、この姿勢を維持し続けるのが難しいのだ。一度大きな成功を掴んでしまうと、どうしても内向き志向になる。自浄作用を働かせられないなら、ルイスのような変革屋を外部から招聘するのも手かもしれない。


    ●本書を読みながら気になった記述・コト
    *ルイスはIT業界は未経験だった。ただ、IBMを復活させた
    ・経営、ビジネスには原則があって、それには業界経験が関係なかったのだろう
    ・IBMはもともとIT企業として高い付加価値を発揮するポテンシャルがあったのだろが、内向きすぎた
    ・それを、ルイスがひっくり返し、サービス企業としてあるべき姿に転換させた
    ・KDDIやJALの経営に携わり、成功に導いた稲森氏を思い起こさせる

    *IBMは「顧客」ではなく「社内」に目を向けていた
    ・IBMの多くの社員が顧客ではなく、社内の争いや昇進にばかりに気を取られていた
    ・それでは、多くの顧客を競合企業にさらわれるのは当然ともいえる
    →何よりも「顧客の声」に耳を傾けるよう、指導した
     →「内輪争いばかりしている」企業としてまっさきに浮かぶのはドラマ「半沢直樹」の所属する銀行だろう。彼らのように、足の引っ張り合いをしているような企業が、高い付加価値を発揮してサービスを作ることは創造できない

    *当たり前のことを熱く語ることがいかに大切か
    ・本書の中でも「意識の中心を社内から顧客に変えよう」ということを、何度もルイスは唱えている。これは、巨大企業において、「当たり前に持っておいてほしいマインドセット」を全従業員に浸透させるかが、いかに難しいかを表している
    ・リーダーはこれでもか、というくらい、従業員、社員のあるべき姿を語らねばならないのだろう

    *ITの潮流が「ラップトップPC提供」から「ソリューションビジネス」になることを見抜いていた
    ・IBMは「サービス」によって躍進を遂げたが、それまでサービス部門は日陰部門、製品部門の二の次と見なされていた
    ・多くの企業オフィスにコンピュータが導入される未来を捉え、ソリューションビジネスの躍進をルイスは予想していた

    *メールによって数万人の社員をマネジメントする
    ・ルイスはメールによって何度も自分の想い、メッセージを伝えている。付録として「メール文面」があるのには驚いた
    ・「なぜこれをやっているのか」「なぜ取り組まなければならないのか」を情熱をもって語れる経営者はやはり強い。社員の観る方向をまとめられる。「社員への発信力」は社長の重要スキルであり、ルイスはメールを使って深いコミュニケーションを取っていた
    ・メールについての長文が何度もあった

    *IBMは新技術を開発するのに、商品化の時点で負けてばかりであった

  • 大企業病をどう克服するかというテーマに近いのかもしれない。今は今で別の問題がありそう

  • 今まで偉大なビジネスマンたちの自伝というものを数多く読んできた。そして彼らのエネルギーや知性に感嘆の声を出していた。著者のガースナーはもちろん知性や実績という面でも申し分ない経営者ではあるがどうやらアルノー、ゴーン、ゲイツといった自分が読んだ自伝の著者たちとは一線を画す経営者だという印象を受けた。崖っぷちのIBMを引き受ける過程での彼の葛藤が、自分は生まれ持ったカリスマ的な経営者ではないという一種の謙虚さのようなものがそれを感じさせる要因だと思う。ガースナーや南場智子といったコンサル経験者は仕事柄、物事を一歩下がってみることを生業としていた為か、自分の立場や会社を客観的にみることに非常に優れている気がする。特にIT企業という物体の特異性について触れる人は今までみたことがない。ゲイツやジョブズ、バルマーたちは要するに奇人変人であり、他の業界にはああいう人たちはいないということを言い切っている。24時間365日仕事の事を考えており市場を支配しなければ気が済まない存在である究極の負けず嫌い、ワーカホリックであると言う。逆にガースナーはそういうタイプではなく自分でもごく普通の経営者だということを十二分に理解している。また本書は経営者らしくあまり脱線することなく必要なことを必要な分だけ書いた無駄のない文章であることが読んでて感じられた。

  • 歴史の生の迫力を感じて面白かった。著者がマッキンゼー出身なのだが、戦略策定だけでは物足りなくなり、現場で実行する側に行きたくなったというのも興味深い。
    特に、マッキンゼーは組織を小さくし、小さい組織の先端、顧客に近い所に判断機能を近づけるという戦略を推奨したが、小さい方が最適で動きが早いと言うのは幻想だという分析をしている。世界、業界の変化が激しい中では権限を分散すると逆に動きが遅くなり変化に対応する事ができないという。納得。

  • 経営者の姿勢、アクション、コミュニケーションとして学ぶ点が多くあった。大企業病は、大きな組織ならどこでもあるが、それを克服して大規模組織を強みにすることが可能であることに勇気づけられた。

  • 成功者の自叙伝。
    最近流行りの両利きの経営テkなものは否定的で、失敗が多かった多角経営をイメージか。
    こうした成功者の話は、時代が変われば適用できないと改めて認識。

  • 20年前に書かれた書籍ながら最近実現された様々な技術、サービスを表現している。経営者として、技術的な知見も十分有していたことが分かる。

  • 必要なのは指導力と、目指すべき方向が明確で勢いがついているとの感覚だ。

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