経営の未来: マネジメントをイノベーションせよ

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532313807

作品紹介・あらすじ

ゴアテックス、グーグル、ホールフーズなど勝ち続ける超優良企業は、現場が考え、決断し、責任を取っている。正統派経営理論の正反対を行く経営管理イノベーションで大成功している企業の具体例を詳しく紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 従業員を重視した経営の本ということなので、日本的なボトムアップ経営とか、トヨタ的な現場力みたいな感じかな、と思って読み始めたが、ハメルの主張は遥かにその先をいっている。ボトムアップ経営じゃなくて、「ボトムが経営する」みたいな従業員ガバナンスの世界。

    著者によると、民主主義も市場経済も生物進化も、専門家が少数で考える事より、多くの人が考え、実行して、結果をフィードバックしてという繰り返しによって生み出されるもののほうが優れているということを示している。にもかかわらず、企業の内部は、依然としてソビエト型のピラミッド的計画経済が支配的である。企業の内部のマネジメントをより従業員参加の市場原理・民主主義的なものにすることによって、時代変化により柔軟に対応が可能になるとのこと。それがいかにして実現するかというと、Web2.0みたいな従業員の自主的な参加による共同作業という感じかな。

    面白いが、本当にそんなことできるんか、と思う。でも,結構、刺激的な実例ものっていて、「あるかも」と思わせる。

    個人的には、WEB2.0によって、世界がより創造的になったり、言論のレベルが向上したかというと疑問も多いので、ただちに著者のいうような経営が実現するとも思わないが、思考は確実に活性化した。現実的かどうかは別として、「出現する未来」とともに、従来の経営学のフレームを超えた刺激を与えてくれる本だと思う。

    著者のアドバイスも、いきなり過激な変革を企業内で起こそうということではなく、すこしづつ試行していくという感じで、好感がもてる。

  • ■一世紀にわたって蓄積されてきた経営管理理論を私自身がまとめるならば、 営業管理は次の要素で構成されるといえるだろう。
    ・ 目標を設定し、そこに到達するための計画を立てる。
    ・動機づけをし、努力の方向を一致させる。
    ・活動を調整・管理する。
    ・人材を開発・任命する。
    ・知識を蓄積・応用する。
    ・資源を蓄積・配分する。
    ・関係を構築・育成する。
    ・利害関係者の要求を、うまくバランスをとりながら満たす。


     …トヨタが多くの重要分野で本当にわが社より優れているのだと認めるまでに五年かかった。次の五年は、トヨタの優位はすべて文化によるものだと思い込もうとした。…次の五年は、我々はトヨタの製造プロセスに注目した。…トヨタの成功は社員の能力とリーダーの責任についてのまったく別の原理に支られているのだということを、我々がようやく自分自身に認めたのは、ここ五年の間のことなのだ。
     驚いたことに、アメリカの自動車メーカーがトヨタの優位を理解するには、二十年近い年月がかかったのだ。


     だから、目指すべきは、危機とは関係なく継続的に自らをリニューアルできる組織を築くことだ。適切な類比は、身体の自律システムに見いだすことができる。ランニングマシンに乗ってジョギングを始めると、心臓は自動的に筋肉への血液供給量を増やす。聴衆の前で話をするときは、アドレナリン腺が自発的にホルモンを分泌して、心拍数を高め、頭の働きを活発にする。また、好みの容貌の人を見かけたら、瞳が反射的に広がって、その人の魅力的な姿に見とれてしまう。自動的、自発的、反射的。これらは大規模な組織の抜本的変革を言い表す言葉としては、あまり一般的なものではない。そして、そこに挑戦課題があるのである。抜本的変革を自動的なプロセスに近づけること、危機に見舞われなくても継続的な自己変革を行うことのできる組織を築くこと。目指すべきはこれなのだ。

    ■経営管理イノベーションを目指す人のための教訓
    1 原理は大切だ
    2 経営管理イノベーションの最大の障害は、ときとして経営管理についての従来の考え方である
    3 創造的な経営管理イノベーションは、厄介なトレードオフの問題を解決することができる

    ■ゴアの成功からの教訓
    1 経営管理イノベーションは往々にして権力配分を変化させる(だから、誰もが熱心に取り組むものと期待してはいけない)
    2 経営管理イノベーションは、短期的にはコストのほうが便益より目立つこともある
    3 臆病になるなかれ

    ■小規模な自己管理型のチーム
     グーグルの一万人の社員のおよそ半分、製品開発に携わっている社員だけをとるとその全員が、エンジニアの数が平均三人の小規模なチームで仕事をしている。三〇人のエンジニアが必要なGメールのような大規模プロジェクトでさえ、三、四人のチームに分けられて、それぞれのチームがスパムフィルターの構築とか、転送機能の向上といった特定のサービスの強化に取り組むことになる。それぞれのチームに「スーパー技術リーダー」がいるが、これはプロジェクトの任務の変化によってメンバーが交代で担う責務である。ほとんどのエンジニアが複数のチームで活動しており、人事部の許可をもらわなくても他のチームに移ることができる。「我々は社員に、人から任命されるのではなく、できるかぎり自主的に取り組んでもらいたいと思っている」と、グーグルの事業運営担当副社長、ショナ・ブラウンは語る。「機会を見つけたら、とにかくやってみることだ」
     小規模なチームには多くの利点があるとグーグルは考えている。プロジェクトが小さく分解されたら、説得しなければいけない相手も調整しなければいけない相互依存関係も少なくなるので、新しい構想をより迅速に実行に移すことができる。チームを小規模にして、すべてのプロジェクトを人手不足気味にしておくことで、グーグルはたいして価値を加えないのに時間とコストを増大させる「過度の化粧」を防いでいるのである。「グーグルのプロジェクトの多くがしばらくベータ版のままになっていたり、荒削りだったりするのはそのためだ」と、メイヤーは言う。そして、「大きな新しい問題の八〇パーセントを解決するほうが、残りの二〇パーセントをこねくり回すより、はるかに大きな価値を生む」と言い添える。マイナス面は、一部のユーザーから、グーグルは「荒削りの」製品をなかなかアップグレードしないという苦情が出ることだ。
     小規模なチームは、グーグルを和気あいあいとした企業に——膨れ上がった官僚型組織ではなく新規企業のように———感じさせる働きもしている。大規模なチームでは、個人の抜きん出た貢献がえてして上司の手柄にされたり、まぬけな同僚によって帳消しにされたりする。グーグルの小規模なチームは、個人の努力とその人の業績の密接なつながりを維持するのに役立っているのである。


     スティーブ・ジョブズは、現在はディズニーの傘下にある、世界で最も成功しているアニメーション・スタジオ、ピクサーの会長を務めていたとき、毛色の変わった人間をよく採用していた。その一人が、「ザ・シンプソンズ」をヒットさせたことで有名な元ディズニーのアニメ作家、ブラッド・パードである。ピクサーに入らないかという誘いを受けたとき、パードはこう言われたという。「我々が恐れているのはただ一つ、自己満足に陥ることだ。我々が緊張感を持ち続けられるよう、外部の人に入ってもらう必要があるんだ」。標準から外れたものを求めるピクサーの貪欲さに惹かれて、バードは入社を決めた。それからほどなく、彼は自分がビクサーに呼ばれた理由をジャーナリストに次のように語った。「私はある程度の破壊を引き起こすためにここに呼ばれたん だ。破壊的であることを理由にクビにされたことは何度かあるが、それを理由に採用されたのは初めてだ」

    ■21世紀の経営原理
    生命→多様性
    ・実験は計画に勝る。
    ・すべての突然変異はミスである。
    ・自然選択は上級副社長を必要としない。
    ・遺伝子のプールは大きければ大きいほどよい。
    市場→柔軟性
    ・市場は階層組織よりダイナミックである。
    ・市場を築けばイノベーターが集まってくる。
    ・業務効率イコール戦略効率ではない。
    民主主義→積極的な参加
    ・リーダーは統治される側の人びとに対して説明責任を負っている。
    ・すべての人に異議を唱える権利がある。
    ・リーダーシップが分散されている。
    信仰→意味
    ・使命には重要な意義がある。
    ・人は自分が大切に思うもののためなら自己変革する。
    都市→幸運な出会い
    ・多様性は創造性を生み出す。
    ・組織の構成の仕方によって幸運な出会いを促進することができる。
    ・巣箱(小さく仕切られたスペース)は、鳥のためのものであって、人間のためのものではない。

  • Good read.

  • タイトルからはマネジメントの話に思えてしまうが、中身は企業改革の指針について。いわゆる科学的管理法に端を発する近代企業組織が、いかに次の形に進化していけるか、そのために取り組むべきポイントをstep by stepで記述しており大変参考になる。

  • 太田文庫 廃棄:2019年5月17日

  • 経営幹部として何に取り組むべきか考えたい方に読んでほしい一冊。

    ロンドン・ビジネススクールで戦略論や国際マネジメントを教える超有名教授の本です。
    経営に求められる視野を学べる、おすすめの一冊です。

    現場の視点ではなく、経営の視点で取り組むべきテーマとはなにか?
    日本基準ではなく、グローバル企業の最先端で起きている経営の未来を知ることができる一冊。

  • p276 10章 IBMの例
    システム的に新しい芽が出られない形だった。
    個人の問題ではない。

  • なんでもっと早くにこの本を読んでなかったのかと痛切に感じる一冊。昨今取り沙汰される事の多い、管理無き経営の基礎教科書と言うべき理論が詰め込まれた良書。
    この手の話題に興味を持ち、アンテナをはっていても、どうしても業界ならではのプラクティス収集に偏ってしまう。本書では多くの業界において使用前、使用後的な比較もなされており、理論だけでなく実践的なプラクティスを参照できる事も魅力的。ドラッカーやクリステンセンのように繰り返し読む事になる一冊だと感じる。

  • 副題になっている「マネジメントをイノベーションせよ」イノベーションはどうあるべき?イノベーションせよという問いかけ、呼びかけに対し、「なぜ必要なのか」、「これまで」と「これから」という対比で書かれている点が理解を促進させる。
    ポストマネジメント、ポスト組織社会にさしかかる中、これまでの経営管理のゲノムを解読し、つくりかえていくために、著者が5つの点(①生命、②市場、③民主主義、④信仰、⑤都市)を適応のベンチマークとしているところがとても興味深い。
    これからの経営管理について考えさせられる。

  • 近代の経営手法、つまり従業員がいて、経営者がいて、幹部がいて、上司がいて、階層構造があって・・・というのは必ずしも経営の最適解ではなく、局所解にすぎない。たしかに近代の経営手法は合理的な面もたくさんあるが、人間の創造性とかモチベーションといったものを排除する。
    なぜ人々は経営手法がこれ以上発展しないと考えているのだろう。人間を組織立たせるための最も良い手法が、今の経営手法だとなぜ思っているのだろう。オープンソースソフトウェアのコミュニティや、株式市場、民主主義に至るまでの、実際に企業として採用したら無秩序になりかねないような例を見てみれば、どうして企業がそれを採用できないのだろう。
    実際にそういった先進的な、イノベーションやモチベーションを奮い立たせるような組織を構築し、企業としても成功している具体例をいくつも示しながら、経営のパラダイムシフトをうながしている。

    市場原理を企業内部にも導入すべき。プロジェクトの進行を上級幹部が決めるのではなく、社員による「賭け」として導入する。株式市場とおなじものである。

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