シャープ崩壊: 名門企業を壊したのは誰か
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2016年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532320560
作品紹介・あらすじ
シャープは権力者の人事抗争の末に悲劇が起きた。堺工場に代表される液晶事業への身の丈にあわない巨額投資の失敗はもちろんだが、経営危機に陥った後に内紛が激化し、効果的な打開策を打ち出せず、傷口が広がったのだ。名門企業が権力抗争によって瞬く間に転落する姿を描く。
感想・レビュー・書評
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シャープが液晶への大型投資を始めるのは2000年代前半である。2004年1月に亀山第一工場が稼働する。続けて2006年8月には亀山第二工場を稼働させる。大型投資は、これで終わらず、2009年10月には堺工場を稼働させる。
この投資は、はじめはうまくいった。亀山第一工場稼働前の2003年度のシャープの連結営業利益は、1,217億円。それが、以降、1,510億円、1,637億円、1,865億円、1,837億円と成長していく。ところが、液晶の需要が落ち込んでいった、2011年度の営業利益はマイナス376億円、12年度はマイナス1,463億円。2013年度は一息つくが、14年度はマイナス481億円、15年度はマイナス1,620億円と落ち込んでいく。その後、シャープは台湾資本の鴻海に買収されてしまう。
「亀山ブランド」として、日本国内に製造拠点をつくり、液晶技術を囲い込み、台湾・韓国勢に打ち勝っていくという、シャープの液晶事業の戦略はうまくいかなかった、ということである。
ただ、本書は、この戦略がうまくいかなかった原因は突き詰めて分析していない。むしろ、経営陣の内紛を描き、シャープがこのように凋落したのは、液晶に関する戦略的判断の間違いと同時に、経営陣が一枚岩になれなかったためである、としている。それはそれで正しい分析であろうが、もう少し戦略分析の部分を詳しく読みたかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シャープと言えば、シャープペンシルを発明いた会社として有名かと思いますが、液晶事業が大当たりして「液晶のシャープ」と言われるようになるまではソニーやパナソニックの後塵を拝する1.5流の家電メーカーというのがボクの印象です。
しかしながら、液晶テレビ以外にも、電卓(1964年)、オーブンレンジなど世界初の製品を世に送り出してきた企業だったりしています。米電気電子学会(IEEE)から技術分野の歴史的な業績をたたえる「IEEEマイルストーン」に電卓、太陽電池、14インチ液晶モニターの3つの製品が選ばれていて、この賞を3度も受賞するのは日本企業として初めての快挙だそうです。
シャープは、世間(ていうかボク)のブランドイメージとは裏腹に、技術力、研究開発力を元来備えていた会社だったようです(液晶ビューカム(1992年)やヘルシオといったヒットもとばしてるし)。
さらに財務基盤も盤石でした(過去形だけど)。シャープの財務体質は、第二次世界大戦後の一時期を除けば健全で、無借金経営が続いていて、90年代前半の自己資本比率はおよそ50%。財務指標は極めて優良です。
それでは、技術もあり財務基盤も盤石なシャープの凋落を招いたのは何だったのかっていうことですが、それはシャープのブランド力を世に周知させた液晶事業への過剰投資が発端でした。町田社長(4代目社長)時代の亀山工場への投資もかなり大きな投資でしたが、片山社長(5代目社長)時代の堺工場への超巨額投資の失敗、その後の社内の権力抗争とそれに伴う戦略なき経営によって、シャープは抜き差しならない状態に陥っていきます。
具体的には2009年に堺工場が稼働するも、地デジ特需の終焉と円高が相まって、2011年には液晶事業の収益が悪化し、2012年には巨額の赤字を計上して経営陣は引責辞任。リーダーシップのない軽い御輿を社長を祀り上げ、院政の覇権を争う内向きの権力闘争に夢中になり、危機を脱する為の貴重な時間を無駄に浪費してしまいました。
正直アホ過ぎます。国策による地デジ特需は利益の先喰いだってことはまともな知能がれば誰だってすぐ分かるのに、液晶パネル(テレビ)に集中投資してしまった愚は弁解のしようがないと思います(「液晶の次も液晶です」とか言ってたし)。あっ、ちなみに日本からのテレビの輸出は1985年以降は微々たるものだったようです。
ついでに地デジ特需の折、パネル受給が逼迫するなかで、自社製テレビへの供給を優先し、外販に回すパネルの量を制限してソニーや東芝を激怒させたという、どこの途上国よという感じの振る舞いにはあきれて何も言えません。取引先より会社の都合を優先し、商談中でも上司から呼び出しがあると席を立つのも半ば常識というエキセントリックな社風で、下請け企業に対しては執拗に部品の値下げを迫り、横柄な態度で接するシャープの悪評は、地元の関西地域ではよく知られていたそうで、取引先を「おまえ」呼ばわりし、怒鳴り散らすのは当たり前という「下請けいじめ」の常連だったようです(下請法に抵触しないのか?)。これが一部上場企業のすることかと思うとガッカリです(なので、経営危機に陥っても内資系企業はどこも助けてくれなかった)。
こんなあきれた社風を改善するためか、高橋社長(7代目社長)は社長就任早々に過去の権力者達と決別し、権力を社長に集中させて、ホンダのワイガヤを模倣しり、「さん」付け運動等を実施して企業風土改革をはかりました(このご時世で「さん」付け運動始めるとか、どんだけ社内風土が周回遅れしてるんだよって思います)。しかしながら、業績がちょっと回復すると危機感が喪失してちょっと調子に乗ってしまいます。で、結局、再び赤字に転落し、挙げ句の果てには自己資本比率は10%を下回り、有利子負債は1兆円規模になってしまいます。で、従業員を人切りし、業績悪化の責任は仲の良くないボードメンバーに押しつけ、自身とそのお仲間(仲良し3人組)はちゃっかり残留します、メインバンクの傀儡として(まぁ、企業風土改革って一番難しいよね。一朝一夕できるわけがない)。
ついでにこの高橋社長が面白いのは、3千人超の希望退職者が会社を去った翌日に「人が重要だ」という内容の社長訓辞を出す正に目の付けどころが斜め上なセンスです。
創業者の早川徳次は社員を家族のように大切にしたと言い、「和は力なり、共に信じて結束を」を地でいく経営をしてきたようですが、現経営陣は部下や一般社員に詰め腹を切らせ、自身は銀行の言いなりになり保身に汲々としているようにしか見えません。一番無能なのは、破綻必死の状況になるまで無策であったトップ・マネジメントだというのに。
さて、ここまでシャープの転落ぶりをなぞってきて何か思い出しませんか?
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
平家物語の冒頭にそっくりじゃね?
ってオレは力強く思いました。
シャープと言えば、「目の付けどころが、シャープでしょ。」のスローガンが長らく使われてきましたが(2010年から「目指してる、未来がちがう。」に変わったけど)、ネットの世界では「目の付けどころが斜め上」などと揶揄されたりしています。だって、
デジタル複合機用プラズマクラスターイオン発生装置とか
「ともだち家電」シリーズとか
健康コックピットとか
極めつけは、ロボット型スマートフォン「RoBoHon」とか
誰がターゲットだよ?
って思いません?
シャープは、
経営危機によって独創的な家電商品を生み出す余裕が現場から消えた。
消費者ニーズを最優先して商品を開発するという良さがなくなった。
自由闊達さがなくなった。
なんて言われているようですが、斜め上ばかり見ているようでは経営再建は夢のまた夢でしょう。
結局はあだ花だった液晶事業のかりそめの成功に浮かれ、
傲慢で不遜になり、
身の丈に合わない金の使い方をして、
失敗すると社内抗争に明け暮れて、
責任は部下にとらせ、
今までのツケが回ってきて、誰も助けてくれないとか
シャープの凋落は必然だったんじゃね?って思います。最終赤字が2500億になって債務超過になりそうだとか報道されてるけど、自業自得感でいっぱいです。
それでは最後にシャープの最も痛々しい話を一つ。
シャープのナンバー2のの長谷川祥典専務(コンシューマーエレクトロニクスカンパニー社長)は、シーテック(映像、情報、通信の国際展示会)でスティーブ•ジョブズのone more thingを真似してモバイル型ロボット電話RoBoHon(ロボホン)のプレゼンをしたそうです。実際見た訳じゃないけど、どんだけ罰ゲームなんだよって思いました。痛々し過ぎますよ。そもそも誰得なの?誰が欲しいの?税込みで20万超えてるんですけど。
ドリフのいかりや長介ばりに
ダメだこりゃ
そう思いました。 -
平易で簡潔な本だったので一日で一気に読んだ。企業経営上、大変参考になるというか、つくづく冷や汗の出る本だった。まだ進行中の事態なので詳細な記述は避けるが、とにかく、1、経営は絶頂期のときに綻びが埋め込まれたり生じたりするので絶頂期の時にこそ経営全般の点検をすべし。2、1つの事業に過度に利益を寄せない、過剰に投資をしない。出来る限り事業の柱を複数本化させる。財政の健全を保つ。3、実り多くしてますます頭を垂れる稲穂になる。奢らない。という3点が企業や事業の大崩壊を防ぐ方法かなと深く思いました。他山の石としたい。「創業者の精神は語り付けても受け継げない」これも覚えておきたい。
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シャープ売却の記事は毎日のように出ているけど、こうなるまでの過程がここに記されていた。個人的な意見として、日本が真のグローバル社会になるためにはホンハイへの売却は間違ってなかったと思う。弱い企業は強い企業に食われるのはビジネスの世界では当たり前だ。それが当たり前のように国境を越えて買われ、売られすることが本来のマーケットの形だ。一方で日本の技術が流出したことについては残念だが、間接的には高い技術力がマーケットと合致できなかった技術者たちの責任でもあると思う。これから、シャープがどうなるのかは分からないが、また復活し、強い日本の企業として世界で戦えるようになれば嬉しい。
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社内における権力争いに注力し、お互いに足を引っ張りあった結果、リーマンショックからはじまる円高などへの対応に遅れ、崩壊にいたっているシャープに関する書籍。自身の身の丈を見誤っての堺工場の建設などもこのような権力争いが産んだ産物であろう。現在シャープは鴻海からの出資を受けるか否かの瀬戸際にあり、交渉がなされているとの報道がされている。そこでは40歳未満の従業員の雇用が約束されているという。ただ、優秀な人材はおそらくとっくに辞めていると思われ、現時点の残りの若手従業員がどの程度シャープの復活に貢献できるのか、疑問符がついてしまう。とはいえ、これらの比較的新しい世代は、鴻海の血の流入を機にこれまでの社内政治的な企業文化から化けることができるかもしれない。いずれにせよ今後もシャープの動向には目をつけていかねばならない。
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現在進行形で会社の行方に暗雲立ち込めているシャープが、経営権力者の対立を通して描かれていて、一気に読み終えてしまう。池井戸潤ストーリーのリアル版ともいえるが、組織論から見ると資金繰り悪化で経営危機にあるのに、高橋社長は風土改革に専念して、さらに悪化させている最悪な経営者と言える。O理論(Organization)が先か?、E理論(Economic))が先か?(佐々木)
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会社は誰のものかということを、考えさせられる本。
少なくとも、権力争いは良くないですね。
われのこととし、日々改めよう。 -
シャープの権力闘争によりシャープの会社が傾く話。
結果論から人の悪い面を書き連ねて、なるべくして会社が傾いたなと思え、第3者が見たときに面白い読み物だと思う。
末端社員としてはこの話がどれほど本当かわからないが、読んだからと言って何か教訓があるわけでもない。
内容があまり気持ちがよくないので、★2.