- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532320638
作品紹介・あらすじ
■人工知能の開発はどこまで進んでいて、何ができるようになっているのか。そして何ができないのか。本書は、企業経営者として日夜、人工知能の応用開発の最前線に立ち、経営実務、ビッグデータの利用、マーケティングなど幅広いビジネス分野の事情にも詳しい専門家が、具体的に人工知能を利用したビジネス、仕事の変貌を解説します。
■人間同士の相性判断といったマッチングの新たなサービスの開発から、モノ、カネのマッチング、監視、トラブル処理、医療・ヘルスケア、流通・小売り・営業、運輸(自動車)、製造業、広告・マーケティング、農林水産業、人事・労務など、広範なビジネスでの活用について、実際に開発されつつある技術の進歩の方向性にもとづいて展望します。
■本書は3部構成。第1部でディープラーニングなど人工知能を支える技術やビッグデータ、IoTとの関わり、学習・対話能力の向上と社会生活の変化などについて解説します。第2部では、より具体的にさまざまなビジネス・産業分野における人工知能の応用について解説をします。第3部では、展望編として、世界と比較しての日本の人工知能開発の現状や望ましい利用法について語るとともに、シンギュラリティ論に代表される「人工知能が人類を駆逐する」といったダークイメージを非現実的として退け、人間が高い能力を持つ人工知能と共存するための考え方も述べます。
■著者は、AI技術、ビジネス双方に通じるユニークなバックグラウンドを有する専門家。「人工知能の父」といわれるマービン・ミンスキーらとの研究経験を持ち、第五世代コンピューター、機械翻訳技術の開発に携わった経験、大企業のシステム開発などの実務経験も持ちます。現在、ビッグデータ解析はじめさまざまな先端的なサービスを提供する事業を行うとともに、大学で技術経営の講義を担当、ビッグデータ、人工知能に関する啓蒙的な活動も行っています。
感想・レビュー・書評
-
本書が目的とするところは、AI技術の現状を正しく伝えて、「シンギュラリティ」といったような煽り言葉によって持たれるかもしれないAIに対する歪んだイメージを正したいということにある。
著者は次のように書く。
「著者が本書を執筆した大きな動機は、今回のAIブームがバブルとなり、弾けて、前回と同様、産業応用が頓挫することを怖れた点にあります。現時点のAIが人間と同じだとか、人間的な能力、人間的なやり方(本物の意思や責任感が生み出した新発想など)で問題解決する能力で人間を超えたとか、人間が学び得るあらゆることをすでに学べるようになったので、30年以内に全人類の知能を超える、などと喧伝するのも危険といえば危険です」
また、「大したAI技術も使っていないのに普通に検索、レコメンドをした程度で「AI搭載だからすごい!」と発表するような企業によってAIがバズワードとして消費され、いわゆるガードナーの曲線のやま(Hype)を超えて廃れてしまう心配があります」 と言うとき、過去のファジーやニューロといったバズワードが消えていった経緯を思い出している。確かにファジーやニューロはまったくそれが効果を持つ根拠がわからなかったが、AIは、かつて消えていった技術とは違うことは確かである。
著者はAIの議論をする上で、言及するAIをきちんと分類して議論するべきだという。具体的には、「強いAI-弱いAI」、「専用AI-汎用AI」「知識データの量:多いー少ない」の三軸でAIを分類するべきだと主張する。
「実際には何百種類、何千種類の異なる方法、AIがあるのに、実は点義も千差万別ではっきりしない人工知能を、魔法のおまじないのように称するのは、ほぼインチキ臭いといってよい」
現時点では、「強いAI」や「汎用AI」よりも専用型で弱いAIの方が実用的で現在の技術に向いているとし、その精度向上にはデータの量が重要であるが、データが少なければ少ないなりに何とかするというのもポイントのひとつであると指摘するものである。最終的には、上手くAIと共存することができるようになったものがもっともよくAIからの利益を引き出せることができるだろう。実態としては、自然言語処理は難しいが、専用の画像認識であれば人間以上に正確にやれるし、もちろん速度も人間とはけた違いに速い。
著者はいわゆるシンギュラリティ論についても手厳しい。とにかく、シンギュラリティのような夢物語を語ることで生じる誤解やその後の幻滅期について懸念を持っているのである。
「シンギュラリティ論や、「学習」「推論」「感覚的に理解」などの用語をこのように括弧付きでAI専用の定義の下で使わずに、人間の「学習」「予測」などと混同することから生じた未来予測が氾濫しています」
著者がシンギュラリティがすぐには来ないとする理由のひとつが、脳の神経細胞との構造上の違いである。
「3Dの完全立体配線である脳は、ひとつの神経細胞が平均で他の2万個もの神経細胞とつながっており、高々周囲の数個のトランジスタとしかつながれない通常のCPUとは、何桁も複雑度が違います」
もう少し納得感のある説明を挙げると、「ディープラーニングの代表格、CNNやRNNが目下得意とする「パターン認識」は、人の脳内の思考を模した人工知能というより、目や耳からの刺激が何であるかを忠実に判定する視角、聴覚の能力」なのである。
AIの適用を業務でもやっているが、AIにも向いているところと向いていないところがあり、自然言語処理などは相当に難しく、汎用AIの出現は相当先の話であるという考えを共有している。真面目で倫理的な抑制が効いた良本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【感想】
人工知能研究の応用例を丁寧に解説している。類書に多い「雇用がなくなる」とか「人間vs.人工知能」等の煽り文言が本書には見られない。下記サイトでの連載も参考になる。
〈https://japan.cnet.com/blog/nomura/〉
わがままを言えば、索引がほしかった。
↓
[追記2017.04.02]
コメントにて、「オンライン版の索引」の存在を著者の野村直之さんから教えていただきました。
印刷して活用して本に挟みます。
【書誌情報+内容紹介】
『人工知能が変える仕事の未来』
定価(本体2,200円 +税)
四六判 並製 488 ページ
ISBN 978-4-532-32063-8
2016年11月 発売
ビジネスに通じた専門家が、広く、深く社会を変える人工知能の可能性を描く。現在の最先端の技術をもとに、現実的な未来を見通す。
■人工知能の開発はどこまで進んでいて、何ができるようになっているのか。そして何ができないのか。本書は、企業経営者として日夜、人工知能の応用開発の最前線に立ち、経営実務、ビッグデータの利用、マーケティングなど幅広いビジネス分野の事情にも詳しい専門家が、具体的に人工知能を利用したビジネス、仕事の変貌を解説します。
■人間同士の相性判断といったマッチングの新たなサービスの開発から、モノ、カネのマッチング、監視、トラブル処理、医療・ヘルスケア、流通・小売り・営業、運輸(自動車)、製造業、広告・マーケティング、農林水産業、人事・労務など、広範なビジネスでの活用について、実際に開発されつつある技術の進歩の方向性にもとづいて展望します。
■本書は3部構成。第1部でディープラーニングなど人工知能を支える技術やビッグデータ、IoTとの関わり、学習・対話能力の向上と社会生活の変化などについて解説します。第2部では、より具体的にさまざまなビジネス・産業分野における人工知能の応用について解説をします。第3部では、展望編として、世界と比較しての日本の人工知能開発の現状や望ましい利用法について語るとともに、シンギュラリティ論に代表される「人工知能が人類を駆逐する」といったダークイメージを非現実的として退け、人間が高い能力を持つ人工知能と共存するための考え方も述べます。
■著者は、AI技術、ビジネス双方に通じるユニークなバックグラウンドを有する専門家。「人工知能の父」といわれるマービン・ミンスキーらとの研究経験を持ち、第五世代コンピューター、機械翻訳技術の開発に携わった経験、大企業のシステム開発などの実務経験も持ちます。現在、ビッグデータ解析はじめさまざまな先端的なサービスを提供する事業を行うとともに、大学で技術経営の講義を担当、ビッグデータ、人工知能に関する啓蒙的な活動も行っています。
〈http://www.nikkeibook.com/book_detail/32063/〉
【詳細目次】
ブクログに置くには長いので、下記ブログに移しました。
〈http://d.hatena.ne.jp/Mandarine/20170417〉
【簡易目次】
はじめに [011-029]
第I部 人工知能が変える10年後の仕事と社会
第1章 AI(人工知能)は、どこまで進歩しているのか 033
第2章 ホワイトカラーの仕事はどう変わるのか 076
第3章 IoTと人工知能:広がる連携 094
第4章 データ解析がもたらす企業経営の変化:“アナリティクス”が支える“事実”に基づく経営 104
第5章 “認識・認知能力”の高まりがもたらす社会生活の変化 138
第6章 “学習・対話能力”の高まりがもたらす社会生活の変化 173
第7章 業界横断、様々な人工知能の開発と機械創作:メディアの将来を中心に 213
第II部 人工知能が支える10年後のビジネス
第8章 新サービスの開発が始まる 264
第9章 既存サービスの改善と効率化 292
第10章 IT化・高度化する製造業 316
第11章 広告・マーケティングも大きく変化 337
第12章 農林水産業にも広がる活用の場 369
第13章 間接業務にも変化の波 383
第III部 人工知能はどこに向かうのか
第14章 日本のAI開発はどう進めるべきか 399
第15章 AIと人間の未来:ディープラーニングが人類を駆逐する? 442
著者紹介 [489]-
AIを併用して作った索引を、出版社了解の下、オンラインで公開しています:
http://www.metadata.co.jp/the_bo...AIを併用して作った索引を、出版社了解の下、オンラインで公開しています:
http://www.metadata.co.jp/the_book_index
紙に印刷したら50ページ近くになるので、出版に際しては却下されましたが、、ご活用いただければ幸いです。紙書籍のページ番号の上にカーソルもっていくと、kindle版のロケーション番号の範囲も表示されます。2017/03/31
-
-
AIが仕事にどの様にして入りこむのか、どの様な影響を与えるのかを多面的に考察されている。
とにかく著者は、昨今のAIが仕事を奪うとか、知能を持ち人間を駆逐するとかは全くのデタラメだと言う事を強く述べている。AIは総当たり。いわば力づく。膨大なデータを高速なCPUで処理、判定しているに過ぎない。そもそも【意識】の定義も曖昧にコンピュータが自我を持つ事は現実的ではない。仕組みを考えれば至極当然だ。
「道具は人間の能力の一部を超えていて当たり前」。つまりAIとは当然として道具なのである。 -
よくあるAI本と違い、本質をとらえ正しく表現している良書。とくに「ソフトウェア開発者を建築家、デザイナー、アーティストと見なしてきた欧米、中国と比べると、日本の大企業では…ソフトウェア開発者を工場の組立工のように見なす」は完全に同意(ソフトウェア開発をエンジニアリングと表現すること自体違和感というか、嫌悪感すら感じる)。
最後の方、特に人材教育のあたりがややもすると安っぽいその他の一般論と被ってるように感じられたのが、唯一残念。
やはりこのくらいのボリューム感がないとこの手の話は掘り下げられない、ということか。とはいえ、この分厚さはぱっと見ウッ、となる。今回は著者がJ社時代の先輩?同僚?だったのが影響したが、今後の本選びの指標となった。 -
人工知能とひとくくりされている技術を、機能で分類、仕事という切口でその影響と限界を解説したもの。
-
2020年、これからの10年の過ごし方で、人生が大きく変わる。
そう思い、話題のAIの動向を少しでも理解しようと、読み始めたものの、今の自分には少し難しい・・・
でも、以前読んだことがあるビジネス書(仕事ができるやつになる最短の道)の1文が紹介されていた。
自分の学んでいることがつながるって、うれしい。
コツコツと本を読み続け、自分を磨き続けよう -
過去の人口知能ブームをインナーサークルの中でも経験してきたきちんとした経歴を持つ著者が、一般の人もわかるような平易な文章でAIにまつわる歴史や今後の展望について論じた本。
信頼して読める内容なのだけど、ちょっとくどい部分・内容が薄い部分があり、結構飛ばし読みしてしまった。
・(著者が知る)まともな学者はシンギュラリティについては懐疑的
・大阪大学大学院 浅田稔教授のお言葉「知能が明確に定義できていないのに、その人造版=人口知能を定義できるわけがない」 -
閲覧室 007.13||Nom