「歳出の無駄」の研究

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532353148

作品紹介・あらすじ

「まず無駄をなくせ」は正しいか?正論であっても、さしたる効果がなく、まして実現不可能であれば、それは現実逃避の「祝詞」にすぎない。無駄の削減のみを最優先することの愚かさを説き、増税なき財政再建は不可能なことを立証する。

感想・レビュー・書評

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  • ムダがあると思われている歳出には、それほどムダはない。本書をひとことで言えば、そういうことである。この事実をできるだけ丁寧に解説していく。まぁ、特別会計に関する支出分析が不十分な気がするが、それ以外の一般会計に関しては、なかなか説得力ある記述がなされている。ムダがある、あるいはこれを省くということでは十分な解決策とは言えないのは本書指摘のとおりであるが、むしろ、本書からは、現代日本は、使途変更を含む予算の組替こそが不可欠だ、と感じたところである(既得権打破は政治的に困難なのは承知しているが)。

  • 「増税するなら、行政の無駄を根絶してから」。このよく聞かれる主張について著者は激しい批判を加える。無駄の削減と増税はもはや同時並行的に行わない限り、日本の財政の健全化はあり得ない。

  • 日本の財政問題について詳しく書かれており、興味のある人にとっては良い本だと思う。ただ、多くの提言がなされながらも、いっこうに再建の進まない財政問題へのため息を消してくれるほどではなかった。

  • まず無駄を絶対的な無駄、相対的な無駄に分ける。絶対的な無駄は効果がゼロで費用だけかかるもの。相対的なものは効果はあるが少なく居、特定の者だけ。費用は効果以上にかかっている。絶対的な方は直ぐ削減できるが、相対的なものは、特定の圧力団の圧力もあるし、政治的な力学も左右するし、いろいろな面から検討する必要がある。
    特別会計の無駄について、制度を説明し、ある程度の無駄はあるとする。しかし、埋蔵金はないとの立場をとる。余剰金があるとしても、それは将来へのリスクに備えているものである。また、余剰金を特別会計内で運用するば運用益が生じるし、それを一般会計に繰り入れて有効に活用されるかどうかは疑問とする。
    独立行政法人、そこへの天下り、そして高額な役員報酬等については早急に改善する必要がある。
    公務員の人件費について、やはり削減は避けて通れない。年功序列ではなく能力実績給の導入が必要だ。しかし、政策立案部門にふさわしいと考える。
    地方公務員の方がさらに無駄が多い、地方民間との差が大きいという。さらに現業職員は官民格差が大きく、民間業者に委託させた方が経済的だと説く。
    教育費の問題点についても書かれている。
    医療サービスもだ。開業医の報酬が高すぎる、薬剤費も高い、アメリカでは民営化が進み、相当医療費は安いし、規模も大きい。
    公共事業の無駄について、入札制度、天下りの根絶などが主張される。
    補助金も無駄が多いとされる。特に社会保障関係、特に年金関係については、裕福層への支給されていることについて、疑問視される。
    また、地方への補助金は、補助されるが故に、地方自治体に負担感がなく、危険。
    無駄をなくす具体的な案が何点か提起されている。
    選挙制度の改革。現在は地方に公共事業が多く、地方の方が富裕層が多いらしい。一票の格差を是正した方が、有権者の意志を反映させられるという。さらに年代別の選挙区を作り、若者の意志が反映させられるようにするべき。
    会計検査の充実。
    公務員への業績評価の導入。
    予算制度の改革。当初からもう少し具体的な予算額を確定させておく。
    多年度支出を認める。
    民営化。効率的な運営により、充実したサービスを提供。基本的に民間でできるものは民間で。

  • 歳出の無駄などたかが知れている。
    それを議論する事は、増税の先送りに過ぎず、
    財政を悪化させるだけだという立場で書かれた、いわゆる財政再建派の本。

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著者プロフィール

井堀利宏(いほり・としひろ)
1952年、岡山県生まれ。政策研究大学院大学名誉教授。東京大学名誉教授。専門は財政学・公共経済学・経済政策。
東京大学経済学部経済学科卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了(Ph.D取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、同大学教授、同大学院経済学研究科教授を経て2015年同大学名誉教授。同年4月より政策研究大学院大学教授、2017年4月に同特別教授、2022年4月より現職。
著書に『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)、『政治と経済の関係が3時間でわかる教養としての政治経済学』(総合法令出版)『入門経済学』(新世社)など多数。

「2022年 『サクッとわかるビジネス教養  経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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