孤立無業(SNEP)

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.15
  • (3)
  • (9)
  • (21)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 172
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532355777

作品紹介・あらすじ

働くのをあきらめた「ニート」に続く、新しいタイプの未婚無業者=「スネップ」が急増。彼らは社会と接点がなく、ずっとひとりか、家族だけと暮らしている。生活力もないまま、ゆくゆくは生活保護へ。社会的コスト増大の危険は深刻だ。自立への道は見つかるのか-常に時代の最先端に挑んできた著者、渾身の一書!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 孤立無業の問題は、社会が社会として立ちゆかなくなること
    孤立就業も多いのでは?

  • ニートとは異なる”孤立無業”という概念と類型化、そして孤立無業者の実態を調査結果のみに基づき丁寧に説いている本。
    ニートが求職活動の有無なのに対してスネップは友人知人との交流の有無で区別される、いずれも無業者を分類するときの切り口の違いである。

    20-59歳で未婚の人のうち、仕事をしていないだけでなく、普段ずっと一人でいるか、そうでなければ家族しか一緒にいる人がいない人たち。早起きができない、掃除や片付けも苦手。ゲーム中毒やネット中毒のわけではない。ただ趣味がたくさんあるわけでもない。なんとなくテレビを見ている時間は長い。電子メールをやろうにもメールを送る相手もいない。インターネットで検索をしようにも特段に知りたいこともない。だからパソコンや携帯も正直言えばそれほどは使わない。就職活動もずっとしていない。
    −偏見やステロタイプを払拭し問題の本質を正しく捉え共に考えてもらいたいという姿勢は伝わる。

    [more]<blockquote>P3 Solitaryには、「ひとりぼっちの」「他人と付き合いのない」「孤独な」「さびしい」といった意味があります。本来ならば働き盛りであるにもかかわらず、この孤立無業の状態にある人たちが2011年調査では162万人に達していたのです。

    P96 スネップの生活はずっとアナログ的、生活は昭和の時代の無業者と変わらない

    P182 社会は、協力や支え合いなど、他人との何らかのつながりがあって初めて成り立つものです。孤立無業がとめどもなく増えて行った先にある状況とは、既に『社会』とすら言えない、バラバラの人たちが多数いるだけのただの『集団』でしかありません。

    P203 なんとかして孤立無業に「出会う」ことが必要。若者を支援するのも重要ですが、若者を支援する若者を支援することはもっと大事なことなんです。

    </blockquote>

  •  先日読んだ『独身・無職者のリアル』(関水徹平・藤原宏美)と同じく、いわゆる「SNEP」(Solitary Non-Employed Persons=孤立無業者)の問題についての概説書である。
     著者はそもそも「SNEP」という概念の提唱者であり、本書のほうがいわば本家本元だ。

     「ニート」が35歳未満の若年無業者を対象としているのに対し、「SNEP」は59歳以下までの幅広い層の無業者を対象とする概念。「Solitary」の語が示すとおり、社会的孤立に陥っていることを重視する概念でもある。

     本書を読むと、著者の誠実な問題意識が伝わってくる。
     著者は「新しい流行語を作って一山当てよう」的な色気からこの概念を作ったわけではなく、「SNEP」の急増(2006年からの5年間で50万人増えたという)を心底憂えているのだと思う。

     だが、著者の誠実さが本としての面白さを保証するわけではない。率直に言って、なんともつまらない本だった。

     本書の分析は、総務省統計局の「社会生活基本調査」をベースに、約3000名を対象とした独自のネット・アンケート調査の結果を加味して行われたもの。ていねいな分析がなされてはいるが、全体に政府の白書のような無味乾燥な印象だ。

     それに、分析結果もなんだかあたりまえのことばかりで、目からウロコが落ちるような点が一つもない。
     たとえば、第4章末尾に置かれた「この章の発見」というまとめの一部を引いてみよう。

    《2.孤立無業のなかには、深夜も含めて、めったに外出しない生活を送っている人も多い。

    5.孤立無業には、中学時代から親しい友人や話をする人があまりいなかったという傾向が見られる。

    6.孤立無業は概して貯蓄や財産が十分でなく、強い老後不安を感じている人が多い。》

     「そんなこと、東大の先生に教えてもらわなくてもわかるよ」と言いたくなる。
     「孤立無業」という言葉から誰もがイメージするあたりまえのことが調査・分析の結果わかったからといって、何の意味があるだろう? いや、学問的な意味はあるのだろうけど……。

     終盤は孤立無業者に対して立ち直りの方途を提案する内容になっているが、その提案がまたびっくりするほど陳腐で無内容。たとえば、こんな一節がある。

    《もう一つのスネップを抜け出す方法は、やはりなんといっても仕事をすることです。さらにもう一つには、結婚するということもあります。ただ、結婚のためには、まず友だちをつくったり、仕事をすることが、大事になるでしょう。》

     それがかんたんにはできないから「SNEP」が急増しているのだろうに……。

  • NEETとも引きこもりとも異なる

  •  「Solitary No-Employed Persons(SNEP)」=家族以外に他者との交流のない無業者が、日本国内に約162万人いることを統計分析から明らかにした書。SNEPとは著者の学術プロジェクトによる造語・新概念(外国にはない)だが、本質的に個人問題である「孤立」と経済問題である「無業」を連結することで、雇用の劣化に起因する矛盾をコミュニケーションの問題にすり替えている感がなきにしもあらず(「ニート」論の時も玄田にはその傾向があったが)。企業社会の劣悪な現状を所与の条件としてそれへの適応を誘導するのではなく、あくまでも「無業」をもたらしている経済・社会構造に切り込んでほしいものだ。

  • 子どもたちに「働くとはどういうことか」を紹介しようと思って、その勉強のために図書館で借りて読んだ。いつものことながらわかりきったことばかりが書いてある。なんか、無駄に数字が多く、けれどあまり説得力もない。それは、質問の仕方でいくらでも誘導できるのではないか、などと勘ぐってしまう。そんな風に思いながら読んでいたら、著者自身がその友人の言葉として同じようなことを語っているくだりがあった。たしかに、きちんと数字を並べて理路整然と説明している人は、他にあまりいないのかもしれない。なんとなく雰囲気でわかった気がしているだけだったのかもしれない。ところで、このSNEP、性別については触れられていなかったような気がするのだけれど、問題になって上がってくるのはすべて男性ということなのだろうか。今のこの時代であっても、やはり男性の方が、働かないということに対しての風当たりは厳しいのだろう。またまた雰囲気だけで語ってしまったかもしれない。さあ、一番の問題は、今度高校生になる我が家の長男がちゃんと働くようになるかということだ。生徒たちに、あるいは保護者の方々にえらそう?に語りながら、うちのこととなるとさっぱりきちんとできていない。不安は募るばかりだ。けれど、それは悪いことばかりではない、ということが本書の最後で語られている。それが少し気休めにはなっている。

  • 300322922  366.21-ゲン

    玄田氏が指摘されていること以外に、学生にとっては奨学金の返還などでニートやスネップになることもあるので注意!

  • 「ひきこもり」問題を統計で扱うために導入された新概念。

    問題の大きさと深刻さは言われているが、実態を調査するのは難しい「ひきこもり」。その総数についても、1つの町の調査を全国に当てはめるような推定がされている状態であった。筆者の提案するSNEP(孤立無業)は「ひきこもり」より広いものの、その代わりとして使えるような概念であり、全国的な調査により、その正確な実態を知ることが可能なものである。
    具体的には、「社会生活基本調査」において指定された2日間誰とも一緒にいないことなどで定義され、その総数は2011年現在162万人にも達している。
    本書では、統計データを用いて、SNEPの実態、要因、ニート(こちらは「仕事を探していない」概念でありSNEPとは直交する)との関係などを明らかにしていく。この手の議論にありがちな、実例から全体を語らせるような手法はとらず、あくまで統計数字を根拠に議論を進めているので、説得力がある。
    終わりのほうに、アドバイスなども書かれているが、対策については本書の対象範囲ではないと思うし、むしろ、ひきこもり対策とも共通するような個別的で根拠のはっきりしないものは省いてもいいのではとも思った。SNEPのような統計データが得られることが、どのようによりよい対策につながるのかを示せば十分だろう。

  • 出だしはデータの羅列羅列羅列…で正直読みにくかったですね。
    定義が大事であること、それに基づいたデータが大事であることは研究である以上良くわかるのですが、興味持ち始めの前知識のない人間にはちょっときつい、それ程興味のない人には途中でやめられてしまうんでは思いました。

    その意味で、4章を最初に持ってきてくれたほうが個人的にはとっつきやすかったのにな、と感じました。4章を読んで初めてデータの羅列の意味を納得できたのです。
    その辺りが一般の人の興味の置き所と、研究者の意識のずれなのかな
    という感じがしました。
    どなたかも書かれていましたが、自閉症を病気扱いしているのは認識不足かなと思いました。その辺はこのような研究をされる著者もあまり詳しくないのですね。

    SNEPというのは大変な問題です。そして私にとってはかなり身近な深刻な問題です。ニートとの違いがよくわからなかったのですが、これをよむと凡そはわかります。
    まだ敷衍していない認識ですが、この状況を説明されたら心当たりのある人はかなりいるものと思われます。
    これから大きな問題として社会にでてくるのではないでしょうか。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年生まれ。88年、東京大学経済学部卒業。ハーバード大、オックスフォード大各客員研究員、学習院大学教授等を経て現職。博士(経済学)。
主著
 『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社、2001年、日経・経済図書文
 化賞、サントリー学芸賞)
 『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年、エコノミスト
 賞、労働関係図書優秀賞)
 『孤立無業』(日本経済新聞出版社、2013年)
 『危機と雇用』(岩波書店、2015年、沖永賞)
 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会、
 2017年、編著)
 ほか多数。

「2022年 『仕事から見た「2020 年」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

玄田有史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×