教育を経済学で考える

著者 :
  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535553330

作品紹介・あらすじ

「ゆとり教育」「学力低下」に揺れる日本の教育。もはや「理想論」を振りかざしている場合ではない!教育を経済学で考えると意外な真実が見えてくる。これまでになかった、目から鱗の教育論。

感想・レビュー・書評

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  • やっと読み終わった。
    ポイントが明確で、経済学的な視点を噛み砕いて説明してくれており、経済学に馴染みがない私でも経済学的な視点を理解して読み進めることができた。
    効率性と公平性の視点。
    教育は格差を広げる要素あり。
    選択権を与えても格差を広げてしまう。
    良いピアグループの形成の重要性大。
    教育は提供者側の質というより、教育というサービスの受け手自身が質を決める特徴がある。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000217440

  • 経済学だから見える教育問題の真実! ―
    http://www.nippyo.co.jp/book/2065.html

  • 教育経済学における人的資本論とシグナリング理論について、入門的に学びたく本書をとった。なかなか切り込みのするどい論調であり、本書から多くの刺激を受けた。

    教育学の専門家あまりにも殻に閉じこもっているし、また教育はどんな人でも論評しやすい身近なものである点から常に芯を捉えずに空回りしている。経済学を含め多くの領域と関連しあって教育に捉える必要があると強く感じた。

  • こういう見方もあるのだなと、思った本。

  • 非常にわかりやすかった
    経済学を教育に応用するということについて、経済学の知識がなくても理解できるよう細かい説明がなされていた。
    教育は投資か消費か 不確実性と教育需要、教育成果について、教育格差など扱っているテーマも幅広い。
    実証的というよりロジカルな印象をうけた。

  • (「MARC」データベースより)
    経済学だから見える真実! ゆとり教育や学力低下に揺れる日本の教育。もはや理想論を振りかざしている場合ではない。教育を経済学で考えると意外な事実が見えてくる。これまでになかった、目から鱗の教育論。

  • 執筆が少し古い時期ですが、経済学の視点から教育問題を分析するとどういうふうに見ていくのか、という思考実験です。著者も自認するように実証的なデータをあまり使っていないし、設定条件も荒い のですが、一般的な教育の本しか読まない方には、まったく新しい視点から教育問題を考えるヒントとしてお勧めします。

  •  この本は経済学の視点から教育を見たとき、どのように映り、今後どのように教育を実践していかなければならないかについて書かれた本だ。この本のメッセージは「脅威鵜を一面的に行ってはいけない」というものだった。全体の構成として、教育が経済学から見て他のサービスと何が違うか、また何が同じかについて書かれている。
     まず「教育」(この本ではとりわけ学校教育に着目している)は経済学の視点から見て、他のサービスとは違い2つの特殊な点があるという。1つは「消費と投資両方で捉えられる」という点、そしてもう1つは「自己冷却効果」である。
     1つ目について本文では「親」「子」を縦に、「投資」「消費」を横に取り4×4のマトリクスを示していた。親、子それぞれにおける投資としての教育、そして消費としての教育が存在するというのだ。「子供の消費としての教育」が今後増えていくと筆者は述べている。また「子供の消費としての教育」以外の3つ全てに教育が当てはまらない場合、深刻な「教育離れ」が起きるといい、現在も起きつつあるという(2003年時点)。
     2つ目の「自己冷却効果」とは使えば使うほど需要が減っていくという意味である。人は何かしらの機関や自身の取り組みによって教育を受ける時、「その教育を受けることによって自分はメリットを得る」という不確実な理想を持つ。しかしその教育を受け続けることによってメリットを「得る人」「得ない人」がだんだんと分かってくる。メリットを得ることが分かる人は、さらに学びたいという需要が高まるが、メリットを得ない人の「その教育」に対する需要はどんどん下がっていく。これが自己冷却効果だ。この自己冷却効果によって「できる人はどんどんと学び」「できない人はだんだん離れていく」という現象が起きる。一般的に見れば、子供のころに受けていた教育の水準は将来の収入に反映されてくる。とすればこの冷却効果によって収入格差は広がる。つまり「教育は格差を広げる効果がある」と筆者は述べる。本文中では「義務教育を受けることによるメリット(この場合収益増加)」を簡略化したモデル式で表し、義務教育が決して格差を埋める作用が無いことを示している。
     次に「教育」が他のサービスと同様に持っている特徴について述べている。1つは「Inputに対するOutputを期待する」という点、そしてもうひとつは「効率性と公平性を重視する」という点である。
     1つ目に関しては、教育、とりわけ義務教育は税金によって運営されている。また大学も政府から補助金を得ている。そういう意味では、教育にコストをかけたことによるリターン(プラスの外部経済)が大きく期待される。ここでいうコストやリターンは全て「お金」で定義されている。国民の税金が投入されている以上、その結果国に対するリターンが期待される。よって、義務教育や学校教育を行う場合、そこにはある程度の強制力が働く。
     2つ目に関して、経済学ではサービスやものを見るとき2つの重要な基準があるという。それが「効率性」と「公平性」である。現在経済学ではこれら2つを満たすものとして「バウチャー制度」などが人気であるという。しかし、バウチャー制度によって一時的に一部の地域で学校間での競争が起き、効率性と公平性を高めるかもしれないが、全体的、そして長期的に見てバウチャー制度は決してそれら両方の基準を満たすものではないと、簡単なモデルを使い本文で否定している。また学校選択制度で効率性をある程度上げることはできるかもしれないが、これも全体を俯瞰した時、また長期的に見たとき、基準を満たさない。世間では「機会の平等があればいい」という議論もあるが、そのためには(ここでは所得的に)ある人々が程度近いスタートラインに立っていなければただの綺麗事であるという。
     この現状を打破するためには「階層ごとに教育を実施し、勉強ができない子供を底上げるすること」そして「所得を各家庭レベルで再分配し、スタートラインを合わせること」が必要であるという。2つ目の例としては、何を持って力を入れているというかはとりあえず別にして、教育に力を入れている家庭には多く、入れていない家庭には少なく所得を再分配する、というような仕組みである。
     この本を読んだ感想は「自己冷却効果」や「投資や消費としての教育」という視点は今まで自分に無かったので、そこは読んでいてとても面白かった。教育が他のサービスと同様に持っている特徴について書かれている箇所も数式などを使い新しい視点から教育を切っている感じがして面白かったが、「ヤバい経済学」を先に読んだせいか、今1つインパクトが弱い感じがした。もっと思い切った条件設定とデータで教育を切って欲しいと思った。

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著者プロフィール

小塩 隆士(おしお・たかし):1960年京都府生まれ。83年東京大学教養学部卒業。2002年大阪大学博士(国際公共政策)。経済企画庁(現内閣府)等を経て、現在、一橋大学経済研究所特任教授。主な著書に、『高校生のための経済学入門[新版]』(ちくま新書)、『再分配の厚生分析』(日本評論社、日経・経済図書文化賞受賞)、『社会保障の経済学(第4版)』(日本評論社)、『公共経済学』(東洋経済新報社)、『くらしと健康』(岩波書店)、『日本人の健康を社会科学で考える』(日本経済新聞出版)ほか。

「2024年 『経済学の思考軸 効率か公平かのジレンマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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