心理テスト入門 (こころの科学増刊)

制作 : 岡堂 哲雄 
  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535904033

感想・レビュー・書評

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  • 内容は古いが、基礎をつかむには良い。ゾンディーテストの詳細があるのは珍しいと思った。

  • 心理テストの概要+実際の事例が15例(評定コメントつき)。ロールシャッハテストの所見の見方が解説されていないため、表(記号)をしっかりと読み取ることができなかったが(ロールシャッハテストに関しては、同著者によるロールシャッハテスト入門を参照したい)、被験者の反応から読み取れることなどに関してはかなり参考になったと思われる。ちなみに、心理テストは万能ではない。そのため、一般的に複数のものが組み合わされて施行される=テストバッテリー。

    投影法+質問紙法+知能検査といった組み合わせが非常にオーソドックスらしく、投影法の中でよく用いられるのは、ロールシャッハテストやバウムテスト(あるいはHTPテスト)、SCT(文章完成法)あたりだろうか?投影法は基本的に無意識に迫るものなのだが、SCTなどのように自ら文章を考えるのならばまだしも、インクのしみのついた図版を読み取るロールシャッハのようなものは、被験者にはなすすべがないものである。それゆえに、事前説明や了解などは重要となろう。知能検査や質問紙法はオーソドックスに現在使用されているために、さしたる抵抗感はないだろう。とはいえ、質問紙法は虚偽が入りかねない(自分をよく見せようとするなど)ので、要注意である。本事例では、駆け出しからベテランまでそれこそ幅広く掲載されており、解釈のしすぎと思える人もあれば、心理検査で判明したデータと逆のことを書いておられる人までいるくらいだった。例としては、YG(矢田部ギルフォード検査)において外向的と出ているのに、「内向的」と書かれているなどである。この点に関しては、コメントでも触れられていた。どうしてそこまでわかるのか?と。しかし、気になるのはやはり、「健常者」という「モデル」がつくられていることだろう。例えば、ロールシャッハテストでは、「血」だとか「破壊」だとかそういった一般的にマイナスイメージとなるような表現がなされると、その人の精神状態がよろしくないと判断するきらいがあるようである。確かに、第三者にいきなりそういったマイナス面を表出させてしまうという点で何かしらの欠陥は抱えているのかもしれないが、しかし、そういったものは想像力や創造力として評価しうることも可能であろう。なので、どちらかといえば、連想の仕方などで観るべきではなかろうか?

    例えば、ロールシャッハにおける反応数(~に見えるといったものの数)が、20、30くらいなら標準的なのだろうが、100に達しているような場合。これが、言葉遊びのように進んでいってしまっている場合、これは明らかに何かしらの異常を持ちうるはずである。ちなみに、本事例でも、ロールシャッハにおける躁うつ病や境界例と、分裂病との傾向が提示されている。前者は、要するに一定の統一性があるわけである。そして、「私→走る→公園→夜」といったように縦に連想が展開されるわけであるが、後者=分裂病の場合は、「私→彼→あなた→君」といった横に連想が展開される。そのために、主語もあいまいになれば、言葉が収まるべき「場所」が不明となるのである。前者は、全てが「広い意味での私」に収束されていくであろう=夜の公園を走るのは<私>である、といった具合に。だが、後者はどうか?彼とあなたと君は全て<私>である。これはしっかりと収束しうるか?しないであろうし、仮にこれが<私>に収束されるとすればその人は、「私としての一貫性を喪失する」はずである。それゆえに、「私はナポレオンである」といった言葉が現出するのだろう。ちなみに前者の縦の繋がりを「サンタグム=連辞的連合」と呼び、後者を「パラディグム=範例的連合」と言うらしい。連辞というのはつながっていくという意味であろうし、範例というのは似たような言葉の羅列という意味であろう。個人的に興味のあった心理テストはPILテスト(生きがいテスト)ではあるが(その理由は、フランクルのロゴテラピーに関心があるからである。実存的空虚という言葉は強烈である)、やはりロールシャッハテストの強力さを教えられる一冊であった。

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