承認をめぐる病

著者 :
  • 日本評論社
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感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535984011

感想・レビュー・書評

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  • 付箋をたくさん貼りながら読みたい本。まとめて語れない面白さ。表紙もかわいい。

    ↓3つくらい選んで紹介してみる↓

    「ミメーシスと身体性」の中の芸術に関する記述が好きだ。以下、引用のようなもの。

    -例えば、蜂の巣を見たときに、芸術は、蜂の生態すべて、共感不可能であるはずのもの、すべてを模写しようとする。「蜂が巣を作る」という、追体験も共感もできない生産の「回路」を模倣しようとする。絶対的に異質な素材の上に類似性を作り出そうとする。そこに芸術が生まれる-

    「現代型うつ病は病気か」も良かった。精神科医でも意見が分かれているらしい。筆者は病気として理解している。以下、同じく引用のようなもの。

    -精神医学において「正常」という診断が容易ではないのだから、現代型うつ病を「病気ではない」と診断することが容易でないのは当然である。家族なり職場なりに「病気」というカードを使わざるを得ない状況があるのなら、医者としてそうした状況の解消にできる限り協力する。「現代型うつ病はうつ病ではない」という検討は有用だが、「現代型うつ病は病気ではない」という判断は「病気ではなく怠けや逃避である」という判断と表裏一体であり、その判断は明らかに医学的診断を超えた「価値判断」でそれは医療の領分ではない-

    「秋葉原事件-三年後の考察」は、匿名掲示板を心の拠り所としていた加藤が、荒らしやなりすましによりその居場所を奪われたことで、自分の苦しみを知らしめるために無差別殺人という行動に出た事件の考察。以下略。

    -加藤の不幸は孤立に近い自立を強いられたことに加え、一定以上の行動力や適応力があったことではないか。表面的な関係を結ぶ能力があったがために、もっと深いホンモノの関係があるという幻想にとらわれたのではないか。その意味で加藤の居場所探しは同時に自分探しでもあったのだろう。しかし、そのいずれも正解はない。加藤に足りなかったものは「正解への断念」に裏打ちされた「人は正解なしでも生きられる」ことへの信頼感ではなかったか-

    筆者は「親切な宇宙人」もしくは「優しい爬虫類」があだ名らしいので、それを念頭に読むと、わかりにくかったり説明不足だったり飛躍していたりすることが、本書のむしろ味わいだったりするのかもしれない。

  •  図書館より

     前半は若者の話を中心に初音ミクやAKBから「コミュ力」や「キャラ」の考察。タイトルにもある承認欲求について、引きこもりや秋葉原の通り魔殺人の犯人から見るキャラ分析など、分かりやすかったのですが、
    後半からは専門的な精神医学の話やラカンの精神医学の話などかなり難解に…。こんなライトな表紙でそこまで難解なこと書くかあ、と思ったり思わなかったり。

     あとがきや初出一覧によると色んな所に依頼されて書いていた論文がたまったので一冊とした、という感じだったので、前半と後半の極端な落差も致し方なしかな、という感じです(それでも一冊にまとめるんだったら論文のレベルは合わせてくれよ、と思わなくもありませんが)

     後半は難解かつ専門的な分野で評価できませんが、前半部分は結構面白かったです。

  • 学会誌、現代思想、こころの科学等に寄稿されたものが集まった本。
    難しかった。わからない言葉がたくさん。
    記事ごとに話題が変わるので頭を切り替えるのも大変だった。

    ・若い世代が「就労したい」と望むのは、基本的に「承認欲求」のため
    ・現代の若者にとって重要な価値を帯びているのは「コミュニケーション」と「承認」

  • 承認に関する話が綴られた一冊。

    因果関係についてもう少し説明してほしいところが何箇所かあった。

    若者論は土井隆義が一番。

  • 20151216
    ・他者への愛が欠けた人間は自己愛もまた不安定なものである。

    ・僕には難しい。心理学の専門的な言葉に、サブカルチャーを交えた文書は非常に読みづらく、自身が期待した過剰な承認欲求に対する答え、あるいはそのヒントを読み探る前にやめてしまった。

  • 専門書的なコラムのまとめ本だったので、承認欲求などを噛み砕く内容を期待していた自分にはいまいち面白くなかった。
    根底には承認の要素が通じているのだろうけど、書き方のせいもあって読んでいてそれがわかりづらい。

  • 時期も媒体も違うものをひとまとめにした本。
    そうとは知らず買ったから、少しがっかり。

    おもしろいものもあれば読みづらいものも。後半はほとんどすっ飛ばしました。重複する部分も見受けられ、いっそのこと新しく書き下ろしてほしいな…と願いたい。

  • もはやどうやってひとと話をしたらよいのかわからない、ということについて考える。

    いや、できるよ、話。でも、なにかが昔とは決定的にちがうような気が、するのである。それが自分自身の成長、加齢、疲弊、もろもろのそこらへんの時間的変化によるものなのか、それとも、圧倒的に世界は変わってしまったのか、そのどちらかなのか、あるいは両方なのか、はたまた気のせいなのか。

    そこで出ました、「承認」という言葉。これで括って考えると、けっこうなことがなんとなくまとまって見えてくるのである。気のせいかもしれないけれど。もしくはわたくしがわりと重度のついったらー、という種族に属するがゆえの感覚、なのかもしれないのだけれど。

    というわけでそのあたりの話が入ってます、この本。いろいろな媒体で掲載された文章の詰め合わせゆえに内容が重複している箇所もいくつか見受けられるし、それぞれの文章のテンションも差しだされている先のひとびとの想定像も若干違ってしまっているので、これらをがつっとまとめてねったくって新しく味付けなんかもしてほら食えよ、ってなった単著が読みたいなあ、って思ったのはわたくしのわがまま、よね。

  • 医学部分館2階書架:WM100/SAI:https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410163474

  • 様々な観点からコミュニケーションや自信のキャラについて記載されている。

    すごく気持ち悪かったのは秋葉原の件が筆者によって美化されているように読み取れた点。精神科医的な立場から見ると、これまで犯罪を犯した人の家庭環境などから同情せざるおえないものもあるとは思いつつ、不細工キャラとして繋げるには少々無理があるのでは。

    ただ家庭内DVが親からのケースだけではなく、子から親へのDVがあることも改めて勉強になった。

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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