みすゞ憧憬(しょうけい): 中島潔作品集

  • 二玄社
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  • Amazon.co.jp ・本 (79ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784544020960

感想・レビュー・書評

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  • ●本書について
     「風の画家」中島潔による、金子みすゞの世界の絵画化作品集。2000年~2002年に制作された、金子みすゞの詩がモチーフの絵画42作品に、2004年の新作3作品を加えた画集である。

    ●所感
     初めて中島潔氏の画展を観に行ったのは2008年5月に、岡山デジタルミュージアム(現、岡山シティミュージアム)で開催された、
    「風の画家 中島潔の世界展-源氏物語五十四帖から詩人・金子みすゞまで-」
    であった。
     その時に観た『大漁2001』が圧巻で、すっかり画家のファンになった私の二度目の画展が、2015年4月に新見美術館で開催された、
    「中島潔 新しい風 ―希望 明日へ生きる―」
    であり、この会場の物販で購入したのが本画集である。もちろん『大漁2001』も収録されている。

     中島潔氏の絵は、NHK「みんなのうた」の曲中アニメーションなどで、そのやわらかく丸みを帯びた子供や淡いタッチの農村風景などで、御存じの方も多いと思うが、彼の描く少女は何処か独特のエロティックさを漂わせるものでありながらも、それは決して性的なものを喚起するというよりは、なにかその眼差しに「世の中への諦念」というものを感じるのである。それは、確かに金子みすゞの詩の世界とおおいにマッチしている。そういう想いで2015年当時の私はこの画集をめくっていた。

     それから、五年程度の月日しか流れてはいないが、改めてこの画集を紐解いてみた時、当時とは別の感情が付与されたのか、それとも元々あった価値観が変質したのかは解らないが、とにかくあの頃と同じように無条件に絵に引き寄せられるという状態ではなくなっていた。

     考えられるのは、最近においてみすゞ生地の仙崎を訪れてみたり、「金子みすゞ全集」を読破したことにより、それまでやや「中島の絵に添えられたみすゞの詩」という感覚だったものから、みすゞ単体での解釈体系が自分の中に構築されてきた事はあるだろう。
     そしてこれはやはり自己欺瞞的にやり過ごすことが出来ないのだが、この数年のコミュニケーションツールの変化(いうまでもなくTwitter等のSNSの事だ)において、様々な価値観が階層・年代問わず(その功罪はここでは問わないが)無軌道に交錯するようになり、この中で私は、自分のジェンダー観の中にある粗雑過ぎた部分を大きく修正せざるを得ない時期があった。
     さきほど、2015年当時の感覚として私は「エロティックさは感じるがそれほど性的ではない」という感じの事を書いた。今の感覚としてやはりこれは欺瞞以外のなにものでもないだろう、と、自分自身でも思うのだ。

     とはいえ、だから中島潔氏と金子みすゞのマッチングを否定する、というのでは決してない。先の反省を踏まえたうえで、あらためてこの画集を鑑賞し、あらためて「『中島潔の描く金子みすゞ』ってエロいよね~。そういう切り口も面白いねぇ」と言いたいのだ。あくまで私の場合だが。

     そして、私なりに金子みすゞの作品に単体としてわずかながらではあるが接してきた事により生まれてきた「私なりの金子みすゞ」というものも大切に育てていきたいと思う。

     人は四十半ばを過ぎても変わる事はあるし変わらねばならぬこともあるし新しい世界が見えることもあるのだなあ、としみじみ感じた2020年コロナお籠り盆休みなのでした。

     画集のレビューというより、ある意味「告白文」みたいになってしまった事に陳謝。

    (了)

  • 潤んだ老猫目を持つ少年少女が関節の無い真っ白な可愛い艶体を灰色の自然の風景の中に溶け込ませています。金子みすずの詩とコラボレーションした画集なのですが、少しだけ字が読みにくかったので、詩は別に読んで、絵を楽しむと良いかも!しれません。最初は鰯の群れが画面一杯に泳ぎ、薄い髪の毛を靡かせた少年と一緒に哀愁を感じます。でも、最後の『秋桜』はとても鮮やかで綺麗!その中で遊ぶ子供たちの一体化できるワクワク感を味わえます。

  • 表紙に惚れて衝動買い

    このひとの描く美人画がすきで買ったんだけど、児童画ももちろんすき
    歌が詠めそうな絵だなあ、と思う

  • 私の神さまです

  • うーん大好き^^鰯が凄すぎて涙出た。

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著者プロフィール

1943年旧満州に生まれ。絵を独学で修業。「NHK みんなのうた」のイメージ画で一躍全国的に注目を浴びる。各地で個展を開き、見る人の心を優しく包み込む童画と、繊細で独特な筆致で描く女性画、古典画を発表。

「2010年 『大人の塗り絵 ふるさとの心編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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