百人一首姥がゑとき (謎解き浮世絵叢書)

  • 二玄社
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本棚登録 : 27
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784544212037

作品紹介・あらすじ

"芸術家"北斎の意気が漲る傑作。お江戸の老婆が読み解く百人一首の世界。「謎解き」スタイルで作品を味わう話題の浮世絵シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • かの有名な富嶽百景と比べると、やや地味な印象。江戸っ子にしたら遠い昔に、遠い京で流行った、身分の遠い貴族が詠んだ和歌に興味が向かなかったのだろうなあ。

  • 先日、某美術館の展覧会「HOKUSAI UPDATED」に行って参りました。
    そこでこの「百人一首姥がゑとき」も見ることができました。
    本書で取り上げられているのは錦絵として完成された27作品。
    私が足を運んだ際に展示されていたのは「在原業平」「僧正遍照」と、版下絵に終わったため本では取り上げられていない「壬生忠見」の3つ。
    在原業平、流れる川に赤いもみじが散らばっている、わかる。
    僧正遍照、乙女が舞っている、わかる。
    しかし、壬生忠見。
    …これ、どういうことだ???と私は疑問でいっぱいになってしまい、それを解消するためにこの本を読んだんです。
    壬生忠見の詠んだ歌は「恋すてふ我が名はまだきたちにけり人しれずこそ思ひそめしか」。
    恋しちゃったって私の名前がもう噂になっちゃった、人知れずこっそりあの人を思い始めたばっかりだったのに、的な純粋な高校生みたいな歌ですね。
    絵を見ると、海らしき背景に、板が張り出している船着き場。「船宿」と書かれた建物の前に多くの人が集まっている。空に赤く浮かんでいるのは三日月か。
    何がどう結びついて絵解きになってるのかさっぱりです。

    「姥がゑとき」という名前の通り、本来は母親が子供に百人一首をわかりやすく絵で解説する、というコンセプトのシリーズだったのですが、まったく難解なことで知られているそうです。
    結局、私の疑問は解消しませんでした。。「壬生忠見」は未完のため本書では取り上げられていませんでした。
    ですがこの様子だと、正解と言われるような解釈はそもそも流通してなさそうですね。

    「船宿」というのは検索してみると異なる2つの施設を指すらしく、「屋形船や釣船を業とする商業・娯楽施設。」「江戸時代、廻船の船員を泊める宿泊施設。」だそうです。
    この絵の「船宿」はどちらなのかさえ私には判別できません。
    描かれている人がなんとなく浮かれた表情をしているように見えますし、背を向けた女が3人入り口前に並んでいるから娯楽施設の方かな?と思ったのですが、
    それにしては船が一隻も描かれていないし、宿泊施設と言われればそうも見えるからマジでわからない。誰か教えて。
    インターネットにあがっていた外国人向けの解説らしきページ(http://www.heliam.net/One_Hundred_Poems/41_Tadami.html)には、
    船宿の前に置かれている「水」の入った入れ物に触れています。「通り沿いにある密閉容器に書かれた'みず'という大きな文字は「水」を表し、火を消すために使われた」。
    たしかによく見ると「船宿」の文字のすぐ下に「水」という文字が見えます。
    燃え上がる恋心を火にたとえて、それを消化する水的な??
    それとも立ち込めてしまった噂を消したい的な??
    ・・・うーん、いまいちか。

    さて長々と書いてきましたがレビューじゃなくてただの日記になってしまいました。
    中身についてですが、27作品全てカラーで見開き毎に1作品見られるようになっています。
    絵の次のページに簡単な歌人の紹介と歌の解説、その次のページに絵の解説、というような構成×27です。
    めちゃくちゃ詳細に絵の読み方が書いてあるわけではなくて、軽く読める感じです。
    全て目を通して、やはり「わかりやすい絵解き」シリーズには無理があるよと思いました。
    でも単純に歌の情景を描写するのではなく、北斎なりのイメージや切り取りたい場面を形にしているのだなあ、と感嘆してしまいました。
    例えば「文屋朝康」。
    「しらつゆに風のふきしくあきののはつらぬきとめぬたまぞちりける」。
    この歌は場面としては「秋の野」だけれども、江戸に住んでいた北斎にはそこに散る白露というのがイメージしづらかったようで、
    上野の池(不忍池だっけ)で池に浮かぶ蓮を刈る女たちを描き、そこに散る水しぶきによってこの歌を表現した、と解説されています。
    池の藍色がとてもきれいだし、蓮に散る水しぶきなんて爽やかでおしゃれじゃないですか、見たことないけど。ちなみに私は最初この絵を見て水しぶきを「蛍かな?」と思ってしまいました。
    あとはやはり、人物にフォーカスを当てて描いた作品の場合表情がとても豊か。
    私が好きなのは「源宗于朝臣」で描かれている人物たち。「猟師たちが山のなかを活発に動き回ったあとの充実感が表情にあらわれている」との解説、たしかに、とうなずきました。

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著者プロフィール

1760?1849年。江戸後期の浮世絵師。代表作に『富嶽三十六景』『北斎漫画』他、多数。世界的に有名な日本を代表する画家で、とくにヨーロッパ印象派の発生にも多大なる影響を与えた。

「2017年 『北斎漫画[肉筆未刊行版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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