文盲 アゴタ・クリストフ自伝

  • 白水社
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本棚登録 : 392
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (110ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560027424

作品紹介・あらすじ

世界的ベストセラー『悪童日記』の著者による初めての自伝。祖国ハンガリーを逃れ難民となり、母語ではない「敵語」で書くことを強いられた亡命作家の苦悩と葛藤を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 祖国のハンガリーを逃れ、難民となり敵国の言葉(フランス語)で生活すること(書くこと)を強いられた著者の自伝。

    アゴア・クリストフは本当に言葉の少ない作家だ。

    それは彼女の歩んできた、途中から文盲にならざるを得なかった環境によるところが大きいのか、単純に小説世界を研鑽していった結果なのかはわかりかねるけれど、とにかく少ない。
    なのに驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。」
      自分に厳しい人だったんだろう。と勝手に想像している。そしてフランス語だったからこそ、彼女の...
      「驚くほど多くのつらさや悲しさが伝わってくる。」
      自分に厳しい人だったんだろう。と勝手に想像している。そしてフランス語だったからこそ、彼女の作品「悪童日記」等を、私達が読むコトが出来たんだと(もしマジャール語で書かれていたら、こんな風なストイックさがあったかどうか?)、、、
      2013/02/18
    • 美希さん
      >nyancomaruさん☆

      私は心根そのものがストイックな人(ならざるを得ない)だったのかなという印象を受けました。
      他国の言葉で小説を...
      >nyancomaruさん☆

      私は心根そのものがストイックな人(ならざるを得ない)だったのかなという印象を受けました。
      他国の言葉で小説を書くという行為は全く私には想像が及ばない範疇です。
      2013/02/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心根そのものがストイック」
      そう言えば、新しい作品が出ないのは、自らが認めなかったために中断した。と書いてあったなぁ、、、
      もう新しい作品...
      「心根そのものがストイック」
      そう言えば、新しい作品が出ないのは、自らが認めなかったために中断した。と書いてあったなぁ、、、
      もう新しい作品が読めないと思うと残念です。
      2013/03/28
  • 「読み、そして書くことの覚悟」

    30以上の言語に訳され世界的ベストセラーとなった『悪童日記』の著者、アゴタ・クリストフの自伝。

    「確かだと思うこと、それは、どこにいようと、どんな言語でであろうと、わたしはものを書いただろうということだ。」

    読み書くことが好きだ。今はそれが人生の一番の関心事になっている。今の自分はネットの情報も含めありとあらゆる物を自由に手に取って読み、思うままをこうして書くことができる。だが、本書のこの一文にふと立ち止まる。

    もしも、あるとき母語である日本語を奪われたとき、例えばそれに強制的にとって代わろうとするものがロシア語でも中国語でも韓国語でもいい、そういう状況に置かれたとしても、果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか。

    アゴタ・クリストフは、生まれた国を捨て、異国で難民として居たたまれぬ思いに苛まれ、自身のアイデンティティを内包する母語を侵食されゆくことを感じながら、「敵語」と呼ぶフランス語をそれでも自分のものとして書ききった。

    あるいは彼女の人生のあらゆることが詩であったかのようにさえ思わせる、どこまでも簡素で淡々とした文章に、読み書くことの覚悟を問われる思いがした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか」
      アイザック・B・シンガーがイディッシュ語に拘ったように、頑なに日本語のみ生きるコトも可能かも...
      「果たして自分は読み、書きたいと思うだろうか」
      アイザック・B・シンガーがイディッシュ語に拘ったように、頑なに日本語のみ生きるコトも可能かも知れません。

      アゴタ・クリストフの映画化された「昨日」(公開時邦題は「風の痛み」)は、是非観たいと思っています。
      2012/08/06
    • yomikaさん
      アゴタ・クリストフは、純粋に読み書くということを愛したのでしょう。アイデンティティの体現である母語を奪われた果てに、言葉は手段に過ぎないとい...
      アゴタ・クリストフは、純粋に読み書くということを愛したのでしょう。アイデンティティの体現である母語を奪われた果てに、言葉は手段に過ぎないというところまで到達せざるを得なかったその人生の壮絶さを思います。
      そこに単に「好き」ではかたずけられない、覚悟が生まれたのでしょうね。
      2012/08/12
  • 自伝、でありながら細かくは語られていない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「細かくは語られていない」
      それが出来ない理由を推測。。。亡くなられてしまったので、続編が読めないのが残念。。。
      「細かくは語られていない」
      それが出来ない理由を推測。。。亡くなられてしまったので、続編が読めないのが残念。。。
      2012/06/21
  • 「悪童日記」の衝撃そのままの自伝。徹底的に乾ききった淡白さは、生まれた土地や家族、言葉からさえ切り離されて生きてこなければならなかったからなのでしょう。生きていくために三度も外国語を習得しなければならないなんて、それだけで想像できません。自分何年英語に触れてるんだか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「自分何年英語に触れてるんだか。」
      同じく、、、
      まぁ、最低限の言葉が出来ないと生きてはゆけませんから。
      「自分何年英語に触れてるんだか。」
      同じく、、、
      まぁ、最低限の言葉が出来ないと生きてはゆけませんから。
      2013/03/08
  • 記録

  • 本人による自叙伝であるから、本人の書きたいことしか書いてないのは当たり前なんだ。タイトルの『文盲』の意味は深い。

  • 2020.03.04 図書館

  • 『悪童日記』三部作を読んだのは、すごく流行っている時期で(1990年代?)、『悪童日記』はいかにもダークな話が好きな中高生向きの話だなと思ったのだが、三部作読み終えると、構成の巧みさ、面白さに舌を巻いた。しかし、何しろ一文が短くて簡潔なので(そんな文章であれだけ奥行のある印象を残せるのだから大した才能なのだが)、まあ、作家は才能あるけど、誰でも読める本だよなあと、流行りに乗りたくない天邪鬼気質が邪魔して手放しに好きとは言えなかったのだ。
    今改めてこの本を読むと、簡潔ながら毒のある彼女の文章は、難民生活を送り、「敵性語」で書かざるを得なかった(その前からハンガリーは列強の支配に翻弄されてきたわけで、そもそも「お上」なんて信じないベースもあった)ことに由来することも分かった。
    翻訳者の解説にある通り、母語でない言葉で小説を書くと言っても、もともと素養のあったナボコフや、自ら選んだ多和田葉子らとは違う。ハンガリー語で書ける状況があれば、ハンガリー語が良かったのだから。
    しかし、ハンガリー語で書いたら、こういう文体にはならなかっただろうし、難民生活がなければ作品も違っていただろう。ハンガリー語で書いていたら、世界で読まれる作家にはならなかっただろう。作家の幸不幸はわからない。
    作家だけじゃなく、人間みんな、何が幸せで、何がそうでないのかは、死ぬ時まで分からないものかもしれないなあ、と思った。
    また『悪童日記』シリーズ、読もうと思う。

  • 逃げてきたところで待っていたのは安定した砂漠 虚無 だってさ

  • アゴタ・クリストフさんの自伝です。
    強制的に自らの使う言語を奪われた経験が、著者の作品と同じような淡々とした文章で語られています。90ページほどの作品ですが、読み終えた後に深く心に残る内容でした。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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