舞台を遊ぶ: 別役実の演劇教室

著者 :
  • 白水社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560035726

作品紹介・あらすじ

演劇は観るものではなく、するものである。長年の要望に応え、はじめて書き下ろした「演劇をするための必読入門書」。

感想・レビュー・書評

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  • 難解なイメージの別役実作品
    今年に入って別役実作品が周りで頻繁に上演されている縁もあり、何本か見てきたのだけど、どうも難解だ(何回観ても難解だ)。もう苦手の域にまできつつある。

    しかし、演じてみたいと思わせる奥深さがあるのも魅力であり、なんとか理解を試みたいと思っていた。

    演劇は観るものでなく、するものである。
    そこで出会ったのがこの本

    「別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ」(白水社)

    帯に書いてある文章を見出しにしてみたのだけど、たしかに、演劇って観るよりやるほうが面白いのは実感する。

    この本は、別役さんが兵庫県立ピッコロシアター付属の演劇教室で話されたものが基だという。

    あとがきにはこう書かれている。

    演劇は、専門家である舞台人といわゆる素人である観客とに分かれ、その間の中間的な存在が少ない。

    私はこの「中間層のための演劇」を、この教室で確かめてみたかったのである。

    この考えを軸に、演劇を仕事にせずとも、一般教養として演劇を知るためにも、「観る」のではなく「する」ことが必要だという趣旨だ。

    中間層、これは私のことではないだろうか、ふと思う。劇団を名乗っているが、それを仕事にするわけではなく、専門の舞台人と名乗るのはおこがましく、素人の観客と名乗るほど卑屈ではないからだ。

    バチっと、本の趣旨と私の関心がハマった。

    先に進もう。

    舞台に立ち、身体を取り扱う
    演劇は、役者が舞台に出てきて、台詞を言い、そして舞台から去って行くのが、ひとまずの定石だ。

    慣れないうちは、ぎこちない動き、手が震え、足がガクガク、視線はどこかへ行ってしまい、自分の台詞の時以外は何もせず、今度は自分の台詞を忘れて相手がなかなか次の台詞を言えないなど、みっともないことのセールのようだ。

    慣れてくれば、スムーズに出てきて、台本に書かれている動きと台詞で物語を進行していくことができる。

    さぁ、もう立派に演劇ができるぞ!と、思っていたら大間違いだよ大馬鹿者という声が、本からうっすら聞こえてくるような、別役流の綿密な解説だ。

    ここで全部を書くことはできないが、いくつかの要点をあげれば、、、

    観客の視線を全身の皮膚感覚で感じ取る
    身体を弛緩させ、それを大きくまとめあげる集中力を途切らせない
    空間の固有の速度
    舞台空間は、物理的空間であると同時に観客の思いに支えられた心理的空間でもある。
    上手から下手へのゆるやかな風
    etc
    〜「別役実の演劇教室 舞台を遊ぶ」(白水社) 14から16ページ 演劇の中へ〜 より抜粋

    ただ出てくるだけでも、役者はこんなにも様々なことを無意識に行っているとつまびらかにして書かれている。

    別役先生、とてもわかりやすいです。

  •  演劇ってこういう風に演出されるのか。
     役者の表現力の豊かさについても感じ入る。
     ママさんバレーじゃなくて、ママさん演劇いいじゃない、という気になった。

     先日「マッチ売りの少女たち」を見て、この本に載せられている戯曲を読んで以下のことを思った。
     「読んで心地よくとも、これを演技で面白く見せるのは役者にとって至難だろうな」
     読む時には、目で文字を追い理解し、展開する。そして脳内で次の展開を予測し、読み進むうちに裏切られる。
     しかし演技の場合は、著者の言う「舞台にひきこまれ」でもしない限り、次の展開の予測が、先に立ち、しかもいくつかのパターンが予測できてしまうので意外性が欠けるのだ。そのため冗長と感じてしまう。
     恐らく、表現力が豊かな役者が、観客を舞台にひきこむことを前提に作られた戯曲なのだろうな。

     演劇について掛かれた本だが、役者について考えさせられた。
     面白かった。

  • 演劇の入門書は少ない。

    一つは、演劇人口が少ないことが挙げられる。
    他の教養と違い、役者だけでは成立せず、そこには照明や音響、舞台装置などといったものが必要となってくるからであろうと思われる。

    そしてこの本も、『舞台を遊ぶ』というタイトルであるが、いささか難解なのだ。

    本来、劇場でしか再現し得ない演劇を、言葉を使って解説することに無理があるのかも知れない。
    そういう意味では、多くのワークショップ(体験教室)が行われるべきであり、そういった場に足を運ぶ機会を設けるべきだと思う。

    この情報化社会にあって、情報化というものに一番程遠いのが演劇。
    すなわち、テレビやインターネットでは絶対に伝わらないもの。
    観劇するにしろその場へ足を運んでこそ初めて体験できる、いささか煩わしいもの。
    情報にならされた現代人には、難しい側面もあるのかも知れない。

    だから、演劇に興味があるのなら、身体を動かすこと。
    この本を読むよりも実際に劇場へ赴き、演劇を体験する。
    それが難しいのなら、この本を手本に数人で身体を動かしてみる。

    もっと身近に演劇があればいいのに、と思います。

  • 舞台上では、上手から下手に向かって風が吹いているという考えに凄い興味をそそられたねえ
    おけたに会

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著者プロフィール

1937年、旧満州生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。東京土建一般労組書記を経て、1967年、劇作家になる。岸田國士戯曲賞、紀伊國屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞、朝日賞など受賞多数。2020年3月3日逝去。

「2024年 『増補版 言葉への戦術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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