フランドルへの道

  • 白水社
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本棚登録 : 11
感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560042663

感想・レビュー・書評

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  •  異様な文章の妙に口に心地よいリズム感を追っているだけでとても「読んだ」とは言えないし、それはそもそもこの本がある意味では読めない本だったとしても、その読めなさすらつかめていないという意味で根本的に読めていなかったのだけど、それでも面白いのはこのエクリチュールの現前性とでもいう感覚、たとえば文章の規則を悉く無視した破格の文体で何かが書かれるとき、その時多くはエクリチュールの暴走とでも言うべき、壊れ方自体が面白い文章になっているし、そうなるのを逃れられないことが多いと思うのだけど、ここでは全くそういうベクトルに意識が向かっていず、多分狙ってやった、それもテクニカルな狙いばかりではなくかなり明確な目的意識によって書かれたのだろうなということを思わせ、というのも読んでいる間にするすると頭から抜けていく、頭に入らないというのではなくイメージの飛躍によって今この瞬間読んでいる場所しか掴むことができず、その関連性を追おうとした途端今追っているところが曖昧になり、つまり普通の読み方ははねつけられ徹底して読んでいる今にしか軸足を置けないようになっているという気がしたのだけど、そうは言っても頭に入っていないのだから言い切るには心許なく、楽しかったけれどやはり疲労も大きかったし、私は読者としてあんまりこの本には選ばれなかったなという印象だけが大きく胸の内に残ったのでした。

  • かなり手ごわい小説。手練れの読書人でないと、読み通せないのではあるまいか。読み手を選ぶ作品である。
    文学の伝統的な手法・約束事を踏襲せず、読みづらい。
    モチーフや想念が次々に連なり、一方で突然飛躍したり途絶したりする。場所も時間軸もジャンプしまくり、作品の全体像をつかみことに苦戦する。
    巻末解説によれば、この小説が描いたのはある一夜のことだという。ある晩に起こった出来事とその間に想起された記憶や想念が描かれている、という。だが、私は読み進めながら、そうした全体像も構成も捉えることが出来なかった。

    舞台は、フランスの北部らしく、時代は戦時。どうやら第二次世界大戦らしい。(1940年5月のドイツ軍侵攻によるフランス軍の大敗北の時期らしい)。
    騎兵ら数名が戦場を彷徨する模様。敵軍に囚われての収容所での状況も。

    作品全体を通じて、主要登場人物が騎兵のため、馬の描写がとても多かった、という読後感。途絶しながらも軍馬のことが何度も描かれる。死体となった馬が大地に還るように朽ち果て(腐敗して)ゆくさまが、詳細に象徴的に描かれている部分は印象的で秀逸ではあった。さらには競馬の場面・記憶も挿入される。

    これまで例えばフォークナーの手法に戸惑い、苦戦しつつもどうにか読み通してきた読書体験はある。だが、クロード・シモンの本作は、フォークナーの前衛性を凌駕していた。(ちなみに、これまた巻末解説によれば、クロード・シモンが、フォークナーの影響や関連に言及していて、やはりというか成程という感を抱いた。他にもプルーストやジョイスとの関連も示唆されていた)

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