サッカーの敵

  • 白水社
3.46
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本棚登録 : 133
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560049600

作品紹介・あらすじ

東欧・欧州・アフリカ・南北米、22カ国を徹底取材。サッカーアンダーワールドを暴く驚愕のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • フットボールの罪、向かうべき敵    

     著者の衝撃的なデビュー作。サッカーの敵という邦題は原題の一部しか表してない
    が、内容に触れると意義深さを持つ、良い題だと思う。

     共産主義下、アルゼンチンの軍政下、アパルトヘイト下、などのフットボールの置かれていた状況から、その功罪を描く。欧州、南北アメリカ、アフリカなど世界中を網羅しているが、フットボール後進エリアのアジアは中近東すら登場しない。悪意でなく、著者の資金的な問題と、読者の不在からだろう。

     フットボールの特殊性は、手を使わないと言う競技の特殊性でなく、世界中に競技
    者と観客がいることであり、他の競技より普及が早かったゆえの歴史的な蓄積にあることが、良く分かる。第二次大戦中に何千、何万もの群衆が集まる機会は、唯一フットボールだけであり、以降、パンとサーカスを少しでも理解している為政者は、フットボールを制御できず、ただ、利用しようとする他無かった。群衆もスタジアムの中だけが自由に振る舞える場所として利用する。権力と自由の緩衝地帯となったフットボールとして印象は、一部の地域なら、他の競技、催事があったとしても、世界規模ではそれのみであるかのような特別な地位を手に入れた。

     本の内容としては、サッカーの周辺にある罪に焦点が置かれているが、かえってフットボールの特別な地位を意識できる優れた評論である。

    文京図書館から借用。
    購入予定。

  • ふむ

  • サッカーの腐敗を暴く!てなことかもしれんけど、いや全然違う気もするけど、何しろ固有名詞多すぎでしょ。1990年代の話とかだから、ちと分かんない人が多くてね。
    だからといっても勢いは伝わるわけで、アフリカやら南米やらの無茶苦茶な感じは酷すぎて笑ってしまう。まぁ後はマラドーナやら知った名前が出たりするのを雰囲気で読む感じかなぁ。
    ていうかアジアはどうなったんだ。北朝鮮とか取材したらスゴいのに。

  • 2014/07/25 読了

  • サッカーというスポーツがいかに人を熱狂させ、民族主義を煽る結果になっているか。著者は旧ソ連各国の反ロシア機運、クロアチアのユーゴへの複雑な思い、スコットランド・アイルランドの新旧教徒の対立、オランダとドイツの大戦以来の怨念、バルセロナとマドリッドの対立の背後にあるカタルーニャの民族意識、カメルーンの仏英語圏の対立、そしてアルゼンチンとブラジル。82年のマルビナス戦争が終結したのはW杯に出られなくなることを恐れたアルゼンチンの妥協!また、米国内の各民族を追って。サッカー・サポーターの熱狂の裏世界に迫る。あまり過激な言葉は出ないものの、結局はきわめて過激なサッカー・フリーク。面白いのはサマランチIOC会長も熱心なバルサのサポーターでソシエの一人とのこと。

  • はんぱじゃなく読み応えのあった一冊。世界はサッカーボールと共に回っている。

  • サッカー関係者の間では評価の高い本だが、著者の取材レポートとがたんたんと続く。
    訳のせいなのか単なるレポートだからなのか、起承転結を求めてはいけないのか、読みづらい一冊。

  • サッカーについて語りながら、地政学、文化人類、哲学的要素の詰まったドキュメンタリ。
    タイムズが「サッカー好きの必読書、サッカー嫌いの必読書」という評価に偽りなし。

  • 読了:2010/08/07 図書館

    原著でもう15年?前ぐらいの本だけど、いまさら読みました。すごい面白かった。AFC編も書いてほしい。

    p.324
    「どっちが重要かって訊いているのか――ブラジル戦とアメリカの侵略と?」一九九四年にアメリカ人記者の質問にハイチのファンは答えた。「俺たちは毎日餓えてる。毎日問題を抱えてる。アメリカ人は毎日侵略するって言ってきやがる。でもワールドカップは四年に一度しかないんだよ」

  • サイモン・クーパーはフットボール(サッカーのこと)ジャーナリスト。彼の本を読むのはたしか3冊目であるが、いまだ期待を裏切られたことはない。この本も圧倒的に面白いノンフィクションというか、ルポルタージュだった。私は、この読書録で、本の「帯」に文句をつけることが多いのだけれども、この本の帯についても文句をつけたい。●フーリガンより物騒な奴らがいる●「サッカー・アンダーワールド」を暴く驚愕のノンフィクションというのが、この本の帯のうたい文句である。一方で、筆者が書いているのは●これは世界でフットボールが占める地位についての本である。●ぼくの第一の疑問は、フットボールはその国の生活にどのように影響を与えるのか、第二は、その国の生活はフットボールにどのように影響するか、だ。ということであり、実際に取材(22ケ国が取材対象だ)もその線に沿ってなされている。本文の中には、フットボールに付随する利権に群がるロシアのギャングの話が出てきたりもするが、それは、ある国のフットボールと社会の関係の在り様を示す一つのエピソードという位置づけを超えるものではない。どうしたら、上記のようなうたい文句を本の帯に書けるのか、頭をひねらざるを得ない。まぁしかし、そういったことは、この本の面白さを損なうものでは全くないので、本筋の話ではないのだけれども。閑話休題。この本が扱っているのは、1994年のアメリカでのワールドカップ以前の話であり、既に15年以上も前の話である。上記した筆者の疑問に対する筆者自身の回答は、この本には明記されていないけれども、おおよそ、「その国の生活にフットボールが与えている影響、あるいは、その国の生活がフットボールに与えている影響は、思っていたよりも大きかった」ということなのだと思う。それから15年経ってみて、その結論を筆者は変える必要はないように思える。

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著者プロフィール

ベストセラー『Soccernomics』の共著者。ウィリアム・ヒル主催の年間スポーツ本大賞を受賞した処女作『サッカーの敵』(白水社)は、サッカー関連書籍の名著として広く知られる。かつては英国の『タイムズ』紙と『オブザーバー』紙でフットボールコラムを担当し、現在は英紙『フィナンシャル・タイムズ』のコラムニスト。

「2022年 『バルサ・コンプレックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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