鍵のかかった部屋 (白水Uブックス 98 海外小説の誘惑)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070987

作品紹介・あらすじ

美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した友を追う「僕」の中で何かが壊れていく…。緊張感あふれるストーリー展開と深い人間洞察が開く新しい小説世界。

感想・レビュー・書評

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  • ニューヨーク3部作の最後の作品。
    姿を消した友の残した作品を世に出し、残された家族と共に暮らし幸せを掴む男。
    その暮らしが徐々に狂い出す。
    『ガラスの街』よりだいぶ入りやすい。
    連作短編の様に出てくる人物が少しかぶるのも面白い。

  • 「小説の技法」を試してみたい方、エンターテイメントとは何かを学びたい方。
    この作品を読んだ後に、「ムーン・パレス」を読んでみて下さい。
    そこにある二作の差、ただ、エンターテイメントであるか否か、です。

  • あまり呼んだことのないカテゴリーの本だったかど、なんか気持ちがわかるような、わからないような、そんな面白さがあった。

  • ポール・オースターのニューヨーク3部作(というらしい)最終作。

    前2作に比べてハーッピーエンド風になっています。3部作に共通するのはこの世から逃げ出したい・存在を消してしまいたいという欲求を実行に移していく男たちが主人公であることです。「鍵のかかった部屋」では主人公が行方不明になった幼なじみファンショーを探すという口実で自分も逃げ出してしまおうとします、最終的には思いとどまり普通の生活に戻ってきます。物語はなんとなく幸せになった感じで終わるのですが、逃げ押せたファンショーと平凡な生活を送ることになった主人公のどちらが幸せかは他人にはわかりません。

    ポール・オースターはアメリカ人もダサイ青春をおくるんだと言うことを教えてくれた初めての小説家です。

  • 読み始めてすぐに物語の中に惹きこまれます。
    やっぱりクセになる作家ですネ。
    テンポの良いストーリー展開。
    文章にもリズムを感じます。

    世のほとんどの人は、
    自らを騙しながら、
    あるいは心に蓋をして
    生きているのではないでしょうか?
    書くという行為は、
    どのような内容のものにせよ、
    自身の内面を掘り下げ、
    ときには気づきたくないことまで、
    気づかされてしまいます。
    作家の苦悩を描く、
    残酷な物語でした。




    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 文学という営みが、生という意味の体系の深淵を開いてしまうことを明るみにした、3部作の最後の作品。

    メタ小説の傑作。

    通常、物語は、点と点がつながり線になり、その線が面になり、集結する。伏線回収というのが醍醐味だ。しかし、この3部作は、面が解体して、線になり、さらに遠く隔たった点になり果ててしまう。宇宙の最後のように。私とは何か、という問いは、私の解体の過程にしかない。

  • 美しい妻と傑作小説の原稿を残して失踪した友を追う「僕」の中で何かが壊れていく…。緊張感あふれるストーリー展開と深い人間洞察が開く新しい小説世界。
    原題:The locked room
    (1986年)

  • <ニューヨーク三部作>の最後を飾る作品。前二作同様、探偵小説のフォーマットを用いているが、ミステリー要素が最も強いのは今作であろう。読み手を牽引するストーリーテリングの妙技も冴え渡っている。ミイラ取りがミイラになるという物語だが、憧憬と憎悪の境界線、過剰な同一化に伴うリスク等を通じて、個々人のアイデンティティを司る要素が如何に脆弱であるかを改めて思い知らされる。最終的に妻子の存在が彼をこちら側に留まらせたのだが、それは他者を介した己の実存性を題材としてきた三作品におけるひとつの着地点でもあったのだろうか。

  • 失語という状態はある程度の年月が経過し、「あのころ」を振り返った時にしか認識し得ない。なぜなら、失語状態にある時に「自分は失語している」と言い表すことはできないからだ。そんなことをつらつら考えながら三年ぶりに読み返した。

    生きることも書くことも読むことも孤独でひどく虚しい作業だ。そうして、わたしは待っている。 死を?書くことをやめるのを?その名が人々の記憶から消え去るのを?自分のことを知る者が誰もいないどこでもない国へ行くのを?
    いいえ。わたしはいまなお、わたしが到着するのを扉の向こうで待ち続けているのだ。

  • 前二作の『ガラスの街』『幽霊たち』と同じことに再々度挑んでいるのだろうなあと読んでいてわかるのです。しかし、終盤にかけての展開から、またしても主人公が混沌と不分明の彼方に行ってしまうのかと推測したところで、なんとその流れを打ち返してきた。
    こうやれたことで、著者はひとつの大きな壁を乗り越えることができたように思えます。自分の胸や頭につかえていた大きな岩石くらいの重い問題に、三作を費やして正面から挑み、突破口を見つけたというよりか、ひとつ上の次元をみつけて超えたような感じがあります。その結果として、その後、いろいろな作品を書きあげていったポール・オースターがあるのかもしれない。
    ……という、ベタな解きかたではありますが、超えなければならない壁との格闘って、自身の根幹に関わる問題なぶん、必然的にベタな様相に傍からは見えがちじゃないでしょうか。その泥臭い闘いを、ニューヨークという洗練された大都市を舞台に虚構のかたちで練り上げた。この舞台設定と創作性でもって、自分だけのものだったはずの問題を作品へと昇華し、芸術性と普遍性をもたせることができたのだ、と僕には感じられました。
    やってることは個人的で、自分を救わんがため、という目的が9割だろうなあと思えるんですが、それが逆にクリエイターとして(人間としても)素直な態度であって、だから、うまくモノづくり(小説づくり)に繋がったのかもしれません。

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