城 (白水Uブックス 155 カフカ・コレクション)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071557

感想・レビュー・書評

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  • 2023/6 読み終らず。ちょっと無理でした。取り敢えず半分位読んだ所でストップ。
    主人公がいつ迄たっても同じ所をぐるぐる回っていて、誰も彼もが自己中で飽きた。いつか再読しよ。

    未完結なのだけれど、 作者が亡くなっている未完結の小説ってAIに頼んだら続き書いてくれるのだろうか? それでお金を稼ぐのはどうかと思うけど、どうしても続きが気になって眠れない程の時(これは違うが)、個人的に楽しむのはありなのか?

  • オーストリア=ハンガリー帝国領プラハ出身の、20世紀文学を代表するユダヤ系ドイツ語作家フランツ・カフカ(1883-1924)の未完の長編小説、1922年執筆。『失踪者』『審判』と並ぶいずれも未完の三つの長編小説のうち、最も執筆時期が遅いもの。



    物語の中では"城"をしばしば近代官僚制機構に見立てて、その中に配置された人間の生が匿名化・非人格化・書類化・情報データ化されずには在り得なくなってしまった事態への、則ち近代人の疎外情況への、批判と読み取れる箇所が散見される。実際にカフカ自身、「ボヘミア王国労働者傷害保険協会プラハ局」(これ自体は半官半民の組織)に勤務し、近代官僚制機構の末端に身を置くことになる。『審判』同様、そこでの経験が"城"という非人間的でその全体像がついぞ把握しきれない肥大化し遍在化した機構の描写の背景にあるのは間違いない。

    現代、価値の正統性への志向を放棄し手続きと権力運用とに於ける合法性を専ら正当性の基準とするマックス・ヴェーバー的な広義の近代官僚制機構があらゆる社会的関係に根を下ろし、諸個人間の関係を目的‐手段連関へと貶めておきながらなお決してその最終目的を明示的に語ることができず結局は「力(腕力・金力・権力・精力)」と「快楽(生理的・性的)」の効率的獲得という即物的(無)価値観に頽落する以外に無いところの目的合理主義(⇔価値合理主義)があらゆる人間的関係を規定している。そこにあって、世界は屍体と化し、社会は屍体性愛・屍体依存の傾向性で経営されている。これも、現代ニヒリズムの、そこからの頽落としての、一つの相貌であろう。そんな徹底的に荒廃したネクロフィリア的実相はあらゆる欺瞞的虚構(ここでもその主要な働きを為すのは、言葉、それは頽落した言葉・屍体としての言葉・屍姦された言葉と云っていい)を駆使して糊塗されているが、その欺瞞自体が同じ屍体性愛の基準に則っているのだから、それは二重の虚偽意識と云うほかない。



    "城"から測量士として雇われたK.が、それにも拘らず延々とその"城"自体に辿り着けないまま、そもそも"城"からの呼び出しが一向にやってこない、という物語。『審判』に於ける"訴訟"と同様に、最後まで"城"の実体が明示的に語られることは無い。この物語でも、やはりその中心は空虚の一点である。内実無き虚点としての"城"、無限遠点としての"城"。その如何なる意味でも目的たり得ぬ虚点の周りを、方向も無く浮遊するばかり。物語が、"城"の実体に近づくようで手許を零れ決して到り着かず、或いは全く脱線していってしまう。物語のかなりの部分(とりわけ後半部分)がK.と他の登場人物との冗漫と云っていいほどの対話から成るのであるが、K.が外部から"城‐村"を訪れたという一事から繰り出される言葉の線形的横溢に、K.自身にとっても読者にとっても"城"は益々その果てが彼方へ茫漠となるばかりだ。カフカ自身の筆が"城"に向かう気配が殆ど見えないのだから、読者はその無軌道に翻弄されるしかない。

    そのうちに、K.も読者も虚点としての"城"の、その非自明性・不可視性に対する異和の感覚が知らず麻痺していってしまうのではないか、馴致されていってしまうのではないか。そして、虚点を紛い物の(無)内実・自明性という虚偽意識で埋め込まれることで、欺瞞でしか在り得ないところの日常性が成り立つ。不条理性から頽落した惰性態としての卑俗な日常性。そこには必ず、頽落した言葉・屍体としての言葉・屍姦された言葉、則ち駄弁のガラクタが堆積している。現実のどの瞬間を輪切りにしてみても、この物語の任意のページをめくってみるのと同じように、虚点を凝視する「覚悟」を失った冷笑面の方向無き屍体語の乱反射が層を為しているだけだ。この瞬間を時間軸で積分して間延びさせた代物が、キェルケゴールが「批判」した「現代」の生の在りようだ。美的瞬間の対極としての日常性。つまり、虚点は無限遠点としての"城"ばかりではない、あらゆる瞬間が虚点で充溢しているのだ、"城"はその記号的な象徴でしかない。我々は既に、その充満した虚点という縁無しの空虚へ失墜しているのだ。そうした無間地獄として以外に在り得ない人間存在の自由性――則ち実存としての生――を自覚し不条理な世界に対して歓喜しながら豪奢な敗北に墜ちていくか、安いハリボテ同然の虚構を次々と虚点へ投げ込んでみては自己欺瞞で騙された振りをし通して安逸な日常を卑しく寿ぐか。あれかこれか、二つに一つだ。"城"は、このいづれを選択するか、その試金石だ。それは読者に対する小説作品としての『城』にも云えることだ。

    それ故に、"城"とは『城』のことでなければならない。

    それがこの作品の存在意義であり、またこの意味で『審判』同様にメタ・フィクションを為す。

  • 城に行こうとする主人公Kが全然城に辿り着けない話。黒澤明『生きる』のたらい回しシーンが400ページ続く感覚。終始なにを言っているのかわからない村の人間たちに翻弄される主人公Kとそれを読む俺。なにがなんだかわからないまま終わってしまった(絶筆)が、主人公Kもきっとなにがなんだかわかっていないのでそれでいいのだろうと思う。折に触れ読み直したいような気もするし、もう読みたいくないような気もする。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/758503

  • 【オンライン読書会開催!】
    読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です

    ■2022年10月13日(木) 〜 2023年1月19日(木) 20:30 〜 23:00
    https://nekomachi-club.com/events/3e060e9a76bb

  • 謎めいたストーリー。緊張感と喜劇的印象。城が象徴するものは、官僚制機構か、死の象徴か、それともカフカが抱いていた人生に対する「疎外」そのものか。
    彼が日常感じていた目眩感のようなものが、何となく理解できる。人生とはまさにこのような謎めいたものだからだ。

  • 城ってなんなの。気に入った。

  • カフカのおもしろさって、スラップスティックコメディのような描写だ。人がおどり、からみあい、大声でさわぐ。また、いつのまにか物陰にいたり、いつのまにか消えていたり。そんなどんちゃんさわぎが楽しくてカフカを読む。

  • 『変身』や『審判』ほど面白くはなかった。訳のせいもあるかもしれない。
    これは、空気を読む小説だと思う。空気を読みまくる村人と、村のシステムが分かっていない分まったく空気を読まないKの話。
    Kはその村にとどまるため、口から出まかせに自分は測量士だと言い、それに応えるかのように、城は即座に彼を測量士だと認める。後から助手が到着するはずだと言えば、城から助手が派遣される。そしてKは、その設定を受け入れる。後になってから、もっと別の方法で村にやって来ていたら、こんなに大変な思いはしていなかったかもしれないのに、と後悔するけれども。
    城は、城の意思を尊重する村は、とにかくすべてを受け入れる。しかし、あまりにも空気を読まないKに業を煮やして、そこに軋轢が生まれる。村の常識とKの常識は相容れない。
    村人は城の支配下にいるわけだが、指示系統は混乱を極めている。というより、誰も上級役人に会ったことがないのかもしれない。下級役人の秘書の連絡係の召使の……。うまくいかない伝言ゲームのようだ。だから、多分こういうことだろうと空気を読んで行動する。それが正しいのかどうかは分からない。分からないけれども、それが城の意志だと主張する。だからKはいつまでたっても城にはたどり着けないし、測量の仕事も始められないし、クラムにも会えない。
    『城』が未完なのは、然もありなん。この堂々巡りの物語に、着地点が見つけられなかったのだろう。父と折り合いが付けられなかったように。

  • 僕にとって「変身」に続くフランツ・カフカの2作目。この「城」もハチャメチャに頭がおかしいことが読んで数ページですぐにわかった。
    1/4ほど読んだところ。未だに物語の全体像が見えて来なくてちょっと読むのが苦しい。壮大な言葉遊びというか、文章のニュアンスの駆け引きというか、揚げ足の取り合いというか、丁寧で冷静な口喧嘩というか、本当によくわからない。ただ読んでいて面白い。カフカは本当に頭がおかしい。いい意味で。
    読むのにめちゃめちゃ頭使う〜〜。疲れる〜〜。
    なんだか、メンヘラ女とそれを言葉巧みに騙眩かすクズ男のお話のように思えてきた、、、。
    浮気男が彼女とよりを戻したくて、少し頭の弱い彼女を言葉巧みに丸め込もうとしてるだけの話に思えてきた。本当はもっと複雑なのだけど。
    Kがモテモテすぎる。クズ男はモテるということか。むかつく〜〜。
    読み終わった。なんだこの小説、、、。一言で言うと「僕にはまだ早かったかもしれない。」です。
    終わり方が、「モゴモゴと話した。なかなか聞き取れない。母親が話したことは(中断)」なんだそれ!!!!ここまで長々読んできてそれかよ!!!!悔しい!!!うける!!!
    カフカ三大長編の中でも1番長いのがこの「城」らしい。しかも3つのも未完らしい。なんじゃそりゃ。もうカフカは読まん。

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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