第三の魔弾 (白水Uブックス)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072011

作品紹介・あらすじ

アステカ征服綺譚――三発の魔弾の物語

 十六世紀、神聖ローマ帝国を追放された〝ラインの暴れ伯爵〟グルムバッハは新大陸に渡り、アステカ王国のインディオたちに味方して、征服者コルテス率いるスペインの無敵軍に立ち向かった。グルムバッハは悪魔の力を借りて、コルテス軍の狙撃兵ノバロの百発百中の銃を手に入れるが、その責を問われ絞首台に上ったノバロは、死に際に三発の銃弾に呪いをかける。「一発目はお前の異教の国王に。二発目は地獄の女に。そして三発目は――」コンキスタドール(征服者)時代のメキシコを舞台に、騙し絵のように変幻する絢爛たる物語を、巧みなストーリーテリングで描き切った幻想歴史小説。大戦間ドイツで絶大な人気を博し、ボルヘス、カルヴィーノ、グレアム・グリーンら、名だたる目利きたちが愛読、世界的な再評価が進んでいる稀代の物語作家ペルッツの長篇第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 時は16世紀。
    ラインの「暴れ伯爵」と渾名されるグルムバッハは、
    聖職者の俗権への介入を厭い、
    抵抗して、神聖ローマ帝国皇帝から追放処分を受け、
    スペイン人未入植地で農業に従事しようというドイツ人たちのリーダーとなって、
    フェルディナンディナ島(キューバ)へ。
    後にコンキスタドール(Conquistador)と呼ばれる新大陸征服者の一人、
    アステカの財宝を狙うコルテスの無敵軍と対立する。
    部下が博奕に勝ったことで、
    百発百中の腕を持つ狙撃兵ノバロの小銃を巻き上げたグルムバッハだったが、
    コルテスの命令で絞首刑に処せられたノバロが
    死の間際に吐いた呪詛の言葉に縛られる。
    曰く、グルムバッハが三発の弾丸が入ったその銃を使えば、
    一発目はアステカの王モンテスマに、
    二発目はインディオの少女でグルムバッハの情婦となったダリラに、
    最後はグルムバッハ自身に命中すべし――と。

    幻想的かつ血沸き肉躍る歴史小説。
    義侠心溢れる乱暴者、身長2メートル弱の偉丈夫、
    フランツ・グルムバッハ伯爵の冒険。
    暴れ伯爵は一見かっこよさそうだが、なかなか間が抜けているというか、
    決して超人的なヒーローではなく、
    実は結構おバカなところが人間臭くて好感が持てるし、
    目的のために一直線と見えながら、あちこちで迷い、酒に逃げる辺りがリアル。
    先に短編集『アンチクリストの誕生』を読んだときにも思ったが、
    作者レオ・ペルッツは歴史的事実と虚構を綯い交ぜにしながら、
    キャラクターにきちんと肉付けをして厚みを持たせて描くのが上手い。
    エンディングは、書かれたとおり素直に受け止めてもいいが、
    呪われた「第三の魔弾」によって、
    長いストーリーの話者と語られる対象が一体化することで、
    超自然的な実を結ぶ幻想小説と化す……と捉えるのも一興。

  • アステカ王国を征服したスペイン軍のコルテスは有名ですが、実はその前にドイツ人がアステカ王と接触し、味方していた…という内容にまずびっくり。え?そんな事実あったっけ?と解説を先に読むと、そのへんはまったくの空想、作り話のようです。登場人物も架空の人物多し。でも、出て来る事件は実際にあったりして、事実ベースに架空を盛り込んだ小説となってます。
    とにかく書き出し、話の持って生き方がすごくワクワクします。これはうまいなと思いました。最後のオチもそうきたかーって感じです。
    「アギーレ神の怒り」という映画が好きなのですが、ちょっとその映画を思い出しました。

  • 読み始めるとあっという間に惹き込まれ、読むのが止まらなかった。
    じつは買ってから1年近く積んでいた。以前読んだ『アンチクリストの誕生』は短編集で気楽だったのに対して『第三の魔弾』の厚さに手を出しかねていたのが阿呆らしい。ペルッツの他の本も買わねば。

    クロースターカッツ(修道院の猫という意味。美食家で厚かましい人物のこと)という語が出てきて、ロセーロの『無慈悲な昼食』の教会に住んでいる猫のことを連想した。意味もぴったりだし、同じ言い回しがスペイン語にもあるのか、単にそれほどよくある事実なのか。

  • コルテスのアステカ王国征服の企みの前に立ちはだかったのは僧侶の世俗化を批判し祖国ドイツを追われた『ラインの暴れ伯爵』グルムバッハ。
    スペイン陣営から銃を奪う際に元の持ち主からかけられた呪いがその後のグルムバッハを悲惨な状況に陥れてしまう。

    沸点の低い伯爵がスペイン陣営にいる異母兄弟メンドーサ公爵に翻弄され転落していく様は苦々しく読むものの伯爵の頑固さにも原因はあり何とも言い難い気持ちになりました。

  • 文学

  • 2015-10-26

  • 挫折

  • 読み終わってしばし、呆然。
    突如、時系列が断ち切られて
    別の時系列に繋がる、映画的な手法が
    とられているから。

    キリスト教や世界史の知識があれば
    さらによく分かるんだろうなと
    思いつつ、血なまぐさいストーリーの
    中から浮かび上がる登場人物たちの
    個性的なキャラ力のおかげで、
    一息に読めた。

    「巨匠とマルガリータ」にも通じる世界観。

  • 最初、語りの構造がつかめず戸惑ったが、ストーリーが進んで読み慣れてくると面白い。最後まで読むと伏線の確認のため冒頭をまた読み直すことに。解説も詳しい。
    最近小説をあまり読まないと言ったばかりだが、早速ペルッツの他の本を3冊amazonでぽちった。受け取りづらいので、初めて店頭受け取りにしてみた。

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著者プロフィール

レオ・ペルッツ(Leo Perutz)
1882年プラハ生まれ、ウィーンで活躍したユダヤ系作家。『第三の魔弾』(1915)、『ボリバル侯爵』(20)、『最後の審判の巨匠』(23)、『スウェーデンの騎士』(36)など、幻想的な歴史小説や冒険小説で全欧的な人気を博した。1938年、ナチス・ドイツのオーストリア併合によりパレスティナへ亡命。戦後の代表作に『夜毎に石の橋の下で』(53)がある。1957年没。

「2022年 『テュルリュパン ある運命の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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