- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560073469
感想・レビュー・書評
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「屍体屋」を名乗る美術史家と共に、西洋における死の図像を渉猟する美術エッセイ。
トランジや壁画など、主に教会や墓地に描かれてきた死のモチーフをめぐる〈屍体狩り〉(紅葉狩りとかの"狩り")。それらをただ紹介するだけではなく、著者自身が数百年前の文献に数行記録が残るだけの死者の図像を実地調査に行ったり、「死の舞踏学会」に当時アジア人初の会員として参加した話もあり、スリリングで面白い。小池さんの著書は『内臓の発見』を読んだことがあり、本書より堅い本だけどあれも面白かった。
〈死の舞踏〉〈三人の生者と三人の死者〉〈死の勝利〉というモチーフ、中世以降の死の表象には大きく分けてフランス系とドイツ系があること、トランジを注文する依頼主は「死後数日程度のもの」「死後三年の姿で」など腐敗の進行度を指定していたことなど、時事ネタを交えつつ教えてくれる。キリスト教的死生観に迫って三章に渡り取り上げた「自殺 Ⅰ〜Ⅲ」は、ロマン派を通じて近代人の精神構造の話にもなっていく。16世紀の軍服にドクロマークが付いてたって話、嫌だったな。「栄光か死か」の意味だったそうで、日本だったら武士道、葉隠の世界。
紹介されている図像で一番印象深かったのは、パレルモ美術館所蔵の壁画「死の勝利」。この手の本はそれなりに読んできたつもりだけど初めて見た(忘れてるだけかもしれない)。19世紀の象徴主義のようなタッチで、死が地を征服していくさまを物語的に表現していおり、鮮烈で美しい。イタリアのみならず、プロヴァンスやフランドルの画法が出会うシチリアならではの作風とみなされているという。コスモポリタンの洗練された死の姿だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
死を見詰めるための美術案内。
「死」「死体」をテーマとする図像のコレクション。
結構刺激の強いブツもありますが、
これくらいなら割りと平気だなぁ、私(笑)。
しかし、何故だか体調悪いときに限って
読み耽っちゃうんだよね。
魅入られるってヤツでしょうかね(笑)。 -
偏愛を突き詰めていくって人生が潤いそうですよね。
たとえ対象が蛆や鼠に喰い荒される運命にあるものであっても。
幼い時に美術館で祖母に買って貰った本。