ゾンビ襲来:国際政治理論で、その日に備える

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560082492

作品紹介・あらすじ

「ゾンビの突発的発生は必ず起こる!」その日にどう備えるべきか?国際政治学の世界的権威で、ゾンビ研究学会のドレズナー先生が、対応策を分かりやすく提示。

感想・レビュー・書評

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  • 読書会にて。
    ゾンビ菌(があるとしよう)感染者が日本で出たらを創造した。彼らを殺処分することは出来ない。何故なら彼らはれっきとした人間で、単なる感染症患者に過ぎないからだ。
    もし何かのきっかけで一網打尽にし、感染を食い止めどこかに隔離することが出来れば、ワクチンの生成を進め事態は収束に向かうかもしれない。

    などなど様々な意見が飛び交い、頭を使ったよい読書会だった。今まででベスト。

  • ゾンビをモチーフに国際政治学のエッセンスをわかりやすく解説してくれるのかと思いきや、筆者も訳者もガチでゾンビ好きだったw何この分厚い訳者解説www
    いや、国際政治学の解説書としてもわかりやすくて良かったですよ!

  • 大真面目にふざけた逸品。

    ゲーム理論でしばしば用いられる「繰り返しゲーム」では協調が起こりやすい。またケインズが論じるように「結局のところ我々はみな死ぬのである」。ここから「死なないゾンビは団結し、人間はバラバラに孤立する危機」に直面する。笑えるが笑えない!映画でも人間は必ず仲間割れ・抜け駆けなどのチームワークの危機から何人か死ぬし、ゾンビはひたすら集団で襲い掛かってくる(ゾンビの共食いはないらしい)

    小説「ワールド・ウォー・ゼット」では、統合参謀本部の議長が軍事的な効率を最大化させるために「資源/殺傷数比率」なる指標を開発する。これが現場での創意工夫を生み出し「信じられないくらいにコストパフォーマンスの高い武器を発明し始めた」。まるでマネジメント論。適切な数値目標の設定が現場を動かす!(笑)

    最高だったのは「素早いゾンビに関する考察」。動きの速いゾンビはとんでもなく恐ろしそうだが、
    ・低速ゾンビ→発症までの時間が長い・低速の拡散→政府の対応が遅くなる→最初の発症がより大規模な拡散をもたらす→…→ゾンビ王国のグローバル化

    ・高速ゾンビ→瞬時の発症による拡散→国境を越えて拡散→…→ゾンビ王国のグローバル化

    したがって速度は拡散に対して因果関係をもたらさない。どっちでもグローバル化する(笑)

    なお私はゾンビ映画を見たことがないし(初代バイオハザードは好きだった)、ホラー映画は一切見ない。それでも面白い本だった!

  • エンタメ的な本かと思いきや、まじめに国際政治的観点からゾンビが発生した場合にどう対処するかの論文(?)。国際政治論がよくわかっていないので腑に落ちない。ただ、ゾンビが発生した場合、国際機関や各国の安全保障当局は機関間の「押し合いへし合い」などで適切な対処ができないという結論が興味深い。ゾンビを身近な災厄(原発とか)にしても十分に当てはまる。とはいえ、ゾンビに対する備えと言われると・・・。取り敢えずは、本書で絶賛している「ワールドウォーZ」の映画を見てみようかと。

  • 著者近影がいかす!

    ゾンビのアウトブレイクに国際政治はどのように対処するのか、といった一見ふざけたテーマですが、ちゃんとわかりやすい国際政治理論の入門書となっています。

    ゾンビはつまり、その発生は極めて稀だけどもひとたび発生するとグローバルに大惨事をもたらす脅威のこと。
    例えばリアルポリティーク、リベラル、ネオコン、社会構成主義などがゾンビ禍にいかに対処しようとするかを考えると、どれも単体では長所も欠点もある。国内政治や官僚主義、心理学的誤謬が効果的なゾンビ対策の足を引っ張ることも推測される。(本に書いてないけれど、めっちゃ震災後の政策の混乱とかぶって戦慄した…)

    だからまあ、ゾンビ(グローバルな脅威)には既存の国際政治理論である程度抑えられたとしても、それだけではとても不十分なので優秀な学生の皆さん一生懸命考えましょうねーというお話でした。

    良かった、ゾンビの発生=世界の滅亡じゃなくて(笑)

  • もしゾンビが襲ってきたらどうします?ぎゃあああああああ!!と叫んで逃げる?戦う?仲良くする??

    本書は、もしゾンビが襲ってきたら国際関係の諸理論ではそれにどう対応するのかという大変ふざけたことを真面目に検討した立派な国際政治学の本。こういった類の本は大好きなので面白く読んだ。
    というかホントはゾンビについて書きたいだけでしょ?というツッコミをしたいが、ともあれ立派な国際政治学の本です。



    検討される理論は、リアリズム(現実主義)。リベラリズム(自由主義)。ネオコン(新保守主義)。社会的構成主義。あとゾンビの対応を巡るアメリカ国内政治や官僚制の問題点。ゾンビが襲ってくる!ぎゃああああああぁ、というシュミレーションというか思考実験。

    なによりパワー(権力)を信じるリアリズムはたとえゾンビが襲ってきても他国と協調することには懐疑的で、ゾンビがいようがいまいが国際社会は、力と力の争いだと認識する。逆にリベラリスムは多国間協調でグローバルな仕組みを作ってゾンビに対処しようとする。

    わかりやすいのがネオコン。圧倒的軍事力でさっさとゾンビ殺せ!と。ただネオコンはゾンビの脅威と権威主義国家からの脅威を混同してしまうので効果的な対応は難しいと考えられる。社会構成主義だと、ゾンビって人間社会に同化できるんじゃね?と捉えられる。

    アメリカ国内に焦点をあてているけど、一番面白いと思うのが官僚制と国内政治について。

    ゾンビが襲ってきた初めのうちは戦う大統領や政府・軍は国民から高い支持が得られる。でも長期化するとゾンビ疲れといわれる厭戦気分が国内に蔓延する。ゾンビに噛まれてゾンビになった家族を守ろうとする遺族会みたいなものができたり、ゾンビで儲けようとする製薬会社や軍需産業が現れる。こういった利益集団が政府のゾンビ征伐を邪魔したり有効な政策に圧力をかけたりするようになり結局うまくいかない。国内政治で効果的な対策が取れないと、多国間で協調などできず、結局国際社会はゾンビに対して有効な手立てがとれない。

    そして官僚制。日本だけの話ではない。各省庁がおのれの権限にしがみついたり縄張り争いで、増殖するゾンビにうまく対処できない。ただ官僚組織というものは失敗から学び、政策の革新につなげ効率的に機能するようになる。でも、その頃には世論の厭戦気分や利益集団が騒ぎ出して行政府は効果的にゾンビ退治ができない。官僚制がうまく機能し始めるころに国内政治はモメ始め機能麻痺に陥るという最悪の組み合わせ。
    で、どっちにしろ国内で意思統一できないなら多国間協調なんてとても無理で、結局ゾンビ退治は効果的にできないんだよね、というのがドレズナーの理論仮説。この点が非常に面白かった。


    しかしどうでもいいことだが、アメリカにはゾンビ研究学会になるものがあるんだね。「ゾンビに関する知識の普及や芸術・科学分野でのゾンビに関する学術的研究の興隆を目的とする」団体だそうで、会員になるためには、会の定めるTシャツを団体のウェブサイト経由で購入すれば付随して会員証(終身)が送られてくる。(んだってさ)

  • 第63 回アワヒニビブリオバトル「暖」で紹介された本です。
    チャンプ本
    2020.04.19

  • ゾンビの例から国際政治を学べる。
    ネオコン、リベラル、現実主義官僚主義などなど

  • 国際関係理論の入門として最適な一冊。主要理論の概要を抑えており、平易で読みやすい印象。さらに、ゾンビ・アウトブレイクに対して、各理論がどのような処方箋を提示するかを示している。個人的には、ゾンビに関する記述について、やや理解しにくい部分があったものの、全体的には楽しみながら読むことができた。
    個人的に印象深かったのは、ウォルツが『人間・国家・戦争』で提示した三つのイメージを意識して書かれていること。他の概説書を見ても、いわゆる第三イメージからの主要理論のみをカバーしているものが多いため、第一・第二イメージからの見方もおさえることができる。
    現在のコロナ禍に照らし合わせて読むこともできる。非伝統的安全保障や国境を越えた危機といったものに対する対応の必要性について考えさせられた。

  •  「もしも現実にゾンビが大量発生したら、世界各国の政府や社会はどのような対応をとるだろうか?」をテーマに、リアリズムやリベラリズム、新保守主義、その他の考えの人々がどのような行動をとるかを考える本。具体例がゾンビなのでサブカルのかおりがするし、書店ではその棚に置かれていたのだが、新型インフルエンザやSARS、最近流行りの新型コロナウイルスにも応用可能だと思う。
     フィクションでゾンビが登場した時には、作中の登場人物たちがどのような行動をとったかの他にも、実際に過去にパンデミックが発生した際の事例も紹介されている。この本は2012年に発売されたものだが、2021年現在になって読んでみて、新型コロナウイルスが発生した当時に、各国がどう反応したかを思い返してみると、予言的なことも記述されているように思えた。

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