トロツキー(上)

  • 白水社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560082720

感想・レビュー・書評

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  • ☆「レーニン」、「スターリン」(未邦訳)に続く、三部作で、ダフ・クーパー賞受賞。
    ☆ユダヤ人である点が誇張されているが、確かに、スラブ人たるスターリンと比べると、一目瞭然だな。
    (訳者による邦文トロツキー伝)
    ・トロツキー わが生涯 前半6割はおもしろい 県立
    ・ドイッチャー 予言者 三部作 基本的にトロツキーに甘いが、ブランスのとれたよい伝記 県立 
    ・ブルーエ トロツキー 筋金入りのトロツキイストで、慎重に読む必要がある
    ・ヴォルコゴーノフ トロツキー 冷静で、すぐれた伝記 市立

  • 誕生から、革命運動への傾倒、流刑と亡命、レーニンとの出会い、十月革命までを精細に描く評伝。「20世紀の社会主義」に一石を投じる、英国の泰斗による注目の大作! ダフ・クーパー賞受賞作品。

  •  トロツキーというのは本名ではなく、彼が逃亡中に拝借したパスポートの名前からだというのは知らなかった。性格は傲慢で配慮に欠け、同士の中で最も難癖をつけない人物からも「心底嫌なやつ」と評されるほど。流刑地のシベリアでは妻子を置き去りにして逃げる。感傷嫌いで、誇張した文体を好む彼はこのことをただ「人生が私たちを引き離した」とつづる。人生すべてをイデオロギーに捧げ、それと矛盾する私事は歪曲する。一九一七年と内戦においては革命の英雄で、才能もあふれるほどあるのだが、出会う人すべての感情を逆なでにする孤立した狼。

     しかしすこぶる魅力的な男だ。外国にいる指導層の中では、逮捕の危険を顧みず、いち早く帰国する。頭の中は、帝政に対してどうやって暴力革命を実現できるかでいっぱいで、体系化した思想など必要ない「出たとこ勝負」の人間。弁舌は党内随一で、その動員力は凄まじく、哮り狂う水兵の前に単身乗り込み、野良犬のように追い散らすこともできる。

     「抱きしめるべきところでいちいちパンチを繰り出す」悲劇の政治家でもある。上巻の後半では、乗り越えられないレーニンとの力の差をあらためて痛感し、党内ではうまく立ち回れず孤立して、「彗星は、墜落への長い下降を始め」ている。

     読書中に何ヶ所も誤字を見つけたのはひさしぶりだ。翻訳もまずく、訳者と共に編集者もロクな下読みをしていないことがよくわかる。

  • R・サーヴィス『トロツキー』白水社、読了。これまでトロツキーは理想的な革命家の原像をなす理想的人物として理解されてきたが、本書は膨大な史料をもとに、その実像と複雑な性格を描き出す。著者は英国の歴史学者。これまで『レーニン』『スターリン』を発表、本書で三部作が完成する。

    ウクライナの富農の家に生まれやがて革命家に成長するトロツキー。ロシア革命はトロツキーなしでは成功しない。傲慢な行政官としての辣腕は意外だったが、著者は出身階級やユダヤ人としての出自、そして革命か知識人との出逢いにその因と変転を見出す。

    トロツキー本人はユダヤ教を否定し、よりユニバーサルなものとして社会主義を信奉したが、ひ孫は現在イスラエルに在住する敬虔なユダヤ教徒という。トロツキーの人生は、革命家の軌跡の一つの見本とあるだけでなく、現代ユダヤ人の軌跡でもあろう。

    さて、私たちはトロツキー、スターリンを対称的な人物像と理解してきたが、本書は、ふたりがより似通った人物であることを明らかにする。二人とも社会主義の実現によるヒューマニズムの達成など考えてはいない。安易な批判は不要だが実像にせまるきっかけになる一冊。

  • 白水社の独裁者シリーズには外れがないが、今回も期待を裏切らない出来
    トロツキーがレーニンとともに頂点に上り詰めるまで
    ふと、数年前のゲバラの二部構成の映画を思い出すが、勢いに溢れた前半生

  • トロツキーの伝記。
    上巻では生い立ちからボリシェヴィキ政権が樹立し
    内戦が収束した1920年頃までを描く。
    かなり骨太でトロツキーの人となりが生き生きと描写されている。
    人物が多く把握が難しいことや、
    地図が少ないため地理が掴みにくい点など難点はあるが、
    全体的に読みやすく丁寧に書かれている印象。
    下巻も楽しみ。

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著者プロフィール

英オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジのソ連史家。3部作『レーニン 上・下』(岩波書店)、『スターリン』(未邦訳)に続く本書で、権威ある《ダフ・クーパー賞》を受賞した。ほかに『情報戦のロシア革命』(白水社)などの邦訳がある。

「2013年 『トロツキー(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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