郝景芳短篇集 (エクス・リブリス)

著者 :
  • 白水社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090572

作品紹介・あらすじ

ヒューゴー賞受賞の表題作ほか、社会格差や高齢化、医療問題など、中国社会の様々な問題を反映した、中国SF作家初の短篇集。全7篇

感想・レビュー・書評

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  • 「北京、折りたたみの都市」は、「折りたたみ北京」より私は訳の相性が良くて、するする入って来た。
    既読の「北京〜」を除くと「弦の調べ」が最も好きで、最後は胸が熱くなったが、直後の「繁華を慕って」で、ページの外の安全圏で酔ってるんじゃないと思い切り頬を張られた気分だった。
    でもそれもいいんだ…上手い。
    いずれもドロドロと胸の底に残るもののある作品で、長編も読みたくなった。

  • 「華文SF」ブームを作った作家のひとり、郝景芳の短編集が白水〈エクス・リブリス〉シリーズに登場した。

    在米中国人作家ケン・リュウにより紹介されヒューゴ賞を受賞した中篇「折りたたみ北京」が「北京 折りたたみ都市」という題名で入っている。
    訳者の違いはあれど、おもしろいものはおもしろい。

    「弦の調べ」の世界観は悠大、SFとクラシック音楽の組合せが作者の世界観を際立たせている。
    対として存在する短編「繁華を慕って」では、悠大な中に隠れた、細やかな心情が描かれていて、作家の幅の広さを感じる。

    他の短編もSFという枠に囚われることなく、読書脳に響く。

  • 「鋼鉄人」が出てくる「弦の調べ」「繁華を慕って」がとてもよかった。
    圧倒的に強い侵略者に対する人間の小ささ、脆さ。それでも強くありたいと思う願い。それが音楽として奏でられる。林先生が、宇宙に音楽を見るのもすてき。
    私は音楽の素養がないので、どんな曲が流れているのかYouTubeで探して聞いている。
    書名と装丁がちょっと固くて中のイメージと違うかなーとは思う。

  • 書評でお勧めされていたので手に取りました。
    「北京 折りたたみの都市」はなんか懐かしい青春の香りがするSFでした。ただ短いので描写がもっとあったらと思う箇所がいくつかありました。それでも素晴らしい作品には違いないです。訳者解説によると同じタイトルで長編も書くということなので、長編にも期待したいと思います。
    「弦の調べ」「繁華を慕って」も良かっです。良い意味で壮大な絵をイメージさせる作品でした。
    詩的と裏カバーで書かれているのもうなづけます。

    こんなに良い本なのに本のタイトルがいまいちなのが非常に残念。著者を知らないと手に取ってくれない...

  • 「北京 折りたたみの都市」 格差のあるディストピア都市がややレトロ趣味のメカニカルなイメージと温かみのあるストーリーで描かれているところが特徴。
    「弦の調べ」「繁華を慕って」 美を愛する保護的な立場をとる宇宙人の侵略というアイディアが面白い。2作は二つの別の視点から描かれる。
    「山奥の療養院」 著者はいわゆる理系エリートだが、背景にその苦悩を感じさせる作品。
    「孤独な病室」 「山奥の療養院」と共に精神病院を舞台にした文学からの流れを感じさせる。特に本作はSNSと現実のギャップといったテーマで現代社会への疑念といった意図が割とはっきり出ているのではないか。
    「先延ばし症候群」 論文が書けない、という研究者の日常的な苦しみがジョークになっている。

  • 『生死のはざま』『山奥の療養院』○ 

    たまたま『中国奇想小説集』を一緒に読んでいて、妙に納得する。

  • 短篇は、アイデア先行で理屈っぽいSFの特性が強く出ている印象。この著者の場合、長篇の方がいいかも。

  • 折り畳み北京は第三新東京みたいで、文化を大事にする鋼鉄人なるものはゼントラーディ人だと思うのです。

    ただどんなに化学が進んでも人はレポートや卒論の締め切りに追われることはわかった。

  • んー、面白くはあったけど、もっとどっぷりハラハラしたSFを期待していたので、ちょっと違ったかな。

  • ブラッドベリを
    初めて読んだ時のことを思い出した。

    奇想天外で詩的。
    繊細で映像的。
    郝景芳(ハオジンファン)。
    久々に「好き」と言える作家に出会えて嬉しい。

    「北京 折りたたみの都市」
    はタイトル通り 
    巨大都市が毎日定時に折り畳まれる。
    殺伐とした格差社会で生きる男の物語。

    「弦の調べ」「繁華を慕って」
    「鋼鉄人」に侵略された地球。
    彼らが愛する音楽で
    人間は抵抗を試みる。
    「弦~」は夫の視点から
    「繁華~」は妻の視点から
    描かれている。
    こんなに美しく切ない物語は久しぶりだ。

    映画化が予定されている。
    どんな映像になるのか本当に楽しみだ。

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著者プロフィール

1984年、中国・天津生まれ。2006年に清華大学物理学科を卒業後、同大天体物理センターを経て同大経営学部で経済学の博士号を取得。高校在学中の2002年に30歳以下を対象とした「新概念作文大賽」で一等賞を受賞し頭角を現す。2006年からSF作品の執筆を始める。2007年、「祖母家的夏天(おばあちゃんの家の夏)」が銀河賞の読者ノミネート賞を受賞。社会科学に関心を抱きはじめ、博士課程は清華大学経済管理学院に学び、2013年に国際貿易研究で博士号を取得した。長篇小説『流浪蒼穹(蒼穹の流浪)』(2016年)、短篇集『去遠方(遠くへ行くんだ)』、本書『孤獨深處(孤独の底で)』(2016年)のほか、紀行エッセイ『時光裡的欧洲(時間の中のヨーロッパ)』(2012年)が単行本として刊行されている。
2014年に発表した本書収録作「北京 折りたたみの都市」は中国系アメリカ人作家のケン・リュウによって2015年に英訳され、2016年、ヒューゴー賞(中篇小説部門)を受賞した。

「2019年 『郝景芳短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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