- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560096888
作品紹介・あらすじ
ポピュリズム的ナショナリズムと高度産業社会に充満する不安を理解するための必読書。フランシス・フクヤマ、ラグラム・ラジャン推薦
感想・レビュー・書評
-
コメント0件をすべて表示
-
ー こうしたトレンドの裏には、テクノロジーと貿易の両方がかかわっている。世界的に急速に進んだ製造業の技術進歩によって、サービスと比較した工業製品の相対価格が低下したことで、発展途上国の企業にとっては新たに市場に参入するインセンティブが低下している。同時に、製造業がより資本集約的、技術集約的になったことで、農業や非公式経済出身の労働者を吸収する潜在力が著しく低下した。貿易の面では、中国など成功した輸出国との競争や世界的な貿易障壁の解消によって、いまでは国内消費向けの単純な製造業を発展させる機会すらほとんどの貧困国には与えられていない。 輸入代替による産業化の余地がなくなったのだ。
我々がこれまで親しんできたような形の産業化を経験するのは、東アジアの虎たちで最後になるというのもありえない話ではない。もしそうなれば、これまで説明してきたような理由から、経済成長にとっては悪いニュースだ。発展途上国においては、バンカーや経営者と小商いや家事手伝いなど非公式経済で働く人々との間の収入や労働環境の格差は、かつてないほど大きくなっている。 人的資本や制度の機能を十分に蓄積する前に早期にサービス経済に移行したことで、先進国でさえ対応に苦しんでいる労働市場における格差や排除の問題をさらに悪化させたのだ。 ー
安易に内側に閉じこもり、ブロック経済化を招くのではなく、新しいグローバリゼーションのあり方と向き合わなければならない、ってそんな話。 -
「グローバリゼーション」という言葉をよく耳にするが、世界経済に対しては必ずしもグローバル化が良い影響与えるとは限らない。経済学者が唱える「自由貿易」に対し、違ったアプローチを示した本だった。
ー環境問題などはグローバル・コモンズである一方、世界経済はそうではない。ー -
ポピュリストが率いる政策は分断に楔をうち、常に敵を作って支持を得ている。
失業→中国、治安→移民等。
国内政治が方向性を失う中、エリート層のみが得をする形だけのグローバリゼーションを各国が取り入れることで更に格差が広がる。そもそも重商主義的な経済発展(輸入者側の雇用を奪い輸出者の雇用を守る)と比較優位(富は物質、つまり輸入によってもたらされ、輸出は輸入を行うための方法)は相反するものであり、貿易協定の批准は両国に利益をもたらすことはありえない。 -
333.6||Ro
-
日本経済新聞掲載2019511
東京新聞掲載2019526
読売新聞掲載201962 -
ロドリックの著作を一通り読んでおこうと思い購入。
理論としての優劣を議論すればグローバリズムは今でも有効だと思う。ただ筆者が指摘する、自由貿易の優等生は経済的に成功していないという点は重い。グローバリゼーションはエリートの玩具なのか、22世紀に生き残る概念なのか考えながら読む
"グローバリゼーションを擁護することは、今の政治情勢においては選挙での敗北を引き寄せる自殺行為と言えるほどにまでなっている。loc.122" -
東2法経図・6F開架:333.6A/R59b//K
-
原題:Straight talk on trade: Ideas for a Sane World Economy (2017)
著者:Dani Rodrik
訳者:岩本正明
装画:佐貫絢郁
装幀:コバヤシタケシ
【版元(2019.03.17転載)】
価格:2,400円+税
出版年月日:2019/03/27
ISBN:9784560096888
版型:4-6 340ページ
◆世界経済のトリレンマと、その後……
ポピュリズム的ナショナリズムと高度産業社会に充満する不安を理解するための必読書。フランシス・フクヤマ、ラグラム・ラジャン推薦。
◆自由主義と重商主義の攻防◆
グローバル経済の行く末は、ますます不透明になってきた。ブレグジットやトランプ大統領の誕生で、米国と欧州は傷ついた巨人としてもがき苦しんでいる。低成長に喘ぐとともに、格差の拡大で社会の足場が大きく腐食されているのだ。
著者、ダニ・ロドリックは『グローバリゼーション・パラドクス』でこうした展開を正確に予測していた。本書は、『グローバリゼーション・パラドクス』以後の世界を展望した最新刊である。
本書によると、米英を中心とした自由主義陣営と中国を中心とした重商主義陣営が相互に共存できる時代がここ数年で終焉したという。先進国においても雇用や輸出が重視され、米国が重商主義に改宗しようとしているのは象徴的だ。
成長の核になる途上国の未来も暗い。グローバリゼーションとテクノロジーの進展は、貧困国に十分な産業化の時間を与えず、「早すぎる脱工業化」が世界を蝕んでいるのだ。
ポピュリズムや「怒りの政治」はこうした事態を栄養源として成長してきた。自由主義と重商主義の攻防にどう向き合うのか? 中道左派はいかに国民の信頼を取り戻すべきなのか? 資本主義を再構築するための新たな提言!
[著者略歴]
ダニ・ロドリック (Dani Rodrik)
1957年、トルコ・イスタンブールに生まれる。米ハーバード大学を卒業後、プリンストン大学でMPA、PhD.をそれぞれ取得。プリンストン高等研究所(IAS School of Social Science)教授などを経て、現在、ハーバード大学ケネディスクール教授。専門は国際経済学、経済成長論、政治経済学。『グローバリゼーション・パラドクス』(白水社)は世界中で話題に。同書のほか、1997年に刊行されたHas Globalization Gone Too Far? (IIE) は、米ビジネス・ウィーク誌で「1990年代における最も重要な経済書」と称賛される。One Economics, Many Recipes: Globalization, Institutions, and Economic Growth (Princeton 2007), The New Global Economy and Developing Countries: Making Openness Work (Overseas Development Council, Washington DC, 1999) など。邦訳に『エコノミクス・ルール』(白水社)。
〈https://www.hakusuisha.co.jp/smp/book/b437641.html〉
【目次】
序
第一章 より良いバランスを取り戻す 第二章 国家の仕組み
第三章 欧州の苦闘
第四章 仕事、産業化、民主主義
第五章 経済学者と経済モデル
第六章 経済学上のコンセンサスの危機
第七章 経済学者、政治、アイデア
第八章 政策イノベーションとしての経済学
第九章 何がうまくいかないのか
第十章 グローバル経済の新たなルール
第十一章 将来に向けた成長政策
第十二章 政治こそが重要なのだ、愚か者!
謝辞
訳者あとがき
註
出典