- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784561233930
作品紹介・あらすじ
生き残りをかけ、企業が変容を始める。そのとき組織文化はどのような役割を担い、変革を推進していくか。組織文化にかかわる全ての人に読んでほしい、シャインが贈る実際的知性の結晶。
感想・レビュー・書評
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最近、面白そうな映画がないので、GW中は1本も見ないまま終わってしまった。少し体力増進のために行きたかったのに。その代わりと言っては何ですが、県立美術館に行って来た。これが近年まれにみるなかなか見ごたえある充実した展示で、本来なら2時間くらいかけたいところ(でも、1時間でギブアップ(笑))。・・と話がずれましたが、カルチャーです。カルチャーはカルチャーでも「Corporate Culture」です。
大震災と個人的な出来事から、いろいろ思うこともあり、商売と言う世界を通じて、実はこうした企業文化を大切にしようと言う価値観が生まれないだろうか、そんなことを思ったので手にした一冊。200ページ足らずの薄い本だけど、大学で使う本みたいな雰囲気の本で、価格も2940円とかなり高い(^^;ちなみに薄さの割には内容は濃い。
企業文化と言えば思い浮かぶのは、「社風」と言う言葉だったり、またはそのもととなる行動指針を書いたもの(「経営理念」や「クレド」や「ビジョン」と言う名のもとに明文化したもの)だったりするが、この本では企業文化と言うのは、そう言う単純なものではないと説いている。
企業文化には3つのレベルがあり、
(1)まず、表面的に見えるもの(社風と言うもので、新人さんが企業訪問して感じるもの、たとえば、オープンな感じとか、個人主義であるとか)が目につくために、それを企業文化と思いがちだけど、
(2)その表面的に見える雰囲気を作り出すにいたった正当な理由(戦略であったり、目標や哲学あるもの)がもう一つのレベルであるとの事。
(3)さらに、レベル3(原発事故みたい(笑))の企業文化は、その会社が市場に合う商品やサービスを作り続けることで、そこに生まれる信念や価値観が共有され当たり前のことになり、もはや意識からも落ちている文化。これは暗黙のうちに、さまざまな決定に作用するとのこと。
日本でも、キリンとサントリーの経営統合の話があった。この統合決裂には、創業家が実権を握る非上場会社のサントリーと、旧三菱財閥の流れを汲むキリンでは企業文化が異なっていった、と言われていた。統合の場合は、企業文化が2つ残る場合と、融合する場合と、どちらかが吸収してしまうパターンがあるらしい。この場合、自社の企業文化を死守したら統合に行かなかったということだろう。
と大企業の問題は私には興味ないが、「後継者と言う問題への対処」は気になるところ。思えば私も今の会社に入ったばかりのころは、何かと新しいことを取り入れようとした。しかし、それは単にシステムの変更だけに注目したことで、会社になんとなく存在する暗黙の企業文化と言うものを無視したものであった(若気の至り?)
まず、自社にある企業文化を洗い出し、その文化を学習破棄(学習破棄とは不愉快で不安が生じやすいのでたやすくは出来ない)した上で、再学習するのが正しいやり方であろう。そして、学習破棄し再学習することによる変容は、今の時代必ず必要なっているのであろう。
誤解しやすいのは、行動として変更は上司の命令で可能かもしれない。表面的なシステム変更が先にあった場合は、潜在的な文化が変わらないことで、価値観の共有などに大きな差が出てきてしまう。したがって、先に企業文化の学習廃棄が重要なのかもしれない。
と、なかなか難しい本だったので、また勝手に解釈して読んだけど(ちなみに難しけど分かりやすさと実践方法がこの本の特徴)、一度、レクチャーを受けたいような内容であった。まずは、今年1年のテーマとして自社の企業文化を学習するところから取り組んでみようかと考えるきっかけになった一冊だった。
先だって「ストーリーとしての競争戦略」のまえがきが13ページあったと書いたけど(本文は500ページあった)、この本は本文は200ページ弱だけど監修者解説が28ページもある。なかなかそれ自体が読み応えがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
”社内メルマガでミッションについて書くため、読みかけだった本書に手が伸びた。「企業文化」はちょっとやそっとじゃ変わらない。それを腹にすえたうえで、外部者ではなく内部者が、リーダーよりも触媒として、文化を「変える」のではなく新しい文化を「創る」ことのメカニズムが解説されている。チェンジ・エージェントを目指す人にオススメ!
<読書メモ>
・3段階の文化のレベル(p.18)
#観察が容易なもの順
- レベル1:文物(人工物)
その組織を歩きまわって、目にし、耳にし、感じることができるもの。
- レベル2:標榜されている価値観
組織が価値をおいていることがらについて「なぜそんなことをするのか?」を質問して、答えられるような方針
- レベル3:共有された暗黙の仮定
創業者の信念やベテラン社員の過去の武勇伝などを見てきたメンバが、暗黙のうちに前提としていること、当たり前に思っていること。
・文化を表面的な現象として扱い、思いのままに操作し、変革できると思っているとすれば、間違いなく失敗するであろう。言い換えれば、人が文化を支配するというよりも、文化が人を支配している。(p.28)
・組織が最初に作られるとき、其の創業者および初期のリーダーたちは、強いミッションおよびアイデンティティをもっている。??自分たちが何になろうとしているのか、どのような製品、市場を開発しようとしているのか、自分たちは何者か、何の権限があってやっているのか、資金を集めるためには、このような質問に対する信用できる物語を持っていなければならなかった。(pp.32-33)
#信用できる物語!
・文化に関する質問票調査で文化は測定されないし、またそうできないのはなぜか(pp.62-64)
何を聞けば良いか分からない
共有の仮定について質問しても効果がない
従業員が不満に思っていることは変更不可能かもしれない
★「望ましい文化」としばしば呼ばれているものは、現状の文化ではほんとうは保持できない表向きには標榜されているだけのタテマエの価値観なのである。(p.65)
#ドキッ!暗黙の価値観を後押ししている「システム」を取り替える意思や覚悟があるか?
・どのようなグループ、職種ごとのコミュニティに自分は所属しているのか、その中で自分はどこにいるのか(p.66)
#これを自問することが、文化のアセスメントに最も役立つエクササイズになる、のだとか。
★ファシリテータには次のような資質が求められる。つまり、議論の場をもたらし、分析モデルを説明できること。さらに、議論を盛り上げる質問をつづけることで作業の進展を図り、最終的には、共有されている暗黙の文化的に重要な仮定が自社分析調査を行っているグループの意識に上るまで、それがつづけられる人でなければならない。(p.71)
・文化のアセスメントは、それが何らかの組織の課題や問題に結び付けられない限りほとんど価値がない。(中略)組織に目的、新たな戦略、解決せねばならない問題などがある場合は、文化がどのようにその問題に影響を与えているかを知ることは、役に立つだけでなく、たいていの場合必要なことである。(p.89)
★組織を変えようとする努力では大概、文化の利点を活用する方が、文化を変えることで障壁を克服しようとするよりもはるかに容易である。(p.89)
・「混成種」の育成を通して管理された進化(pp.106-107)
新たに生じてきた社外の現実により良く適応しうる仮定を抱いた内部者を体系的に育成することにより、徐々に変化を引き起こしていくやり方がある。(略)そのような管理者が、重要な地位に置かれるならば、「われわれには彼女が職場を変えようとしてやっていることは気に入らないが、それでも彼女はわれわれの仲間だ」といったような感情をしばしば他人から引き出すことになる。
このメカニズムがうまく機能するには、何が足りないのかに関する洞察が会社の大半の上級レベルのリーダーの中になければならない。つまり、彼らがまず自分たちの組織の中で境界に位置するようになるべきである。
#これわかる!★これこそが、チェンジ・エージェント。決して外部者にはできない。内部者であり、混成種&境界にたつ人こそが、組織を変えていく。
・変容における2つの原則(p/126)
原則その1??生き残りの不安あるいは罪悪感が、学習することへの不安よりも大きくなければならない。
原則その2??生き残りの不安を増大させるよりはむしろ学習することへの不安を減らさなければならない。
#原則その2に強く賛同。安心感がないところでは変化はできない。
・新しい考え方や仕事のやり方は非常に具体的に特定されなければならない。(略)新しい仕事のやり方では、全てのチームが、チーム単位に評価され、報酬を得るのだと述べねばならない。高度に助け合うことが必要なのはどの仕事か、従ってどのようなチームワークが求められているのかを明確にする必要がある。(p.137)
★チェンジ・リーダーおよびチェンジ・エージェント(変革の促進者) (pp.140-141)
チェンジ・リーダーには以下の3点の特徴が求められる。
1.信頼性
言うことを信じてもらえなければならない(無視されてはならない)
2.明白なビジョン
言うことが明白で腑に落ちるようでなければならない。
3.ビジョンをはっきりと表明する能力
口頭および書面で、自分たちが認識したことは何であるか、また組織の将来にとってどのような関わりがあるのかを述べることができなければならない
いったん動機づけができれば、チェンジ・エージェント(これまでは変革チームと呼んでいた)は、変革を生じさせるためのいろいろな手順の開発へと進めていける。チェンジ・エージェントは、チェンジ・リーダーと同一の人であっても、違う人であっても構わない。正式にリーダーシップをとるべき職位にいる必要はない。実際、純然たるリーダーとしてあるよりも、むしろ触媒としてあるいはファシリテータ(議論の推進役)としての方がより効果的に働けることが多い。
#触媒!!
★文化とは何かについての現実(p.191)
共有され、しかもうまくいった思考および行動が文化の要素となるのである。
そのため、新しい文化を「創る」ことはできない。(略)その仕事のやり方や考え方で仕事すれば実際に今までよりうまくいくのでなければ、組織のメンバーはそれを内面化して、新しい文化の一部とすることはない。
ある組織がその主要な業務で成功を収めている限り、その組織の文化は「正しい」ことになる。もし組織がうまくいかなくなり始めれば、このことは文化の要素が機能しなくなっており、変革しなければならないことを意味する。しかし、正しい文化かどうかの基準は、どうすれば組織はその主要な業務で成功を収めるかという実利的(プラグマティック)なものである。
#いまは新しい文化を創るチャンスか。
・組織は、進化する生き物だ。組織にも個性がある。組織の個性が強ければ、長くそこにいるひとに共通の発想法や行動パターンが見られるようになる。(監訳者解説 p.205)
・レヴィンは、「ひとから成り立つシステムを理解する最良の方法は、それを変えてみようとすることだ」とも述べた。(監訳者解説 pp.207-208)” -
2008-04-24
企業文化の第一人者シャインさんの本です。
”人を含んだシステム”屋としても、組織における無形的な企業文化のような要素還元できない実体には非常に興味がある。
また、実際個人的にも最近、属する組織を変えて、何ともいえず、感じられるこの文化の違いはなんなんだろうと、思うことしきり。
シャインのおもしろいのは文化を三階層でとらえ、一番深部を「共有された暗黙の仮定」としてとらえるところ。
これは、記号論でいえば「ハビット(習慣)」が解釈項を形成するという事に非常に深い関わりがあると思います。
また、人間に起こる記号過程において、
人間は論理的帰結により情報を導こうとする視点からすれば圧倒的に疎な情報に対し意味を構成する訳だが、
そこに対してはある種のバイアスを持つことで解釈の自由度を押さえ込む必要がある。それが組織内部で一定の制約の方向付けを共有することで、
組織内部での複雑性は縮減され、予測性は高まるのである。
コミュニケーションは文化に基づいて、文化という制約を形成することで初めて可能になる。
その形成には各構成員の認知的なコストがかかっているわけで、それを変革するのはポッと出の主張や計画ではどうにもならず、
チェンジリーダーの必死の命がけの行動が必要なのである。
組織文化の形成と記号創発に深い関係があるのは間違いないだろう.
※ちなみに、このレビューは本に書いてあったことというよりかは、僕の勝手な感想です。 -
Session7「プロセス・コンサルタントとしての人材開発部門」課題文献
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組織系学ぶには、押えておくべき一冊。
組織文化を集団内で共有された暗黙の仮定と定義。
この組織文化、目に見えるものから、標榜された戦略・価値、さらに背後に潜む基本的な仮定にまで深く、広く、不変的にあるもの。
なので組織変革や戦略実施には、まずこの文化を正しく解読し、評価し、これらと一致させることが重要、という論調。
また組織変革にはレビンの変革モデルを使いつつ、組織学習の理論で考察を展開しています。
変革には「アンラーニング」が求められ、そのためには危機意識、学習することへの不安の低減、学習者の心理的安心感が必要とのこと。
文化解読における、自己を深く省みることの重要性は、他の戦略、組織学習理論にも共通するものだと感じました。
シャインの他の研究分野(キャリアアンカー、プロセスコンサルティング)とあわせると、彼の理論への理解がより深まりそうです。
組織変革を「文化」の観点から論じるシャイン
今読んでる、ワイクの「組織化」と重ねると、組織に関する知識が広がる気がします。
結構簡単に読めます。
組織系peopleにはお勧めの一冊です。 -
中央 3F 336.3 シ 05-12-16
高田記念図書館 336.3 0293
「組織とリーダーシップ」
セルズニック
●中央地下 336.3.00082