チェ・ゲバラ伝

著者 :
  • 原書房
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562033867

作品紹介・あらすじ

理想を求め、理想に殉じた情熱のロマンティストの生涯。待望の普及版。

感想・レビュー・書評

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  • 先日行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)において、日本代表はキューバに2回勝ちました。これまでの対戦成績からしますと、この2つの勝利はとても意味のあるものだったかもしれません。
     最初の戦いの後、そしてWBC終了後に、キューバの全国家元首であるフィデル・カストロのコメントが伝わってきました。カストロは2008年2月に元首を退任したものの、その存在感とキューバにおける影響力に陰りはありません。WBCの時に、このようなコメントが聞こえてくるのも、その存在感ゆえであります。
     フィデル・カストロも今年で83歳。
     同時代を生きた革命家や、政治家で名を馳せた人はたくさんいます。キューバ危機を招いたアメリカのJ・F・ケネディ、ソ連のフルシチョフなどなど、様々な人物が現れてきましたが、彼らはすでに鬼籍に入っています。それに比べ、このフィデル・カストロは、幾多の戦闘と困難、政治的危機などを乗り越え、その威厳を失わず、そしてキューバを命がけで守ってきました。激動の時代を通し、その中心にいながらこの時代まで生き延びていることは、世界でも稀有な革命家と言えます。このことに思いを馳せると、時代を超越した巨大な革命家であるフィデル・カストロが、こうして身近な話題であるWBCにコメントを寄せるということは、これもまた感慨深いものではないでしょうか。そして、そのコメントが、戦争・戦闘のような血生臭いものに対してではなく、彼が愛するキューバの国技である野球に向けられているということを考えると、世界は少しずつ平和に向かっているのかと感じるものです。

     さて、前置きが長くなりましたが、チェ・ゲバラです。
     最近チェ・ゲバラのポートレートを元にしたTシャツやグッズも増えていますが、果たしてこのグッズに描かれている人物が、この地球にどのような足跡を残していったのか、本当に知る人はどれだけいるでしょうか。実は私も、最初はTシャツから入った口ですので大きなことは言えません。赤いTシャツ生地にプリントされたチェ・ゲバラの肖像を見て、率直にかっこいいなぁと思い、さらにその赤い下地とあいまって、ゲバラの肖像から伝わる情熱のようなものが直に伝わってきました。とりあえず“キューバ革命の人”という認識しかありませんでした。あれだけ受験で世界史を勉強してきたのですが、チェ・ゲバラという人物の名前はどこにもインプットされていなかったのです。そんなお恥ずかしいわたくしめですが、その後しばらくして、改めてチェ・ゲバラとはどんな人物なのか、ということを知りたくて冒頭の本チェ・ゲバラ伝を読みました。

     詳しくはこの本を始め、他に出ている本を通してその生涯をたどることが良いと思いますが、チェ・ゲバラという人物は、短い人生を疾走した人で、様々な魅力をもっている人物です。旅人であり、医者であり、ゲリラ戦闘員、そしてキューバ革命完成後は工業相を勤め、使節団の団長として世界を巡りました。そしてまた、重度の喘息を持っているなどの特徴もあります。

     チェ・ゲバラの魅力の一つは、その“飾らなさ”にあるのではないかと思います。着ている服に始まって、生活は完素を貫いてたようで、自分が得たものは常に他の人に分配していたそうで、また個人的な賞賛を得ることを嫌ったといいます。
     そしてもう一つの魅力は、“民を想う”ことです。革命家としての彼の根底には、ラテン・アメリカの人々が置かれている、帝国主義の支配下にある苦渋の生活を、なんとかして改善していきたいという気持ちがあり、それが行動の原動力になっていました。
     自分を投げ打ってでも民を救う。そして、自分の信念を貫き通すその飾らない純粋さ。この彼の魅力的な姿は、現在の我々にも何か胸を打つものがあるのではないでしょうか。

     物資に劣る革命戦士が、独裁政権を倒すにはゲリラ戦しか選ぶ道がなかったのかもしれません。ゲリラ戦がチェ・ゲバラを育てたともいえなくもありませんが、もし彼が、今のような時代に生きていたら、もっと違った形で世界を通うと考えたと想います。ゲリラ戦以外のゲバラの方法を見ていたかったように思います。
     どんな手段でこの世界に革命をもたらせようとしたのでしょうか。そしてどの国で、どのような活動を続けていたのでしょうか・・・。

     39歳で亡くなった革命戦士、チェ・ゲバラ。その足跡をたどり、現代を生きる勇気を感じてみてはいかがでしょうか。

  • 文学
    社会

  • 今この時にこの本に出会えて良かった。

  • それぞれ関わった人によってチェの印象は違うが、皆に共通して言っていたのは、「目が澄んでいた」ということ。なんて素敵なのだろう。チェが死んだときの写真を以前見たが目が死んでいなかったことが印象に残っている。すごいひとの一生を読んだ。今生きていたら、、、世界は少し変わっていたかな。

  • 期せずして,アメリカとキューバの国交正常化のタイミングで読んでたが,彼が生きていてもそういう道を辿ったか.膨大な記録情報を参考に書かれたゲバラの自伝だが,もうちょっと物語性を期待していたため,少し無味乾燥な所も感じたものの,読んで損はしない一冊.

  • いまゲバラがボリビアに行かずに、まだ生きていたらどうだったか、と思わずにいられない。それだけ魅力的な人物として描かれている。

    私が生まれるまえに出版された本だが、その時代に日本人がここまで取材してまとめた、ということにも驚いた。

  • 革命家の生涯を描いたこの作品は衝撃的だった。安住の地位に辿り着いてから、再度ゲリラ戦に向かう姿は衝撃だった。

  • チェゲバラの生涯を知ることができる一冊。著者は、文献調査のみならず、関係者にインタビューしたり、実際にラテンアメリカを訪れており、随所に著者自身の見解も交えている。

  • チェ・ゲバラ自身はもちろん星5つ。はじめて知ったが、キューバで革命を成し遂げた後、安泰の身分を捨てて、再びボリビアでゲリラに、そして亡くなる。
    こんな事が出来たのは本当にチェ・ゲバラだけかも。偉人だなと思う。
    ただ暴力に訴えるのはどうなのか。今とは違う理論だったのかな。ユナイテッド・フルーツ社と政治家のつながりで、南米の農地からアメリカへ大量のお金が流れていたし、グアテマラで大統領が国民に農地を配るとアメリカから軍事攻撃したからな。
    たった数十人で革命出来ると思って、キューバに入った青年の気持ちっていうのはどういうものだろうか。しかも裕福な家庭で医者に慣れたのに。本当に偉人なのだろう。しかし南米でなんでこんな人が生まれたのだろう笑
    北アメリカの南米での捉えられ方が非常によくわかった。嫌われている。またはじめから共産主義ではなかった。結果として共産主義なのか。資本主義と共産主義の対立だけではない複雑さもかいま見えた。
    本自体は、詳しすぎて読みにくかった。たぶんキューバ革命の知識が事前にある人には、正確で膨大な情報量のこの本は素晴らしいのだろうけど、所見では人の名前が大量に出てきて、偽名のところもあって、しかも手紙の引用で、わけがわからない箇所があった。

  • 革命することがいいとか、
    社会主義や共産主義がいいというわけではなく、
    チェ・ゲバラが、またフィデル・カストロが、
    社会または世界に対して問題意識を持ち、
    社会が持つ傲慢さや卑劣さに対して、
    理想を実現させるために、揺るぎない信念でもって一つの事を追求し続けたということが本当に心に響いた。
    私も彼のように、理想と信念、そして愛情(チェのいう「革命的情熱」)を強くもって、一つのことを一生追求し続けられる人間でありたい。

    チェ・ゲバラは死んでしまったけど、今もなお多くの人が彼の情熱に共鳴しているという意味で、彼は不滅の生を勝ち取ったと書かれてあったけど、本当にその通りだと思う。
    (2009年5月17日 記)

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著者プロフィール

一九三一年東京生まれ。横浜国立大学経済学部を卒業後、読売新聞社を経て作家生活に。六七年『風塵地帯』で日本推理作家協会賞を、六八年「聖少女」で直木賞を受賞する。推理・サスペンス小説、スパイ小説、歴史小説、伝記小説など広範囲なジャンルで硬筆な筆をふるう。

「2019年 『ガラスの階段 特捜検事 新編集版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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