マハン海上権力史論 (新装版)

  • 原書房
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562041640

作品紹介・あらすじ

クラウゼヴィッツ『戦争論』、リデル・ハート『戦略論』とならび、1890年の刊行以来、世界の海軍戦略に決定的な影響を与えてきた不朽の名著。平和時の通商・海軍活動も含めた広義の「シーパワー理論」を構築したマハンの代表的著作。

感想・レビュー・書評

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  • シーパワーという概念と、歴史上シーパワーが果たした役割を論じ、海洋を大いに利用し得る国家は、その適切さ如何によって盛衰の左右されるところ大であることを述べている。

  • 原著は、アメリカ海軍の軍人マハンが海軍大学校での講義録を整理する形で、1890年に刊行された。彼は、戦争の歴史や教訓は主に陸上に注目して語られがちであるが、彼が Sea Power と呼ぶ力が非常に戦争戦略上大きな役割を果たすものであると提唱。また、当時は蒸気船が登場し始めたばかりであるが、技術が革命的に発展してもなお、帆船時代の戦争の戦略的教訓は廃れるどころか変わることがないとして、過去から学ぶ重要さを説く。紀元前から続く過去の戦争を例証としつつ、Sea Power の重要性を詳細に語った上で、1660年から1783年までの欧州における主な戦争について分析を加えている。

    Sea Power は、その具体的な定義はないが、生産・通商、海運、植民地という海外経済発展の要素と海軍力を総合したような概念である (通商あっての海軍)。これに影響するのが、地理的位置や、自然的形態、領土の範囲、(特に海上の仕事に従事する) 住民の数、国民性、政府の性格である。Sea Power を持ち活かす者が勝利をあげてきたという主張が、具体例に基づいて繰り返される。

    また、マハン自身の著書 (の抜粋) の前に、本書の訳者海自による丁寧な解説もついている。訳者は、米海軍大学校を卒業して海自の司令官を務めている、まさに本書の翻訳の適任者である。本書が新たに翻訳されたのは1982年。まだソ連が存在し脅威であった時代であるが、後述されるマハンの著書の思想の要約と、1982年当時に、刊行された1890年から何が変わったかの解説が、簡単ながら詳細に加えられており、大変参考になる。植民地が認められない世界になったこと、プレイヤーはもはや西ヨーロッパの一部だけではなくなったこと、技術が大幅に発展したことが、主な変化である。こうした相違点を踏まえつつ、未だに活きるマハンの提言から大いに学ぶべきである。

    訳者いわく、元のマハンの本は大変読みづらい文体で、それなりに工夫した翻訳を行ったらしいが、それでも読みづらい文章となっている (訳者自身が書いた解説は読みやすい)。また、第2章以降で展開される、各戦争に対する具体的分析は、教訓がしっかりとまとめられていて参考になるものの、世界史の知識に非常に欠けている私には、リテラシ不足で十分に読み込めなかった。とはいえ本書のメインは、これだけでページの半分を占めている、冒頭の緒論と第1章である。そこは比較的知識がなくとも読み込める部分でありながら、非常に多くの教訓がまとめられており、大変勉強になる。

    とても勉強になったと同時に、さらなる興味が刺激された。本書が対象とする時代ではまだ生まれたばかりのアメリカ合衆国や、当時は脅威ですらなかった大日本帝国やソビエト連邦が、その後200年で如何にして発展したのか。現在の東アジアについて海軍力的見地からは如何に語れるものか。学んでいきたい。

  • 難解な和訳でやや読みにくい。

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介

    シーパワー理論を構築したマハンの代表作。世界の海軍戦略に影響を与えてきた。

  • ライフネットの出口さんの本でも紹介されていた古典として読んでみました。

    感想としてはかなり読みづらく理解に苦しむ本でした。理由としてはそもそもアメリカ独立戦争までのイギリス、オランダ、フランス、スペインの関係性(植民地や誰が治めているのか)を知っている前提が必要な点、また提督の名前等が非常に出てくるのですが訳文の主語が飛ばされていたり、主張の主語が一文中でどんどん変わってしまっていたりして何を言っているのか全くわからないことが多い点です。

    また訳本で多いのですが土地名も多数紹介されるんですが全くわからず巻末の地図も参照しましたが本文中に出てくる地名が記載されていなかったりしてgooglemapを見ながら読んだので非常に疲れました。

    全330ページほどですがあまりにも読みづらく内容が入ってこなかったのですが、だいぶ国や人物の歴史は調べながら読んだのでタメになった部分もあったので甘めに☆3にしています。

  • マハンのThe influence of Sea Power, ですね。地政学の原典の一つかと思われます。まぁメインは海です。過去の歴史からアメリカが学ぶことをまとめたのでしょう。欧州史・地理にそれなりに詳しくないと死ねます。

    陸路に対する回路の有利、海軍の平和時に於ける存在意義、シーパワーにおける地理的位置、自然的携帯、領土の範囲、住民の数、国民性、政府の性格などから始まり、1660年からのヨーロッパ情勢主にイギリス、フランス、オランダ、スペインなどの国家、そして各種海峡、蘭英戦争、英仏同盟対オランダ、フランス対欧州などの戦争とその結果から、オランダがどのようにして力を付け、無くしていったから、逆にイギリスがどのように力を付け、フランスが敗北し、またアメリカは独立していったのか…などを海の観点から捉え・まとめた最初の書籍となっています。海軍力とシーレーンの確保が如何に通称・制圧・支援的な意味で重要だったのか分かると思います。

    大体1800年の少し前辺りまでをまとめていますが、各国の海軍政策(特にイギリスにおいて明確だった)とそれぞれの勝利・敗北要因を解析してる点で非常に勉強になります。島国として日本が学ぶべき書籍の一つでしょう。

    マハン、マッキンダー、スパイクマンは抑えておいてもいいのではないでしょうか。

  • 海洋を利用・支配する総合的な力である「シーパワー」と、英国がそれを最大限に利用できた要因を、主にフランス・オランダと比較しつつ歴史を綴った古典。シーパワーは海軍の強さだけを意味する言葉ではないし、海洋国家としての日本が、有効な戦略(≠戦術)を打ち立てるためには、今後この本の重要性は増していくでしょう。読むにあたって、欧州史の知識は必須です。

  •  地政学の古典の一つとして有名であるが、過去の海戦からアメリカが学ぶべきことをまとめたもの。知られているとおり難解であったが、文章の書き方だけではなく、ヨーロッパ史についてもある程度知っていることを前提として書かれていることもあるのではないかと思う。海上権力史論の背景には海上権益の確保が国家を安定させる要因となるという主張が根底にある。この主張はスパイクマンの平和の地政学へとつながっているが、これを本文から読み取るのは困難であり、解説を読んだ上で本文を読み解いていくと確かにそのような意図を読み取ることができた。マッキンダーのデモクラシーの理想と現実と同じく地政学を主として書かれたものではないが、地理的な要因―風上側か風下であるか、港の位置や大きさ、待ちぶせをするべき場所、戦場の天候など―が勝敗に大きく影響することが強調されており、これらの教訓を活かすことを求めている。そのため、地政学の古典としての地位を得たのではないかと思う。

  • 請求記号 : 391.2||M
    資料ID : 10901266
    配架場所 : 工大君に薦める

  • 海洋戦略と地政学の古典。本書は19〜20世紀アメリカの対外政策の形成に多大な影響を与えたとか。

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