密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

著者 :
  • 原書房
3.33
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本棚登録 : 336
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562048687

作品紹介・あらすじ

目撃された殺人と消えた犯人、そして目の前を落下する女、鍵を飲み込んだ被害者に雪の足跡…いつの間にか現れた「彼」の前に開かない「扉」はない。

感想・レビュー・書評

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  • 贅肉を削ぎ落とした端正な密室ミステリが5篇。

    警察内部で半ば都市伝説のように囁かれる「密室蒐集家」の存在。
    一九三七年から二〇〇一年まで、時代を超えて密室殺人のもとに現れては自動的に解決してゆく謎の男。

    『柳の園』一九三七年
    『少年と少女の密室』一九五三年
    『死者はなぜ落ちる』一九六五年
    『理由ありの密室』一九八五年
    『佳也子の屋根に雪ふりつむ』二〇〇一年

    それぞれの時代背景を活かした密室の謎やトリックも良いのだが、「密室蒐集家」による推理の糸口と解決にいたるまでの過程、犯人特定へのロジックが抜群に面白かった。「密室もの」で密室それ自体よりも周辺から攻めていくのが新鮮。

    さまざまな種類の密室が登場するが、そのなかでも『理由ありの密室』は変わり種だと思う。「密室蒐集家」が語る「密室講義」は興味深かったが、さらに加えられた「新説」にはニヤリとした。

    『少年と少女の密室』が★★★★★
    物語のムードも好きだが、いろいろな合わせ技でやられた。
    謎と推理もさることながら、電光石火の犯人指名に驚いた。

    純粋なミステリという感じだったが無味乾燥になり過ぎず、謎の探偵の存在が不思議な雰囲気を醸し出している。
    面白くて一気読みしてしまった。

  • 目撃された殺人と消えた犯人、
    そして目の前を落下する女、
    鍵を飲み込んだ被害者に雪の足跡・・・
    警察を悩ます密室が出現すると現れるという<密室蒐集家>。
    時空を超え、いつの間にか現れ消える「彼」の前に開かない「扉」はない。
    「柳の園 一九三七年」「少年と少女の密室 一九五三年」「死者はなぜ落ちる 一九六五年」「理由ありの密室 一九八五年」「佳也子の屋根に雪ふりつむ 二〇〇一年」の5編収録。

    この中で「佳也子」だけ既読で、初めて読んだ時にはこの彼の存在がまず納得できず。
    あとトリックの肝である部分の偶然に萎えてしまったのでした。

    しかし今回、この5編を並べて読んでみると、彼の存在はすとんと納得。
    偶然に頼る部分は納得できないものの、犯人当てに特化した作品たちにはいっそ清々しささえ感じてしまいました。
    だから逆に、ミステリに人間臭さや物語性を求める方には不向き。

    ベストは「少年と少女」の盲点を突いた密室。
    もしくは「理由あり」の密室談義。
    あ~、美しかった。堪能しました。

  •  密室殺人が起こると、ふらりと現れて事件を解決していつの間にか去っていく密室蒐集家。密室殺人ばかり集めた短編集です。トリックもおもしろいですが、密室蒐集家の奇妙な存在感にハマリます。密室トリックや安楽椅子探偵が好きな方はぜひ。
    (YA担当/なこ)平成30年10月の特集「ミステリーを読もう」

  • 綾辻先生と麻耶先生が推薦していますが、まあまあといったとこでしょうか。
    密室殺人ばかりの短編集です。
    楽しめますがどれも無難な感じの作品です。
    事件が起こり、探偵が出てきてまでは普通ですが、解決のスピードが半端なく早いです。
    解決までじらされたい人向きではありませんね。
    探偵が出てきたら、即、事件が解決されるので、私は推理クイズをしているみたいな感覚に陥ってしまいました。

  • まさに本格探偵小説の王道。
    大田忠司に「奇談蒐集家」と云う秀作があるが、時空を超えた安楽椅子探偵である点は類似している。どちらも極上の珈琲の味わいです。
    香り高い、後味の良い作品です。

  • 読了、55点。

    **
    偶然カーテンの隙間から教室内の教師が撃たれるのを目撃した少女、少年少女が衆人環視の密室の中で殺されていた事件の真相、雪に残されていた立った一組の足跡を巡る殺人事件、
    密室が存在すると現れるという密室蒐集家がこれらの謎に挑む。
    **

    大山誠一郎さんの著作は昔『仮面幻双曲』を読んで以来。当時の感想としてはネタは非常に上手く出来ているのに、小説として文章力が足りないし、人物描写も読んでいて面白くない、という感想。
    この度連作短編集でミステリランキングでも話題に挙がっていたので、短編なら上記の小説としての欠点もカバーされるかなと予測して読んでみることにしました。
    結果から言えばやはり同様に小説として面白くなかったという結論に至ります。

    最後の短編の序盤から察すると決して文章力がない訳ではないと思うのですが、そこを書くことに重きを置いていらっしゃらないのか本当にごく一部垣間見えるだけで非常に残念。
    ミステリ小説はもちろんトリックやロジックが大事だとは思いますがそれを骨格にした上で、その肉づけも同じように大事だと思っている自分からするとよい評価をしたくなるタイプの小説ではありませんでした。キツイ言い方をすれば状況設定の細かい、駅や病院の売店などにある5分間ミステリという印象。

    またトリックとしても偶然性が大き過ぎてさすがにここまでやるのはどうかという印象も強く。
    加えて連作短編集としての大きな流れにも特に見せ場がなかったのが残念でなりません。

  • 全5篇から成る端整な密室ミステリ集。戦前から現代に至るまで、様々な時代、様々な場所で発生した不可解な密室殺人を正体不明の男・密室蒐集家が解決する。密室をテーマとして扱いつつも、どの短編もトリックの解明で終わらせることなく、そこを起点にさらに犯人の絞り込みまでこなしてみせます。このロジックが極限に鮮やか且つハイレベル。「少年と少女の密室」で見せる犯人特定までの流れと、「理由ありの密室」における密室の使い方は特に素晴らしいです。推理の一部に論理の飛躍(懐中時計の件など)と「それはそういうもの」と割り切って必然性を投げてしまっている箇所もありますが、ここまでやられたら素直に感服するしかないでしょう。

  • 非常に洗練された美しい密室短編集でした。

    密室殺人が起きると、どこからともなく現れる密室蒐集家。華麗に密室を解いてはいつの間にか姿を消している。


    こんなに短い文章の中で、きちんと情報が提示されて破綻なく論理を展開するって美しいな。
    無駄がない。洗練されている。

    小説としてストーリーがもう少し面白ければ、ため息ものでした。
    でも素敵でした。

    「少年と少女の密室」が個人的には一番美しいと思っている。

  • 収録作
    「柳の園」
    「少年と少女の密室」
    「死者はなぜ落ちる」
    「理由ありの密室」
    「佳也子の屋根に雪ふりつむ」

    どこから読んでも犯人当て小説らしい書き方をした、珠玉の犯人当て小説集。大山さんの文章を初めて読んだけれど、自分はここまで純粋な犯人当て小説をいくつも書く作家という存在を珍しく感じた。
    久しぶりに、こういう真っ向からのパズル小説だったけど、頭を切り替えてとても楽しんで読めた。

    どれも考えたら思いつきそうな推理をガンガン提示→どれも否定→不可能性の演出、というのが(見た感じ)丁寧になされていて、凄いかと。

    「少年と少女の密室」、「理由ありの密室」が良かった。

    犯人当ての参考文献があるなら指定したい。

    • kwosaさん
      「少年と少女の密室」は僕もお気に入りです。
      本棚拝見しました。
      ラインナップが個人的に「ツボ」過ぎて思わずフォローさせて頂きました。
      突然の...
      「少年と少女の密室」は僕もお気に入りです。
      本棚拝見しました。
      ラインナップが個人的に「ツボ」過ぎて思わずフォローさせて頂きました。
      突然のコメント、失礼しました。
      2012/11/15
  • 密室殺人が起きると時代を関係なく現れる密室蒐集家。全5編の短編集ですべて密室を取り扱っているが、密室のバリエーションが豊富だった。どれも真相に気づくことができなかったが、解答を見せられて納得。

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著者プロフィール

1971年、埼玉県生まれ。京都大学推理小説研究会出身。サークル在籍中は「犯人当て」の名手として知られた。2004年、『アルファベット・パズラーズ』でデビュー。13年、『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞。18年刊行『アリバイ崩し承ります』は「2019本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング第1位に、20年には連続ドラマ化され、大きな反響を呼ぶ。著書に『仮面幻双曲』『赤い博物館』『ワトソン力』『記憶の中の誘拐 赤い博物館』、訳書にエドマンド・クリスピン『永久の別れのために』、ニコラス・ブレイク『死の殻』がある。

「2022年 『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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