北からの世界史: 柔らかい黄金と北極海航路

著者 :
  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562049431

作品紹介・あらすじ

柔らかい黄金…クロテン、ビーバー、ラッコの毛皮交易の盛衰を巡りバイキング、ロシア、シベリア、北米が歴史の表舞台へ。
世界史はユーラシア規模の陸の時代から、三つの太洋が五大陸を結ぶ海の時代へ。さらに北極海航路による大きな歴史へ変遷。
北方世界から見た世界史の変遷と北極海航路の展開!

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んだ「風が変えた世界史」の著者が、今度は北の世界について歴史的事実を考察した本。
    副題の「柔らかい黄金と北極海航路」の「柔らかい黄金」というのは、毛皮のことなんですね。
    毛皮が『奢侈品』として金持ちのステイタスであったことから、ロシアのクロテン、アラスカのビーバー、カムチャッカのラッコなどを求めて北方航路が開拓されていった様子は、なるほどそうだったのか、と納得。
    それにしても『奢侈品』ってあまり聞き慣れない言葉が多用されているのですっかり憶えてしまいました。使うべきところがみつからないけどね。

  • 本書は、著者の言葉を借りれば、ユーラシア・アメリカ北部の森林地帯と海域を視座に置いた世界史の試みとなる。その切り口は、毛皮と航路探索。毛皮で整理をすると、9世紀からのクロテンの時代、16世紀からのビーバーの時代、18世紀から19世紀のラッコの時代となり、これら毛皮の交易を通して、バイキング、ロシア、シベリア、北アメリカ、太平洋の歴史を語っている。また、大航海時代以降、イギリス、オランダ、ロシアなどにより試みられた北東航路、北西航路の探索の動きを概観している。
    帆船や航海そのものを語ってはいないが、帆船模型工作の観点からはバイキングのロングシップから始まり、ボストン・クリッパーまで、帆船がどういう時代背景や交易の大きな流れの中で活躍したのかを、北からの視点でかなりすっきりと自分の頭を整理することができた本である。
    本書に織り込まれた内容は賑やかである。
    モンゴル帝国が崩壊し、オスマン帝国が勢力を伸ばし、1453年のコンスタンティノープル陥落により地中海交易を支配してから、地中海経済ががらりと変わる。
    ジェノバなどのイタリア商人がイベリア半島に進出し、エンリケ航海王子の南アフリカ沿岸の探検、喜望峰の発見、リスボンで活躍したジェノバ人のコロンブスの大西洋横断航海、ポルトガル人のマゼランによる世界周航と、大航海時代は、ポルトガルやスペインが主役でダイナミックに進んだ。一方、北極海に目を向ければフランス、イギリス、オランダが、バイキングが活躍した海を継承し、ポルトガルやスペインを出し抜くべく、北極海を経由してアジアに至る航路の開発に挑戦した。
    また、キャプテンクック船隊は、18世紀の中ごろに三度にわたる航海を通じて太平洋の全容をほぼ明らかにした。ラッコの交易をヨーロッパに知らしめたのはキャプテンクックであり、イギリスやアメリカの毛皮商人が得た毛皮情報は、北西航路探索の副産物でもあったと著者は述べる。
    近年の温暖化により、北極海航路は俄然注目を浴びるようになった。何しろ、日本からヨーロッパへの航路を考えた場合、マラッカ海峡からスエズ運河を経由する航路に比べて距離は三分の二になる。マラッカ海峡やソマリア沖の海賊の影響も受けない。また、アメリカ西海岸からパナマ運河経由の欧州航路も大幅に縮小される。夏の短い期間とはいえ、北極海航路が新たな航路となる日は近いだろうし、砕氷船などの技術進歩により航海が可能となる期間もより長くなって行くだろう。その時の交易のドライバーは、毛皮に代わりシェールガスということになるだろうか。

  • 「購入希望」を出して買ってもらった。
    北極海航路シリーズに関連しての関心である。
    黒てん、ラッコに着目しての地理史は面白い。

  • 世界史音痴のぼくには、とても新鮮。
    高校の授業は、現代社会と地理を選択したため、一時は世界地図のかなりの地名と位置を暗記。だけど、それはかなり無機質な感覚。
    この本も含め、歴史をテーマにしたものは実に有機的な気がする。
    クロテン、ビーバー、ラッコと、多くの人びとの生死が絡み合うなんて。

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著者プロフィール

1942年,東京生まれ.東京教育大学文学部史学科卒業.
都立三田高等学校,九段高等学校,筑波大学附属高等学校教諭(世界史担当),筑波大学講師(常勤)などを経て,現在は北海道教育大学教育学部教授.
1975年から1988年までNHK高校講座「世界史」(ラジオ・TV)常勤講師.

「2005年 『ハイパワー世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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