ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた

  • 原書房
3.33
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562052592

作品紹介・あらすじ

ネアンデルタール人絶滅の決定的な要因はヒトがイヌ(オオカミ)を家畜としたこと――。
従来の説よりも1万年以上古い4万年前にネアンデルタール人は絶滅していたなどの最新の知見をふまえ、「侵入生物」「動物の家畜化」という生態学的な視点から人類永遠の謎を解く。

「ネイチャー」「ナショナルジオグラフィック」「ウォール・ストリート・ジャーナル」「オブザーバー」ほか、世界のメディアが驚きとともに紹介したベストセラー!

◎監訳者あとがき より
きわめて刺激的な本である。一般の人にも強い関心があり、永遠のテーマでもある「ネアンデルタール人はなぜ絶滅したのか?」の謎に、最新かつ総合的なアプローチで、原著者パット・シップマンはこれまで想定されたことのなかった推論を導き出した。
アフリカから中東をへてヨーロッパに進出した現生人類は、気候変動や遺伝的多様性の欠失で衰退しつつあったネアンデルタール人を、意図せざる結果として滅ぼした。それには、この頃にいち早く家畜化されるようになったイヌ(原著者の言う「オオカミイヌ」)の存在があった――という説である。
この説を提起したパット・シップマンがベースにしたのは、おおまかに言ってふたつの発見である。
ベルギーのゴイエ洞窟のイヌ科動物が実は家畜化されつつあったオオカミイヌであり、その年代がそれまで想定されていたよりもはるかに古い3万6000年前頃(較正年代)という早さであったこと、そして昨年(2014年)の英科学週刊誌『ネイチャー』8月21日号で報告され、考古学と古人類学の研究者に衝撃を与えた、オックスフォード大学のトマス・ハイラムらのチームによるネアンデルタール人の絶滅と現生人類のヨーロッパへの拡散と制覇の新たな年代的見直しである。
こうした最新知見を基に、動物考古学者として生態学の観点から、上記の説を説得力をもって論述しているのが本書である。

◎目次
序 章
第1章  わたしたちは「侵入」した
第2章  出発
第3章  年代測定を疑え
第4章  侵入の勝利者は誰か
第5章  仮説を検証する
第6章  食物をめぐる競争
第7章 「侵入」とはなにか
第8章  消滅
第9章  捕食者
第10章 競争
第11章 マンモスの骨は語る
第12章 イヌを相棒にする
第13章 なぜイヌなのか?
第14章 オオカミはいつオオカミでなくなったのか?
第15章 なぜ生き残り、なぜ絶滅したか

感想・レビュー・書評

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  • 人間と遭遇すると、なぜ様々な動物が絶滅するか、についてネアンデルタール人について当てはめた本。
    ネアンデルタール人が絶滅した原因として、気候変動、ホモ・サピエンスが殺した等々が言われている。
    同じ餌を奪い合う状態だと、どちらも共存することはない。ネアンデルタール人と現生人類についても同様。
    現生人類はオオカミイヌを狩りに使うことができたので、ネアンデルタール人より餌を撮るのに有利であった、とする説。

  • 出アフリカ近辺と犬に興味がある人にはかなりストライク。最初の家畜としてイヌが誕生したのは1.2万年前と大学で習ったけど、犬との付き合いはそんなに浅くないのです。加えて、ネアンデルタール人がなぜ衰弱して行ったのか、現生人類がどれだけ脅威的な侵入種なのかも丁寧に検証されていて勉強になった。そういえばヒトはいつから白目になったんだろう。ところで題名を期待して読むとギャグかと思うくらいに裏切られる。原題の方がテーマとしては正しいのかな。

  • 無類のネアンデルタール好きの自分はイケるが、一般の方は退屈だと思う。
    ホラアナグマ、ホラアナライオンの連発でテンション上がる。

  • 面白かった。

    題名の通りで、ネアンデルタール人は、ヒトがオオカミを家畜化した事がきっかけとなり絶滅した、とする推論本。であるがために過小評価気味な本だと思うのだが、、、そこ至る迄の事実と背景情報はとても説得力を持って書かれていて、勉強になった。

    犬が好きで犬関連と本だとおもい手にしたが、犬よりもネアンデルタール人情報の方が圧倒的に多い。

    ネアンデルタール人は、何十万年も生存していたので気候変動で絶滅したとは考えにくい。しかし、待ち伏せ接近狩猟から進歩しなかった事、食べるもののほとんどが肉という多様性に欠けていたこと、など4万年前には衰退傾向にあったと考えられる。
    そこにホモ・サピエンスの登場により獲物・住処などの「頂点捕食者」の位置をめぐる争いが起きたと思われる。(頂点捕食者...イエローストーン国立公園にて、放たれたオオカミ31匹によりコヨーテが頂点の座から引き摺り下ろされ自然な食物連鎖構造となった)


  • 犬が家畜化されたのは1万年位前というのが定説だったが、最近の研究では3万年位前らしい。他の動物を家畜化した生物は人類だけで、ヒトとイヌ(オオカミイヌ)が協力することでマンモス狩りで他の食物連鎖の頂点動物を圧倒し、絶滅させた、という著者の仮説。ただ、ネアンデルタール人と人類がラップしているのは5千年程度で、人類がヨーロッパに進出する前からネアンデルタール人はかなり衰退していたらしい。

  • 全ての学説が仮定から始まるとすれば、ヒトがネアンデルタール人を絶滅させたのは、一つの学説であると同時に仮設だろう。
    研究者でない人間としては、本説がどの程度の支持を得ているのかは不明であるが、興味深く感じられた。
    とは言え、生態系やイヌを家畜にする過程については述べられているものの、実際に、現生人類がどれほどの圧力をネアンデルタール人に加えていたのか、具体性が見えてこないから印象論に感じられてしまう。
    それでも、考古学や生態系について知識欲を満たしてくれる良書ではないか。と感想を抱いた。

  • 約四万年前ユーラシア大陸で現生人類がオオカミを家畜化したことにより、ネアンデルタール人を絶滅に追いやる一端を担ったのではないか。という本書。著者本人も認めている通り、四万年前はすでにネアンデルタール人は遺伝的多様性を失っており絶滅に向かっていた。オオカミイヌの最古の化石も同時期。となると、この説を補強する必要があるだろう。
    海外ノンフィクションのさだめで訳書が出る頃にはすでに新しい知見が起きていることも多く、本書もその例外からは免れない。
    イスラエルでは18万年前の現生人類化石が発見され、東アジアでも現生人類とネアンデルタール人の混血が発見されたことで、ユーラシア大陸への現生人類到達は従来説より大幅に繰り上がりそうだ。今後、オオカミの家畜化の時期なども再発見があるだろう。
    また、ネアンデルタール人以外の人類には一切触れられていない。

  • ☆狼をイヌとして家畜化し、大型動物の絶滅に

  • 難しかったが、まあ面白かった

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著者プロフィール

ペンシルヴァニア州立大学名誉教授。古人類学の専門家。『人類進化の空白を探る』(アラン・ウォーカーとの共著/邦訳=河合信和訳/朝日新聞社)でローヌ・プーラン科学図書賞を受賞。

「2015年 『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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