ネット時代の図書館戦略

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562052844

作品紹介・あらすじ

ネット検索で手軽に情報を入手できるこの時代に、公共図書館はなぜ必要なのか、どうあるべきか。
すべての人が情報にアクセスし、知識を得る権利を守るための図書館の変革と未来像を
米国デジタル公共図書館設立委員長が提唱。

感想・レビュー・書評

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  • やや古くなってしまっか?
    あと日本の状況ともかなり違っているかな?

  • 2014年のネットがインフラともなった今後の図書館をどう運営していくか模索している話。
    比較的若い著者でびっくりした。
    無料で本を貸し出すという行為がどのような事なのかに関してもちゃんと踏み込んでいてそのためにネットも必要だと言う著者。
    情報とは何か、知識とは何か、図書館の存在意義とは何かを考えさせてくれる。
    日本もオンライン図書館やってくれないかな。
    このコロナでさらに必要だと思うんだよね。
    特に子供達に。
    あとアメリカの公共図書館が当初カーネギー図書館だったことを初めて知った。
    このスケールことができてしまう富豪ってすごいよね。

  • すべての人が情報にアクセスし、知識を得る権利を守るための図書館の変革と未来像を、米国デジタル公共図書館設立委員長が提唱。(e-honより)

  • 第1章 危機
    2014年現在において、図書館は紙媒体とデジタル資料のハイブリッドな環境に身を置いている。過去=紙、未来=デジタル、といった具合に。この状況下では、片方に注力することはできない。バランスを見極めながら、活動を選択する必要がある。

    第2章 顧客
    図書館が提供する情報と来館者が求める情報には、多少の齟齬がある。特に若者はデジタル情報へのアクセスを求めている。デジタル情報へのアクセスは、家庭の所得に関連しており、図書館が幅広い人々に提供することが求められる。ただし、民間サービスと同じことをしているだけではいけないことも承知しなければならない。

    第3章 空間
    図書館は学習を促す空間として存在し、市民(特に学生)も実際にそれを求めている。もうひとつの空間としての価値は司書による支援だ。すべての資料がグーグルによって電子化されているわけではない現代において、物理・電子の双方に精通した司書は良いサポートとなる。

    第4章 プラットフォーム
    図書館が情報を単独で提供することは、予算・人員の問題から困難である。相互に協力するネットワークが必要となる。協力し生み出す情報のプラットフォームは地域の図書館に人を呼び込む新たな要素となる。

    第5章 図書館のハッキング
    デジタル化社会のふたつの重大なパラドックスが、図書館の重要性が衰えるのではなく高まっていることをはっきりと示している。
    ・デジタル化された情報はかつてないほど利用しやすいが、その反面、保持するのがきわめて難しいということだ。
    ・豊かな社会には情報があふれているものの、しばしば見つけづらく、解明しづらく、使いづらいということだ。

    第6章 ネットワーク
    全国の図書館、司書が連携することで図書館の可能性は広がる。その際、司書に求められるスキルは従来と異なることがわかる。

    第7章 保存
    収蔵能力の競争よりも、相互連携による巨大なネットワーク構築の方がコストや得られる結果から有益だと考えられる。

    第8章 教育
    学習=学校ではなく、地域内の連携によって効果的な学習を与えることができる。

    第9章 法律
    アナログの本は、一度購入すればその所有権は購入者のものとなる。しかし、電子書籍は”使用する権利”を得られるに過ぎない。このような環境下では図書館は紙の本を所有することを優先するだろう。
    プライバシーの観点もデジタル世界ではあいまいになる。
    著作権とプライバシー、双方に司書は深くかかわらなければならない。

    第10章 結論
    図書館は未来に情報を残す施設であり、未来の利用者に向けたサービスを検討する必要がある。求める情報ニーズを予測し、サービスを開発しなければ将来の支持者を失うことになる。

  • ふむ

  • アメリカ・デジタル公共図書館設立委員長などの肩書きを持つ著者が、アナログからデジタルに移行しつつある時代の図書館のあるべき姿を語る。情報に簡単にアクセスできる時代に図書館が果たす役割とは何なのか。情報リテラシー教育を行う、各方面と協力してデジタルコレクションを構築する、子どもたちの情報格差を埋める役割を果たすなど移民大国であるアメリカらしい発想が多かった。アメリカでも日本と同様図書館への予算がカットされている。図書館の存在理由や司書の役割を改めて考えさせられた。

    p63
    ベイツやほかの篤志家たちの援助により、ボストン公共図書館(BPL)は、アメリカ合衆国の主要都市の住民なら誰でも資料が借りられるはじめての図書館となった。今日では当然に思えるが、一八五二年当時は急進的なアイディアだったのだ。もちろん、図書館そのものは何千年も前から存在していた。たとえば現在のエジプトにあったアレクサンドリア図書館のような初期の図書館は、非常に狭い範囲の利用者たち、たいていは修道院か放送関係者のものだった。オックスフォード大学のボドリアン図書館は一六〇二年に、学者たちのために開設された。私立図書館ー一七三一年にベンジャミン・フランクリンが創設したフィラデルフィア図書館会社や、新しいBPLから通りを少し行ったところにある一八〇七年創設のボストン・アシニアムもその一部であるーは、裕福な人々がお互いに本を共有することを可能にした。

    慈善家のアンドリュー・カーネギーはこのアイディアを全国的に取り入れ、いくつかの条件に合えばどんな町にでも、公共図書館のための費用を提供すると申し出た。一九一七年までにカーネギーは、アメリカじゅうの一四一二の町に一六七九の図書館を建てることを約束した。

    p7
    アメリカと同様イギリスでも一九世紀なかば、とくに一八五〇年に公共図書館法が議会で承認されて以降、公共図書館が全国に普及した、

    p11
    デジタル・コモンウェルスと呼ばれるプロジェクトを通じて、BPLはデジタル化計画の中心を担っている。州内全域から画像や書籍や地図や資料をウェブ上に集め、後世に残すために保存するものだ。

    p26
    現在アメリカでは、アメリカ・デジタル公共図書館が稼働を始め、急速に成長して、デジタル時代の図書館にとって新たな世界の基礎を築く要素のひとつとなりつつある。そして、同様のプロジェクトが世界じゅうの国々で計画中、あるいは稼働段階に入っている。これらの国家的プログラムをつないで、ひとつの国際的なネットワークー地球全体の人々にサービスを提供する、世界規模の図書館プラットフォームーにできない理由はない。

    p31
    現在のシリアに存在した都市国家エブラの宮殿にあった図書館を例に挙げよう。ここは記録に残る最初の図書館のひとつで、紀元前二六〇〇年から二三〇〇年頃に存在していた。コレクションの量は当時最大を誇り、およそ一七〇〇の粘土板から成っていた。基本的に記録資料だが、行政、法、商業分野のものもある。また讃美歌や辞書や叙事詩もあった。たとえ支配者といえども、収集できる規模はささやかだったのだ。この粘土板のコレクションは宮殿の二部屋におさまっていた。

    p32
    アレクサンドリア図書館ーエブラの図書館よりずっと大きいーがコレクションを増やす主な手段は、法令によるものだった。アレクサンドリアの港に入る船が積んでいる本はすべて没収かれ、書き写されたのちに返された。

    p33
    現代的な印刷機が導入されたあとでさえ何百年も、印刷された出版物の数はまだ比較的少なく、本を読むのはかなり裕福か、並はずれて高い教育を受けた人々に限られた。

    そして一九世紀に起こった民主化運動が、図書館が利用される範囲を永久に変えてしまう。

    p37
    近い将来の図書館は、圧倒的に印刷物が基本である過去の世界と、デジタル主体の未来の世界とが混じり合ったものになるはずだ。
    その結果、われわれはさしあたり、"デジタル・プラス"な情報環境に身を置くことになる。新しい作品はいまもこれからもとくに指定しないかぎりデジタル形式で生み出され、保存されるというのがその基本的概念だ。

    p37
    情報を生み出したり入手したりする方法は年々、圧倒的にアナログからデジタルへと変わりつつある。少なくとも出発点においては、ほとんどすべての情報がデジタル的な手段を通じて作成され、利用されているのだ。

    →どのように収集するか。全国の図書館が協力する。

    p65
    地球的規模で見れば、インターネットにアクセスしているのは世界の人口の三分の一程度にすぎない。

    p67
    いまではアメリカにあるおよそ一万六七〇〇の公共図書館の九五パーセント(一万五四〇〇館)で、利用者は無線でインターネットを使うことができる。全国の児童が毎日のように公共図書館を訪れるのは、本を借りたり図書館司書に相談したりするためではなく、放課後にインターネットに接続して、図書館が閉まるまでのあいだに宿題を終わらせるためだ。ときには閉館後でも、図書館の駐車場は夜遅くまで、建物の外へ漏れてくる無料Wi-Fiを車の中に座って利用しようとする人たちでいっぱいになっていることもある。

    p70
    デジタルを介した学習形態をもっとも利用できる若い人々が、すなわち社会経済的にもっとも高い地位を持つ人々でもある。デジタル時代の罠ー個人情報を共有しすぎたり、オンライン上で危険な状況に陥ったり、信用できる情報とそうでない情報が見分けられなかったりーを避けるためのサポートをほとんど受けられない若者は、裕福とは縁遠い家庭の出身である傾向がある。

    →司書は社会的経済力の低い集団に生まれた若者に対する情報リテラシー教育ができる

    p85
    図書館司書は毎日、さまざまな分野で何が入手できるか、どうやって探せばいいのかを考えながら過ごしているので、学生やほかの図書館利用者たちに優れたサービスを提供してくれるだろう。質も妥当性も非常にさまざまな潜在的情報源であふれそうになっている世界では、司書のこのスキルー最良の情報へ導いてくれるーは計り知れないほど貴重になりうる。

    p86
    (前略)サンフランシスコ公共図書館司書の場合、インターネットにログインすれば、実際の図書館が開いている時間ならいつでも、所属する司書にチャットかメールで相談できる?また、ほとんどの大学図書館は開館時間に、利用者がどこからでも質問できるチャットサービスを実施している。

    p92
    図書館サービスの革新はアメリカじゅう、世界じゅうで起こりつつある。試験中の学生がリラックスする手助けとして、図書館は自転車からセラピー犬まであらゆるものを貸し出しているのだ。イェール・ロースクールの学生は、一五分から二〇分間のリラクゼーション集会のあいだ、ひとりでも友だち数人ででま、一二歳のかわいらしいセラピー犬のモンティを借りることができる。

    p93
    たとえば子どもが、とくに男の子が、図書館のコンピュータを使ってゲームなどをしているなら、巧みに作られた物理的なゲーム環境を導入することで、この関心を生産的な方向に向けてやる。YouMediaムーブメントは、参加する若者が仲間や指導者とともに新たな知識を身につけられる魅力的な空間を、公共図書館内に作り出している。シカゴ公共図書館の本館に拠点を置く最初のYouMediaセンターは、カリフォルニア大学アーバイン校の研究者である伊藤瑞子が言う"入り浸って夢中になる"ための、気楽に参加できて通信環境の整った空間を用意した。YouMediaを通して提供されるプログラムは、子どもたちにデジタルリテラシーや製作スキルを、またインタラクティブ方式で新しい知識を生み出したり、オンラインでマルチメディア形式の発表をしたり、デジタル情報を解析して信用度が低いものと高いものを分けたりする方法を教えてくれる。(中略)"ハッカー・スペース"または"メイカー・スペース"と呼ばれるワークスペースを図書館内に作るというもうひとつの構想も、同じように革新的なプログラミングを提供している。

    p94
    ゲームを中心にしたプログラムは、大勢の子どもたちを全国の図書館へ呼び寄せるもののひとつである。これらのプロジェクトは、大都市の図書館でも小さな町の図書館でも、同じように盛んだ。シカゴ公共図書館では、大好きなゲームをについて真剣に考える生徒たちを、YouMediaセンターがサポートしている。子どもたちは"ライブラリー・オブ・ゲームズ"と呼ばれるウェブサイトを立ちあげて管理し、そこで
    ポッドキャストを作ったり、ブログに投稿したり、ゲームのレビューを発表したりするのだ。ボストン公共図書館がジョンソン・ビルディングを改装した際には、新設の"ティーン中心"エリアの一部としてゲームとビデオの部屋が作られた。ほかにはボストン郊外にあるドーヴァー公共図書館のように、SAT〔アメリカの大学進学適性試験のひとつ〕の試験準備などの一〇代向けのサービスを提供すると同時に、子ども向け区域にビデオゲーム・ステーションを開設してウェブ上でゲームの実況解説を行っているところもある。

    p98
    けれどもコンピュータ・リテラシーの講座やメイカー・スペースのような場所の提供があれば、図書館はあらゆる年齢層の人々をうまく引きつけ、記録された知識を見つけたり入手したりするだけの場所ではないことを明らかにするだろう。

    p99
    図書館にとってもっともよい位置は、ヘルシンキのライブラリー一〇や、カンザスのジョンソン郡セントラル・リソース図書館や、YouMediaセンターが示しているように、フィジカルとデジタルー娯楽と学習ーが合わさった場所だろう。

    p100
    デジタル時代の図書館の空間モデルは、コミュニティセンターより教育施設に近いものになるべきだろう。多くの場合、図書館は学校教育を受けなかった、あるいは受けられなかった人々の"第二のチャンス"として機能しているのである。

    アメリカに来たばかりの移民がもっとも信頼を置く施設が図書館だ。これらの新規の住民のために、公共図書館システムはときに、彼らが母国で得られなかった学校教育を補ったり、新しい国でのはじめての友人となったり、慣れない文化を知る道筋を照らしてくれたりするかもしれない。

    p115
    図書館の役目をプラットフォームに変えるもっとも大がかりで組織的な取り組みのひとつである、アメリカ・デジタル公共図書館(DPLA)の設立に向けた動きは順調に進んでいる。めざすはデジタル時代にアメリカ合衆国のーひいては全世界のー国立図書館のプラットフォームを確立することだ。デジタル公共図書館の設立は、広い視野に基づく合意を得て始まった。二〇一〇年一〇月、図書館や財団や学会や科学技術分野のおよそ四〇名の指導者が合意したのは、"現在の、そしてこれからの世代の人々すべてに教育と情報と力を与えるための、図書館と大学とアーカイブと美術館の国家遺産を活用する包括的なオンライン資源の開かれた分散型ネットワーク"をともに構築することだった。

    p117
    その日(二〇一三年四月)、ニューヨーク公共図書館を含むさまざまな場所で、コンピュータによるDPLAのサービスが始まった。こうして初期の段階から協力してくれたニューヨーク公共図書館では今日、DPLA経由で一〇〇万点以上のデジタル作品にアクセスすることができる。

    州や地域のデジタルアーカイブから集められた、豊富な興味深いデジタルコレクションに、主要な大学図書館の特別所蔵品と連邦政府のコレクションが合わさって成り立っている。DPLAはインターネットに負けない規模とスピードで、国のすみずみからコレクションを集めて成長を続けている。

    p119
    こうした州に根ざしたハブに加え、DPLAは主な機関のデジタルコレクションもまとめている。その一例がDPLAの大学を基盤とするハブの第一号、ハーバード大学の特別コレクションだ。ここにはたくさんのデジタル化されたエミリー・ディキンソンの作品が含まれている。

    p120
    そう、いまでは誰もが自分の携帯端末やコンピュータから直接DPLAのサイトhttp://dp.laにアクセスして、調べたいものを検索できる。

    p125
    実質的な本部をソウルに置く韓国国家電子図書館は、二〇〇九年にオープンした。また、国を挙げての電子図書館として最大規模のネットワークを誇るヨーロピアナは、ヨーロッパの多くの国のデジタル化された文化遺産を集約している。世界規模の電子図書館をひとつ作る代わりに、こうした国家構想で国同士がつながれば、地理的な境界線を越えて情報を探す一助となる。
    ヨーロピアナでは、ヨーロッパの二三〇〇万を超えるデジタル化された文化資料に誰もがアクセスできる。資料には書籍、原稿、地図、絵画、美術品、記録史料などが含まれる。欧州委員会からの出資をもとに、ヨーロピアナは地域で保管されている作品へのアクセスを円滑に行うため、直接、または収集家を通じて付加的なデータを提供する一五〇〇以上の文化遺産施設のネットワークから資料を集めている。

    p133
    比較的裕福でよりよい教育に恵まれた人はデジタル時代の恩恵を受けやすく、あまり恵まれない人はその反対になりやすい。現代も、さらにデジタル化が進む将来においても、図書館はこうした格差に隔てられた人々の橋渡しをするのに適した立場にある。

    p136
    図書館のハッキングとは運営形態上の概念であり、特定の業務をさすわけではない。図書館を立て直す過程でまず第一に求められるのは、コンセプトだ。理論家や現場の職員や資金提供者からなる幅広いコミュニティの人たちが支援できる、改造のよりどころとなる骨組みが必要になる。

    p137
    図書館をハッキングするにはまず、場としての図書館をプラットフォームとしての図書館に置きかえ、そうした図書館を各館を結びつける接続ポイントとして位置づけることだ。図書館司書は情報と知識の世界の有能な案内役であり続け、現実の環境とオンライン上の両方に存在する。

    p138
    デジタル化は図書館のハッキングの一部である。なぜなら、図書館は所蔵する資料に対して独占的な権利を有するという既成概念をくつがえすからだ。たとえば、ニューヨーク公共図書館やヨーロッパの優れた大学図書館のいくつかが所有する特別コレクションは少しずつデジタル化され、実際に図書館に出向かなくても、世界のどこのコンピュータからでも無料であまねくオンラインで利用できるようになっている。

    p140
    というのも、ケンブリッジ大学が独自の監修でアイザック・ニュートンの個人的な資料をデジタル化し、オンライン上で自由に閲覧できるようにすることを決めたからだ。

    p142
    図書館やアーカイブや美術館の所蔵品をデジタルで公開する最大の利点は、より大勢の来館を促すことだ。テート・モダン、ブルックリン美術館、ハーバード大学図書館を例に挙げると、どの館も特別コレクションのデジタル化に相当な投資をしてきている。図書館わアーカイブや美術館は決まって、デジタルコレクションをオンラインに載せたことで来館者が増えたと報告している。人々が触発されてオリジナルを見たくなるからだ。

    p147
    四〇年以上前、オハイオ州の主要ないくつかの図書館が共用のコンピューティングリソースの重要性に気づき、オンラインコンピュータ図書館センター(OCLC)という協力体制を作った。

    たとえばOCLCのWorldCatというシステムは、誰もがウェブサイトから莫大な数の図書館の目録にアクセスし、探している本がアメリカのどこにあろうと所在を突きとめることを可能にする。

    p201
    最近のもっとも大きな革新といえば、サルマン・カーンによるカーン・アカデミーである。学生が自分のペースで無料でオンライン学習をするための、非常に評判のいいビデオや練習問題を制作する非営利ウェブサイトだ。

    p219
    ヨーロッパの国々の多くは、国立デジタル図書館制度の発展において、アメリカよりはるかに進んでいる。世界一〇数カ国の政治家が、国立デジタル図書館の設立を公約している。(中略)資料を統一しようというヨーロッパ全土の努力の結果である電子図書館のポータルサイト、ヨーロピアナは、各国のデジタル蔵書の中に関連性を見いしている。

    p220
    各国の中で、電子書籍貸し出しのインフラ整備で最先端を行くのがシンガポールだ。三〇〇万冊を超える電子書籍の貸し出しができ、利用者は国立図書館のシステムから一度に八冊のデジタル書籍を借りることができる。

    p229
    公共の利益を口にする人は非常に少なく、知識と情報の世界は徐々に企業に支配され始めている。

    p231
    図書館での閲覧経験は、セレンディピティの概念と強く結びついている。利用者が書棚で思いがけない本に出会うという、すばらしい概念である。この経験は、もともと探していた本の近くにほかにも本があるおかげで可能だった。(中略)分野を超えた革新的なアイディアや新たなつながりは、こうした思いがけない発見の結果として生まれる。

    p237
    はっきり言って、いまの図書館には広範囲に前向きな影響を与えるような革新的なデジタルプロジェクトに従事している人があまりにも少ない。予算がぎりぎりまで削られる中、図書館はアナログとデジタル両方の世界で需要を満たすよう強いられているので、図書館のリーダーたちは追いつめられ、純粋な革新や研究開発に取り組むことができずにいる。

  • アナログからデジタルへの移行期にあって、図書館はどう変化すべきか、という話。
    全体の核としては、やはり図書館が民主主義の根幹だ、という点に尽きると思う。有能な人も貧しい人も、等しく情報にアクセスできる場所であること。
    デジタル化しつつあることで一番難しくなっているのは、「貸し出し」の権利、ライセンスについて。著作権法で守られていた権利から、個々の出版社等と締結するライセンスによる管理への変更。必ずしも買い切りではなかったり、何らかの制限が付されていたりすること。アナログな資料に比べて保存がとても難しいこと。
    そして何より、これらの変化に対応するには図書館の予算は足りないこと。
    図書館だけでなく、社会全体で向き合わないといけない課題が山積していることを改めて認識させられた。

  • 米国デジタル公共図書館設立委員長であるジョン・ポールフリー氏の著書。公共図書館だけでなく、大学図書館などにも触れている。危機、顧客、空間など10章(最終章は結論)から成り、各章でその観点から現代(=ネット時代)の図書館を分析している。

    内容はわかりやすい。また、著者自身が図書館学が専門でないということも、一般的な利用者の目線から語っている言葉と受け止められる。

    本書内で紹介してあった、ハーバード大学図書館のスタック・ビューはこちらのブログでも紹介してある。
    http://librarylab.law.harvard.edu/blog/stack-view/

  • 総論、概念としてはごもっとも。ではこれを誰がどのように、どういった財源で進めていくのでしょうか。私には判りませんでした。

  • 「ネット検索で手軽に情報を入手できるこの時代に、公共図書館はなぜ必要なのか、どうあるべきか。すべての人が情報にアクセスし、知識を得る権利を守るための図書館の変革と未来像を、米国デジタル公共図書館設立委員長が提唱。」(本書「見返し」より)

    《バッサリ〆ます(^^)!》
     本書は、アメリカ図書館界の権威ある先生(=著者)が、「図書館かくあるべき」という正論(=べき論)を、一般向けに述べた作品です。
     良識ある議論ですから、結論もありきたりです。曰く、「図書館を機関として、そして司書の役割を専門職として見直した結果、重要なのは伝統と革新のバランスになるだろう。」とのこと。約250ページを読んだ後に、この結論・・・著者を恨むよりも、最後まで”真面目に”読んだ自分を"反省"しました。(合掌)

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