兵士ピ-スフル

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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566024045

感想・レビュー・書評

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  • 英国デヴォン州の小さな村で育ったピースフル(「平和な」「穏やかな」の意)兄弟が、ほんの弾みで出兵させられた先は、砲弾が飛び交い、毒ガスが覆いかぶさり、塹壕と鉄条網に閉ざされた世界だった・・・。第一次世界大戦中のイギリス軍兵士290名以上が、脱走、臆病行為、持ち場での居眠り(多くは砲撃による精神的外傷)によって銃殺刑に処せられた、という軍事裁判記録に衝撃をうけた<マイケル・モーパ-ゴ>が、人間が造ったこの世の地獄(戦争)の悲劇を描いた著者入魂の本作は、『西部戦線異状なし』と並ぶ、胸に迫る感動作。

  • 【人殺しに参加しなかったことで処刑された人たちがいたこと】
    私たちが忘れてはいけないことがある。
    第一次大戦の激戦地、ベルギーの町イーペル。
    そこで起きたかもしれない、おそらく起きていた兵士の物語。
    モーパーゴさんによる、フィクションではあるけれど、元兵士の話を元にした、限りなく現実に起きた悲劇。
    軍事裁判で銃殺刑を受けた兵士たち。
    大逆事件を思い出させる、審議の時間の短さ。非情、悲運、惨さ。
    歴史を学ぶ大切さや平和の重さと難しさを感じた。良書。
    私も訳者同様に、トモの無事とその後の幸福を祈らずにいられない。

  •  戦争というと第二次世界大戦のほうばかり思い浮かべてしまうが、こちらは第一次世界大戦のお話。『フランダースの犬』のあのフランダース地方は、第一次世界大戦の激戦地だったのだそうだ。(本書で登場するのは、イーペルという町)
     戦場では兵士が死ぬ。でも、味方の讒言で銃殺刑なんて、一番無駄死にじゃないか、と一瞬思って、いやいや、戦争で死ぬのに意味があるとかないとか優劣をつけるのはナンセンスだよな、と思い直す。
     運命の力に押し出されるように戦場に進んでいった兄弟。トモが生還できたかどうかは分からないけれど、生還できていたならば、こんどは「僕のせいで」チャーリーが死んだなどと言わないだろう。
     戦友の遺体の、カーキ色をしたズボンの上にバッタが止まっている。その描写にぞっとした。マイケル・モーパーゴって、全然知らなかったんだけど、すごい作家だなぁ。

    めも:
    この頃のイギリス軍における銃殺刑は、受刑者と同じ隊の兵士の仕事。
    埋葬するのも彼らの仕事だった。

    原題:Private Peaceful

  • 第一次世界大戦、イギリス少年兵士の物語です。
    貧しいながらも家族愛に満ちた環境で育ち、多くを学んだ幼少時代。
    主人公は学校や家庭での葛藤から多くの苦しみや挫折を味わいます。
    しかし、海の向こうのベルギー・フランスからドイツの軍靴の音が聞こえてきました。
    本当の苦しみは戦場で待っていたのです。
    実際に戦争を生き抜いた人々の記憶と、多くの資料を参考に構成された一冊。

  • 国民を殺すのは敵国だけじゃない、戦争を決断し、兵士になるべく少年の心を駆り立てる自国の政府なのか…。

  • 彼は夜が明けるのを待っていた。今から朝までの時間は全てが彼のものだ。

    眠ってしまいたくない。
    思い出しておきたい。
    そして刻んでおきたい。

    イギリスの片田舎で育ち、16歳の若さで兄と共に第一次世界大戦の戦場へと赴いたトモ。
    戦争において彼らの敵は、何も向こうの兵士だけではなかった。
    主人公の手記という形で語られる物語。

    ***
    大部分が主人公の学校や家での生活、幼い頃からの恋などを描いており、全てが戦争のお話ではありません。むしろ戦場での話は割合的には少なめ。

    だからなのか、より哀しさを感じる作品でした。同じように理不尽さや怒りを感じる人もいると思います。
    マザーグースの「オレンジとレモン」。これがあとから効いてきますね。

  • こちらは、第一次世界大戦のころが舞台。
    そこでイギリス軍のいち兵士として「志願」したピースフル兄弟。
    敵のはずのドイツ兵も、集団ではなく個人レベルで見ると、
    自分たちと変わりのない同じ人間じゃないか!というようなところのシーンが印象に残る。

    でも、作者は戦争の悲惨さを伝えることが第一の目的ではないのだろう。
    「敵」のドイツ軍にではなく、味方のイギリス軍に命を左右されたいちピースフル兄(名前失念)。

    作者は、最後のあとがき(?)を知らせ、言いたいがために、この物語を紡いだ。
    ものすごい熱い想いを抱いているのだろう。
    (2008.7.25)

  • Private Peaceful (After Words)

    戦死って…ひとくくりにされてしまうことの恐ろしさ。

    http://www.michaelmorpurgo.com/

  •  第一次世界大戦中のイギリスが舞台。15歳のトモ・ピースフルは、兄のチャーリーと一緒に戦場へ行く。290名以上のイギリス兵が脱走や臆病行為によって、申し開きの機会さえない短時間の軍事裁判の後、銃殺刑に処せられた。そうした事実にもとづいた物語。

  • 涙で文字を追えなくなったのは初めて


    あと構成がいいです

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著者プロフィール

1943年英国ハートフォードシャー生まれ。ウィットブレッド賞、スマーティーズ賞、チルドレンズ・ブック賞など、数々の賞を受賞。作品に『ゾウと旅した戦争の冬』『シャングリラをあとにして』『ミミとまいごの赤ちゃんドラゴン』『図書館にいたユニコーン』(以上、徳間書店)、『戦火の馬』『走れ、風のように』(ともに評論社)他多数。

「2023年 『西の果ての白馬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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