日本を創った12人 前編 (PHP新書 5)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569553412

感想・レビュー・書評

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  • 「後編」を読んだ後に遡って「前編」を読んだ。

    著者が選んだ12人のうち、「前編」では次の6人を取り上げている。すなわち、聖徳太子、光源氏、源頼朝、織田信長、石田三成、徳川家康だ。

    聖徳太子の選択に違和感を抱く人は少ないのではないか。次に光源氏-なんと実在する人物ではなく、源氏物語の登場人物という架空の人物が選ばれている。

    次に源頼朝は鎌倉幕府を開いたその人であり、織田信長は戦国武将の中では最も濃い人物であるので、この選択も誰もが頷くだろう。最後の徳川家康に至っては本命中の本命に思える。それに対し、石田三成はダークホース的だ。そもそも、関ケ原の合戦の勝者と敗者が二人とも選ばれているというのは興味深い。

    著者堺屋太一氏は、この6人を選んだ理由を明かしていく。最初に聖徳太子。世界唯一の「習合思想」を発案したという。世界にある一神教的な考え方に対し、聖徳太子はもともとあった神道に当時大陸から輸入した仏教や儒教を習合し、それを日本の根底の思想として根付かせたという。著者の言葉を借りれば「ええとこどり」の思想だ。確かに日本人はその傾向が強いと感じる。

    次いで、光源氏。光源氏は当時の人物像をモデル化したものだという。上流貴族的な資質。自分から実務的なことに手を出すのではなく、上品に上から眺めているのが日本的貴族の資質だという。

    源頼朝の功績は、幕府と王朝を二分化し、権力の二重構造化を図ったとしている。また、平安時代に確立されていた律令制を曖昧化する「令外」のルールを勝手に作った。律令制を建前とし、幕府では令外のルールで本音の政治運営を行ったと。この「本音」と「建前」の考え方を取り入れたのが源頼朝だと。なるほど~。

    織田信長は、何といっても「天下武布」・・・天下統一の思想、中央集権国家的な発想の元祖。著者は「絶対王政ビジョン」を世界で最も早く持った男としている。

    石田三成の人選は意外性があるが、著者は石田を中堅官僚プロジェクトの元祖であるという。関ケ原で家康に対するにはあまりにも格が違いすぎたが、その格下の存在で東西の対立構造を成立させたのは、そこまでもっていった石田三成のシナリオメイクであり、プロジェクト運営であったという。もっとも失敗に終わったが。

    そういうプロジェクト的な手法を創り上げた人物としての石田三成は選ばれたようだ。

    最後に、家康。律儀+辛抱+冷酷の3要素で家康は、天下をもぎ取り、取ったからには徹底して「成長志向」を削ぎ、対立軸を封じ、ひたすら「安定志向」を追究した。

    この家康のタヌキオヤジ像は、本書発刊当時の安定企業の経営者像にダブっていたようだが、それから時代を経て、現代活躍するベンチャー企業の経営者は、家康のタヌキオヤジとはキャラを異にしているようだ。新たな人選が必要となっているのか。

    いずれにしても、堺屋太一氏の人選とその理由、とても面白く読めた。

    • やまさん
      abba-rainbowさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      abba-rainbowさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      2019/11/10
  • 石田三成が取り上げられてるのが嬉しいd(^_^o)
    大大名等権力者でない者が日本を動かす醍醐味。
    明治以降日本は権力者でない者が日本を動かしてきました。
    明治維新も下級武士が台頭してきたし日本が戦争に行き着いたのも地方部隊の独走からと言えると思います。
    僕も今生野区で仕事をしててここから何か変えていけるのではないかと日々模索しています。

  • 歴史上で現在につながる功績、または、影響を残した人物についての詳細について理解できる。聖徳太子から始まり徳川家康まで順に見ることができるので時代の流れも改めて理解につながる。また、どのような影響を与えているのか、現在の日本の組織に例えて表現されていてわかりやすい。また、子供の頃に習った歴史の授業では学ばなかったようなことが学べ、勉強になる。

    特に、聖徳太子が行った神・仏・儒の習合という習合思想は、現代の日本の宗教に対する考え方、生活様式、文化などに大きな影響を与えていると考える。

  • 目の付け所が面白いです。

  • 通産省の官僚から作家へと転身し、戦後の1947~1949年生まれの国民を「団塊の世代」と命名した堺屋太一が、1998年の小渕内閣で経企庁長官に就任する際に世に贈った一冊で、先人たちの「国創り」に対する想いが描かれている。タイトルは「12人」なのだが、前編・後編の合計が12人という事で、本書には聖徳太子・光源氏・源頼朝・織田信長・石田光成・徳川家康の6人が登場する(光源氏は『源氏物語』の主人公で架空の人物)。いずれも日本の歴史に名を馳せた大人物だが、そんな彼らを現代のサラリーマンになぞらえた発想が面白い。「勤勉」「実直」「誠実」など、現代の日本人が世界に誇る国民性を確立した先人たちの活躍は、まさに日本を「創った」と言える。

  • 聖徳太子しか読まなかったが、聖徳太子が日本の仏教を広め、宗教戦争がない日本を築きあげたことを知った。

  • "それぞれの時代で活躍した人物にスポットライトを当てた本。
    ・聖徳太子 神・仏・需習合思想の発案
    ・光源氏  上品な政治家の原型
    ・源頼朝  二重権限構造の発明
    ・織田信長 否定された日本史の英雄
    ・石田三成 日本型プロジェクト創造
    ・徳川家康 成長志向気質の変革"

  • フォトリーディング&高速リーディング。

    さすが堺屋太一と思った。このひとの歴史関連本は時代を超えて考えさせられ教訓的に現代にも言及する。圧倒的な知識量を感じる。

    尾張兵が弱い理由や、信長がそれでも愚直に兵を金で雇うやり方をやめなかった理由が面白い。「卑怯者」と言われるのは、当時の常識を越えた画期的な戦略だったため。

    娯楽としても面白いと思ったので星四つ。

    ちなみに後編があるらしいが、速読用として手元にないので前編でおしまいにする。

  • よくよく読んでいくと
    今の日本で「あっ」とさせられる要素が
    たくさん出てきます。
    その人物を深く読んでいると
    そういう一面も見えてくるものなのですね。

    誰もがその名前を聞いたことのある
    人物ばかりです。
    そして、後半の戦国武将に関しては
    どうして石田光成が負けてしまったかに関しても
    書いています。

    ですが、彼は確かにすばらしい人間だったんですよね。
    勝負運は無かったですが…

  • 前編は、聖徳太子、光源氏、源頼朝、織田信長、石田三成、徳川家康の6名が取り上げられている。

    偉大な人物と謳う一方で、日本の悪い慣習や仕組みを作った人と批判的書かれている。

    今の日本社会を元に、無理にこじつけをした感が否めない。

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著者プロフィール

堺屋太一

一九三五年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省し、日本万国博覧会を企画、開催したほか、沖縄海洋博覧会や「サンシャイン計画」を推進した。在職中の七五年、『油断!』で作家デビュー。七八年に退官し、執筆、講演、イベントプロデュースを行う。予測小説の分野を拓き、経済、文明評論、歴史小説など多くの作品を発表。「団塊の世代」という言葉を生んだ同名作をはじめ、『峠の群像』『知価革命』など多くの作品がベストセラーとなった。一九九八年から二〇〇〇年まで小渕恵三、森喜朗内閣で経済企画庁長官、二〇一三年から安倍晋三内閣の内閣官房参与を務めた。一九年、没。

「2022年 『組織の盛衰 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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