日本人の技術はどこから来たか (PHP新書 31)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569558646

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  • 日本の技術の歴史的背景に関する本。二部構成になっており、一部は「技術」にフォーカスし、二部は、人物を中心にその時代背景を説明する。著名な職人のみが技術伝承をしたのではなく、無名の多数の職人が幾重に重なって技術を伝承してきた様子が伺える。そして、その技術の蓄積は、幕末を迎える太平の江戸時代に蓄積された。当時、隣国していた清が荒廃していたことを考えると、この時代の技術蓄積の格差が、その後の明治以降の発展の差に繋がったと言える。

    もう少し深い洞察を期待したが、残念ながら洞察は浅い。その分、全体的に軽いタッチの文章で読みやすい。

    目次
    第一部 日本技術の個性と思想
    1 不易と流行の二重構造 ー 伊勢神宮と法隆寺
    2 「鉄がつくった国」の知恵
    3 もの真似上手・創造上手の日本技術
    4 メイド・イン・ジャパンを支える「江戸の職人芸」
    5 木と紙の文化が開いた技術立国の基礎
    6 ソフトウェアの偉大な蓄積 ー <般若心経>
    7 現場遊離という悪しき遺伝子 ー 日本の戦車開発史から
    8 鉄腕アトムが育てた日本人の科学心
    9 ものの流れと情報の流れの結合 ー 宇宙航空輸送時代へ

    第二部 近代技術の潮流
    1 織田信長と鉄砲 ー 技術は乱世に成熟する
    2 本阿弥光悦と平賀源内 ー 元祖・マルチ人間の日本的技術思想
    3 三井高利と経営技術 ー 再出発を支える知的資源の蓄積
    4 細井平洲と上杉鷹山 ー 大改革を実現した名監督と主演男優
    5 高田屋嘉兵衛と和船技術 − 技術革新なくして成功なし
    6 吉田松陰と緒方洪庵 − 実学と自由・独自の教育システム
    7 勝海舟と坂本龍馬 − 時代を動かす<理想と野心>

    おわりに − アジアの世紀と日本の技術

    メモ
    p51 モノづくりの技術がお上お抱えの技術者だけでなく、一般民衆をも巻き込んでいた。江戸時代には、工芸品をつくる職人たちが数え切れないほど多くいた。また、庶民のすべてが、いいモノを見抜く眼力をもっていた。これが江戸文化の大きな特徴であり、フラクタル・サイコロジーとも呼ぶべき重層的な精神構造が理解され、潜在的に形成された。

    p66 般若心経〜大乗仏教は衆生救済の仏教である。少数のエリートではなく、文字の読めない人々にも口伝えで暗唱できるように、短く語呂のいいお経となったのではないだろうか。

    p76 ミッキーマウスの耳は丸く大きく、目・足・手なども円弧を描いたシンプルな曲線になっている理由〜素人に近いアルバイト画家を数多く集めていっせいに描かせることができる。

    p89 源氏・平家らの武士団は、輸送技術集団であった。
    p92 輸送効率がよくなるほど、信頼性のある通信手段を必要とする。新幹線の発着は、分刻みのダイヤグラムでの情報管理が必要である。

    p110 室町時代、刀の輸出が日本に明銭の流入を招き、貨幣経済が広まって、バブルに近い状況が生まれた。そして応仁の乱が起きた。戦争は経済的余裕がないと起こせない。
    乱が一段落すると、壊れた建物の復興という建設ラッシュが始まり、その木工技術は東山文化に結晶した。
    p111 プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション、交互に多重層的に結合して技術が発展していく。応仁の乱後の60年はプロセス・イノベーションの時代であり、技術が蓄積された。鉄砲の伝来により、一気にプロダクト・イノベーションが結実した。

    p144 三井高利は50歳を超えてからの再スタートだった。残り時間を絶えず意識しなければならなかったはずである。

    p180 松下村塾や適塾の教育内容を細かく眺めると、幕末のころから、すでに西洋に匹敵する充実した独自の教育システムをもっていた。

    p202 日本人の特徴〜「化外慣れ(文明の外にいることへの民の慣れ)」と「教化ずれ(教化されるのにすれている)」
    p203 佐々木高明氏、日本文化の基層には、漆、麹、納豆、餅、茶など照葉樹林文化に由来する縄文時代以来の生活技術が重層的存在として分厚く堆積している。「日本文化多重構造説」

  • 日本は古来「わざの国・たくみの国」として一流の技術力を発揮してきた。その伝統的「わざ」の精神は、近代西洋技術をも消化して生き続け、現代のハイテクノロジーを底流で支えている。本書では、マルチメディアが社会をリードする発言で注目される著者が、伊勢神宮・織田信長・本阿弥光悦。。などの事物・人物を新しい時代を築いた「歴史的遺伝子」として取り上げ、日本人の技術思想もルーツを解き明かす。「変わらないもの(不易)」を縦糸に、新しいもの(流行)」を横糸につづる壮大な「技術の歴史物語」。

  • 《目次》
    第1部 日本技術の個性と思想
      不易の流行の二重構造
      「鉄が作った国」の知恵
      もの真似上手・創造上手の日本技術
      メイド・イン・ジャパンを支える「江戸の職員芸」
      木と紙の文化が開いた技術立国の基礎
      ソフトウェアの偉大な蓄積~「般若心経」
      現場遊離という悪しき遺伝子~日本の戦車開発史から
      鉄腕アトムが育てた日本人の科学心
      ものの流れと情報の流れの結合~宇宙航空輸送時代へ 
    第2部 近代技術の源流
      織田信長と鉄砲~技術は乱世に成熟する
      本阿弥光悦と平賀源内~元祖・マルチ人間の日本的技術概念
      三井高利と経営技術~再出発を支える知的資源の蓄積
      細井平州と上杉鷹山~大改革を実現した名監督と主演男優
      高田屋嘉兵衛と和船技術~技術革新なくして成功なし  
      吉田松陰と緒方洪庵~実学と自由・独自の教育システム
      勝海舟と坂本龍馬~時代を動かす「理想と野心」
    おわりに~アジアの世紀と日本の技術
    《内容》
    思った内容でなくてガッカリ。  
    学校図書館。

  • 書名の通り、日本の技術がどのように形成されてきたかを考察した本である。類似した本はたくさんあるのでそんなに目新しいものではないのである。PHP新書と言うことで、社外講師を呼んでの社内セミナーのネタ本という感じか。
    主なトピックス
    ・不易と流行
    ・守破離というプロセス
    ・木と紙の文化
    ・般若心経の役割
    ・日本の戦車開発史から見た現場遊離という悪しき遺伝子
    ・手塚マンガのシミュレーション的性格
    ・三井高利と経営技術
    ・高田屋嘉兵衛と和船技術

  • タイトルやそれから想像する中身の企画は良いのだけれど、実際の内容がちょっと残念。掘下げ方が浅かったり、強引にこじつけた理屈もあって、なかなか素直に読み進めなかった。
    ただし、いままで不勉強だった「高田屋嘉兵衛」の件は興味深く読めた。当時お上から課せられた制約が、逆に造船技術を後押したというエピソードは、いかにも昨今の自動車なんかの設計に通じていそうでゾクゾクしてしまう。

  • 作者は東大医学部と工学部を卒業した異色の方。日本の職人・技術者の歴史上における技術の培い方がよく分かる。歴史家としてでなく、工学者として書かれているので、技術的な内容にも鋭いメスが入る。歴史としてだけでなく、日本人の技術に対する接し方、さらには、物の見方にも触れられている。一遍ずつが短くもう少し時代的背景や考えを丁寧に説明されているともっと面白くなると感じた。

    幅広い話題が満載されていた。例えば、古代のハイテク技術である稲作や火起こしの技術を儀式として伝える方法、「守・破・離」の思想(伝統的なやり方を守り学ぶ段階、充分に習得した後、その伝統を破る段階、学んだものから離れ独創性を確立する段階)、からくり人形、織田信長、本阿弥光悦、高田屋嘉兵衛など。

  • [ 内容 ]
    日本は古来「わざの国・たくみの国」として一流の技術力を発揮してきた。
    その伝統的「わざ」の精神は、近代西洋技術をも消化して生き続け、現代のハイテクノロジーを底流で支えている。
    本書では、マルチメディア社会をリードする発言で注目される著者が、伊勢神宮・織田信長・本阿弥光悦…などの事物・人物を新しい時代を築いた「歴史的遺伝子」として取り上げ、日本人の技術思想のルーツを解き明かす。
    「変わらないもの(不易)」を縦糸に、「新しいもの(流行)」を横糸につづる壮大な「技術の歴史物語」。

    [ 目次 ]
    第1部 日本技術の個性と思想(不易と流行の二重構造―伊勢神宮と法隆寺;「鉄がつくった国」の知恵;もの真似上手・創造上手の日本技術 ほか)
    第2部 近代技術の源流(織田信長と鉄砲―技術は乱世に成熟する;本阿弥光悦と平賀源内―元祖・マルチ人間の日本的技術思想;三井高利と経営技術―再出発を支える知的資源の蓄積 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  日本が世界に誇る技術というのはいったいどこから出てきたものなのか?それを考えるために、歴史を振り返りどのような事実があったのか?を考察した本。

     読後の感想としては、個々のトピックに対して納得・共感することはあったものの、じゃあなんで今の日本のような技術ができたのか?を明確に説明しているのかというとちょっと個人的には怪しいのかな、と思う。なので3点。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授、鹿島建設顧問、公益財団法人鹿島学術振興財団評議員

「2018年 『シニア・マルチメイジャーのすすめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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