ある通商国家の興亡: カルタゴの遺書 (PHP文庫 モ 7-1)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569565880

作品紹介・あらすじ

二千年前、広大な版図を擁した軍事大国ローマと小さな通商国家カルタゴ。その勤勉さと商才で未曾有の経済的繁栄を遂げたカルタゴは、なぜローマによって壊滅させられたのか?その答えを求め、著者は地中海へと旅立った。「通商国家」カルタゴを描写することで、「経済大国」日本の行く末を暗示した話題の書、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 平成が終わる頃に、その始まり頃に書かれた本を読む。何かを見て、何かに似ていると相似を見るのはよくあることだ。
    筆者は商人国家としては繁栄したカルタゴに日本を重ねた。繁栄と衰退を繰り返したカルタゴは、最後にローマによって抹殺といってよい形で滅んだ。
    その理由を筆者は、いつまでもカルタゴが商人国家であり続け変わらなかったから、とする。経済大国になっても隣国との力関係の変化を考慮せず、国家の方針を変えずにいて他国から脅威と受け取られたからだと。
    では、日本は? 筆者の思いもここにあるように思う。平成が終わろうとするなか、その答えはでているというべきか。
    カルタゴの如く「滅んだ」というのは言い過ぎとしても衰退の度は激しく、また変化のためにもがき苦しんだ。そのもがきはまだ長く続きそうだ。その先に光明があるのか。カルタゴの末路と同じか。

  • 1989年刊行。著者は元朝日新聞編集委員、東京女子大学教授。共和制ローマにおいて最大の強敵は西のギリシャ、南のカルタゴであったが、そのカルタゴの栄枯盛衰を新聞記者らしい明快な語り口で解説する。要所要所で重要人物の足跡が描かれる一方、現地踏破に基づく地理・地勢面での解説もあり、初見(つまり私)には大変ありがたい一書。著者がカルタゴを戦後日本に準える視座は、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」くらいに見ておけば違和感を感じることも少ないだろう。
    第二次ポエニ戦争におけるカルタゴの雄、ハンニバル。重厚とも鈍重ともいえる行軍・進撃は武田信玄の如しであるが、まぁスケールが全然違う。彼が、ローマを攻撃せず、周りの諸都市の合従連衡を模索していたことが、都市を重視しない、定住性を重んじないカルタゴ通商国家の志向の反映であるというのはなかなか興味深い着眼点であった。

  • デルフォイのアポロン神殿には有名な「汝自身を知れ」という格言が刻まれていた。ギリシャの精神的な原点。

  • 新聞記者が書いたこともあり読みやすい良書。まんべんなく。海の道のことが書かれているのはこの本だけだが真偽のほどはいかに。

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著者プロフィール

1925年東京生まれ。東大文学部哲学科、同大学大学院社会学科を修了。朝日新聞編集委員などを歴任したのち著述に専念。旅を趣味とし、そのエッセイ・評論はユニークな洞察と巧みな筆致で多くの読者の支持を得た。

「2023年 『ニジェール探検行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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