武術の新・人間学: 温故知新の身体論 (PHP文庫 こ 37-1)
- PHP研究所 (2002年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569578439
感想・レビュー・書評
-
武道ではなく、武術の話です
明治に入る前は、「武道」という名前はほとんどなかった
武道と言わずあえて武術と言う
単なる繰り返しの延長線上にある稽古では全く身につかない、まさに「術」と呼べるほどの身体の使い方
その井桁崩しというのは、井桁に組んだ形、つまり平行四辺形が変形していく様子をモデルとしたものです
要するに、平行四辺形が変形することの運動によって、身体の動きを説明しようとしたものです
タメをつくっている間に、相手がもう対応しちゃうんですなぜなら、方向がはっきり分かるので、相手に対策を練られてしまうからです
腰を捻じってはいけない、脇腹を捻じってはいけない
自分の身体の滞りをなくすように稽古してゆこうと思ったのです「氷となって滞るな」という解説があるのです。それは「ものにとりつき、止まるところに閉じられ、氷となり、水の自由なる理を知らず」と
とにかく滞らずに流れよということを、しきりに説いているところが、心に入ってきて、せめて身体を滞らずに流そうと、思い直して、自分の身体を検討してみたのですすると腰に非常に滞りがあったということに気が付いてきたんです
人間の感覚というのは、基本的には二次元しか感知できないため、三次元は、経験と学習で「推測して」対応している
人間は予測にたがわず過不足ない力が出ている場合は、スムーズに動けるのですが、それに外れた場合というのはひどくもろいのです
身体のなかに自動的にオートで警報を出しているわけで、それで守られているわけですそんなものが何もなかったら、怪我だらけですよ
「地道にやれ」とか、「地道な努力が大事だ」とか言いますけど、たしかに私も場合によっては地道は大切だと思いますが、ただどうも地道という言葉で単なるマンネリを美化してる人がとても多いのではないか
状況が切迫してくれば十分な訓練なんてできなくて、いきなり実戦に出されたりしたわけでしょう
同じことの繰り返しに進歩はない
裏のほうに、常に凄い人間がいるのですけれど、その裏の人間が、いまのように、表の世界がピンチだという時に、いわば、代打を買ってでるように、出てくるわけでしょうやっぱり時代の要請だなと思いますね
生きがいは、本質的なことへの関心で培われる
困難にぶつかっていく力の源泉
あきらめないでこれからの時代を拓いてゆくためには、やっぱり根本的に考え方をあらためる必要があると思います
人間って結構常識に縛られていて、あまりにも異常なものっていうのは見えないんですね人間というのは、物語を自分で作って自分で見ているんですよ
ISBN:9784569578439
出版社:PHP研究所
判型:文庫
ページ数:256ページ
定価:571円(本体)
発行年月日:2002年11月
発売日:2002年11月01日第1版第1刷
発売日:2007年02月19日第1版第14刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古(いにしえ)の武術の達人を知りたければ本書を開くとよい。私は本書で佐川幸義〈さがわ・ゆきよし〉を知った。現代においても一際優れた身体能力を発揮するスポーツ選手は多い。だが、武術を極めた人物が達した領域はその比ではない。神憑(がか)りとしか表現のしようがない技を身につけているのだ。もはや、仙人や天狗のレベルに近い。あるいは鬼か。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/05/15/231031 -
仕事上、重い物を持ち運ぶ必要に迫られ、甲野先生の著書をひもといた。ヒントは得られず。爆笑問題の番組への出演時に披露したコツがあったような……。録画ディスクを探すしかない。
さておき、松林蝙也斎への思いの程が微笑ましかった。剣豪も「寄らば斬る」人ばかりではないようだ。 -
だいぶ前の記憶で書いています。身体操法的関心で読み始めたのですが、面白かったのは、江戸中期ぐらいから、技能の伝承が大衆化ずるなかで、昔の武術書にみられる文字では表しきれない奥義が、神棚に祀り上げられたり切り捨てられたり、いずれにしても実践不能なものと見做されて行ったという指摘。
甲野先生は、書かれている以上何か現実の裏付けがある筈だ、という信念をお持ちで、そこを掘り下げていらっしゃるということが、よく分かる。
ホメイロスの叙事詩を読んでトロイを発掘したシュリーマンにも通ずるロマンを感じます。技能伝承は、現代の人手不足問題にもつながるところがあるので、多くの方に読んでいただければと思っています。 -
2018/03/31 15:41:12
-
内田氏の著書から知って、手にとった本。地道という言葉についての一言は身にしみた。
-
21世紀に入って編まれた、武術考。
七十二項に渡って、剣豪・雀士・歌手・刀職人・スポーツ選手などを取り上げる。
独りでは到達し得なかった境地などについて、書かれる。
武術の訓練から教育に至るまで通じる、信念を説かれている。
我慢の稽古(授業)ではなく、自ら楽しんで進んで取り組むこと。
また、ある程度すぐ使えるものの量産ではいけないということ。
我々は、学ばなければならないだろう。
個人的には、「ノルマで塗っても名画は出来ない」的な内容に共感す。 -
甲野先生のように、身体を使って思考している人の言葉は説得力がある。
自分もそうありたいと思う。 -
武術はとても奥深い。