武術の新・人間学: 温故知新の身体論 (PHP文庫 こ 37-1)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569578439

感想・レビュー・書評

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  • 武道ではなく、武術の話です

    明治に入る前は、「武道」という名前はほとんどなかった
    武道と言わずあえて武術と言う
    単なる繰り返しの延長線上にある稽古では全く身につかない、まさに「術」と呼べるほどの身体の使い方
    その井桁崩しというのは、井桁に組んだ形、つまり平行四辺形が変形していく様子をモデルとしたものです
    要するに、平行四辺形が変形することの運動によって、身体の動きを説明しようとしたものです
    タメをつくっている間に、相手がもう対応しちゃうんですなぜなら、方向がはっきり分かるので、相手に対策を練られてしまうからです

    腰を捻じってはいけない、脇腹を捻じってはいけない
    自分の身体の滞りをなくすように稽古してゆこうと思ったのです「氷となって滞るな」という解説があるのです。それは「ものにとりつき、止まるところに閉じられ、氷となり、水の自由なる理を知らず」と
    とにかく滞らずに流れよということを、しきりに説いているところが、心に入ってきて、せめて身体を滞らずに流そうと、思い直して、自分の身体を検討してみたのですすると腰に非常に滞りがあったということに気が付いてきたんです

    人間の感覚というのは、基本的には二次元しか感知できないため、三次元は、経験と学習で「推測して」対応している

    人間は予測にたがわず過不足ない力が出ている場合は、スムーズに動けるのですが、それに外れた場合というのはひどくもろいのです

    身体のなかに自動的にオートで警報を出しているわけで、それで守られているわけですそんなものが何もなかったら、怪我だらけですよ

    「地道にやれ」とか、「地道な努力が大事だ」とか言いますけど、たしかに私も場合によっては地道は大切だと思いますが、ただどうも地道という言葉で単なるマンネリを美化してる人がとても多いのではないか
    状況が切迫してくれば十分な訓練なんてできなくて、いきなり実戦に出されたりしたわけでしょう

    同じことの繰り返しに進歩はない

    裏のほうに、常に凄い人間がいるのですけれど、その裏の人間が、いまのように、表の世界がピンチだという時に、いわば、代打を買ってでるように、出てくるわけでしょうやっぱり時代の要請だなと思いますね

    生きがいは、本質的なことへの関心で培われる

    困難にぶつかっていく力の源泉

    あきらめないでこれからの時代を拓いてゆくためには、やっぱり根本的に考え方をあらためる必要があると思います

    人間って結構常識に縛られていて、あまりにも異常なものっていうのは見えないんですね人間というのは、物語を自分で作って自分で見ているんですよ

    ISBN:9784569578439
    出版社:PHP研究所
    判型:文庫
    ページ数:256ページ
    定価:571円(本体)
    発行年月日:2002年11月
    発売日:2002年11月01日第1版第1刷
    発売日:2007年02月19日第1版第14刷

  • 古(いにしえ)の武術の達人を知りたければ本書を開くとよい。私は本書で佐川幸義〈さがわ・ゆきよし〉を知った。現代においても一際優れた身体能力を発揮するスポーツ選手は多い。だが、武術を極めた人物が達した領域はその比ではない。神憑(がか)りとしか表現のしようがない技を身につけているのだ。もはや、仙人や天狗のレベルに近い。あるいは鬼か。
    https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/05/15/231031

  •  仕事上、重い物を持ち運ぶ必要に迫られ、甲野先生の著書をひもといた。ヒントは得られず。爆笑問題の番組への出演時に披露したコツがあったような……。録画ディスクを探すしかない。
     さておき、松林蝙也斎への思いの程が微笑ましかった。剣豪も「寄らば斬る」人ばかりではないようだ。

  • だいぶ前の記憶で書いています。身体操法的関心で読み始めたのですが、面白かったのは、江戸中期ぐらいから、技能の伝承が大衆化ずるなかで、昔の武術書にみられる文字では表しきれない奥義が、神棚に祀り上げられたり切り捨てられたり、いずれにしても実践不能なものと見做されて行ったという指摘。
    甲野先生は、書かれている以上何か現実の裏付けがある筈だ、という信念をお持ちで、そこを掘り下げていらっしゃるということが、よく分かる。
    ホメイロスの叙事詩を読んでトロイを発掘したシュリーマンにも通ずるロマンを感じます。技能伝承は、現代の人手不足問題にもつながるところがあるので、多くの方に読んでいただければと思っています。

  • ナンバ歩きで有名になった古武術研究家の甲野善紀さんの本。人間学というタイトルだが、学術書や自己啓発系の類ではなく、武術の専門書でもなく、古武術を研究している間に出会った、オモシロ話を語り口調で紹介したエッセイ集のような本である。内田樹さんの解説には「おじいちゃんのよもやま話のようだ」とあるが、まさにそういった類の集大成。

    運動音痴なうえ、中年デビューな老人のため、クライミングもランもちっとも上達せず、人と比べると忸怩たる思いを持つこと仕切りなのだが、それでも(それだからこそ?)身体の動きの不思議話には非常に興味を持ってしまう。さらに所謂「根性論」やら「体育会系」やらの匂いが感じられない本なので余計に興味深く読めた。

    もう一つ、甲野さんの人脈の作り方、ネットワークの張り方にも非常に感心させられた。一つのことを一心に考え続ける方法論として、収縮していくやり方でなく、ある程度の放射を容認するやり方がいい。体さばきを考えるときに古武術だけでなく、能や舞、飛脚の足運び、はては大工の身のこなしまで研究のまな板に挙げていく好奇心。その好奇心に引きずられるように表れる個性あふれる人々との出会い。こういうご縁はあこがれるなぁ。合コンや異業種交流会とは雲泥の差、ネットワークってのはこうでありたいものである。

    俺も好奇心の赴くままに一心に動いてみようと思えた。そのためにも不要な付き合いや人脈やしがらみに割く労力や時間を減らしていくことがまず肝心だよなぁ。

  • 2018/03/31 15:41:12

  •  内田氏の著書から知って、手にとった本。地道という言葉についての一言は身にしみた。

  • 21世紀に入って編まれた、武術考。
    七十二項に渡って、剣豪・雀士・歌手・刀職人・スポーツ選手などを取り上げる。
    独りでは到達し得なかった境地などについて、書かれる。
    武術の訓練から教育に至るまで通じる、信念を説かれている。
    我慢の稽古(授業)ではなく、自ら楽しんで進んで取り組むこと。
    また、ある程度すぐ使えるものの量産ではいけないということ。
    我々は、学ばなければならないだろう。

    個人的には、「ノルマで塗っても名画は出来ない」的な内容に共感す。

  • 甲野先生のように、身体を使って思考している人の言葉は説得力がある。

    自分もそうありたいと思う。

  • 武術はとても奥深い。

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著者プロフィール

1949年、東京生まれ。
20代はじめに「人間にとっての自然とは何か」を探究するために武の道へ。
1978年、松聲館道場を設立。
以来、日本古来の武術を伝書と技の両面から独自に研究し、2000年頃から、その成果がスポーツや音楽、介護、ロボット工学などの分野からも関心を持たれるようになり、海外からも指導を依頼されている。
2007年から3年間、神戸女学院大学で客員教授も務めた。
2009年、独立数学者の森田真生氏と「この日の学校」を開講。
現在、夜間飛行からメールマガジン『風の先・風の跡』を発行している。
おもな著書に、『剣の精神誌』(ちくま学芸文庫)、『できない理由は、その頑張りと努力にあった』(聞き手・平尾文氏/PHP研究所)、『ヒモトレ革命』(小関勲氏共著/日貿出版社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから』(前野隆司氏共著/ワニブックス)などがある。

「2020年 『巧拙無二 近代職人の道徳と美意識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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