ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569616766

作品紹介・あらすじ

いかにして、福田和也は、かくもたくさんの本を読み、たくさんの文章を書けるのか。その技術と秘訣をあまねく教える。

感想・レビュー・書評

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  • p75
    そういう(難しくて文章が理解できない)事態を分析してみると、三つほどの場合があると思います。
    ① 議論の前提が分からない(読者にある程度の予備知識があると前提して書かれているのにもかかわらず、それを読み手が持っていない)。
    ② ことば、概念が分からない(文章に出てくる、いろいろな概念なり、固有名詞なりが分からない、あるいは分かるような気がするのだが、どうも判然としない)。
    ③ 論理の筋道がわからない(言葉も、状況も分かるのだが、そこで行われる論理の筋道や帰結にいたる手続きが納得がいかない)。
    p79
    翻訳には、簡単な解説がついていますが、それだけでは、なかなかよく分からないでしょう。
    分からない言葉を抜書きして、それを調べていきます。
    その時、翻訳であれば、原著に当たっておいて、原語ではなんと言う言葉なのかを調べておいた方がいいでしょう。
    p96
    情報に接するときに、それを常に考えておくこと。
    つまりは、この情報は、資料は、自分に消化できるのか?
    消化した上で、自分が書くものに使いこなせるのか、あるいは不可欠なものなのか。
    その問いを常に発しつつ、資料と接することによって、接し、獲得する資料や情報などをなるべく必要に近づけることが出来ます。この、必要により近づける、ということこそが、そのまま【効率】をよくするということにつながります。
    p98
    このことも後述しますが、【情報】を得るというのは、消して受動的な行為ではないのです。
    むしろ、高度の自発性、能動性が要求される行為である。あるいは、その能動性こそが、情報獲得の効率を確保するのです。
    情報における能動性とは、それを受けているその時点で、懸命に頭を動かして、それが自分にとって価値のある門尾なのか否か、さらにはそれをどう料理してアウトプットするかという処まですましてしまうということです。
    p127
    その談話を、あるいは話から抽出した情報なり知見をどんな形で、いかなる文脈で使うのか。
    そこが肝腎なところなのですね。
    そして、そのためには、話を聞く前に、その人の談話が、自分の著作においてどういう意味を持つのか、あるいは位置にあるのか、ということをしっかりと認識していなければならないのです。
    p129
    そこで行う取材なり何なりが、今時分が進めている仕事において、どういう意味を持つのかについて、徹底的に考え抜いておくことは、その取材を実り多いものにするために必要不可欠な手続きです。
    p136
    情報を表現に変える
    第一にそれは資料を読む「眼」を養うことですね。
    本や資料の中にあるさまざまな情報の、筋道をつくる、といってもいい。
    もちろん、資料を読み込むことからも、ある種の筋道は見えてきます。
    しかしまた、その筋というのは、資料だけを読んでいると限定されてしまう。
    限定というと抽象的かもしれませんが、要するに普段自分が考えてい、抱いている枠組みの中で、その資料の中にある光景が出てきてしますのです。
    そうなると、どうしても今までと同じパターンに落ち込んでしまうし、焼き直しのようになってしまう。
    p138
    私が言いたいのは、あふれかえる情報をただ整理するのではなく、自分なりに読み、消化し、それを表現するためには取材というプロセスが必要だということです。そうすることによって、ただの情報が生き生きとしたものとして自分に迫ってくる。
    p140
    この二つを並べたときに、正岡子規は、「理想」が月並み平凡であり、「写生」は多種多様だというのです。
    逆ではないかと思われるかもしれません。
    そうではないと、子規は言います。
    「理想」は、一見現実の拘束を受けない自由を楽しんでいるように見えて、実は規制のイメージなり、パターンに強く拘束されているのだ、と。それは勝手気儘なように思いながら、むしろ思っているからこそルーティーンの奴隷であり、出来合いのイメージの規制を受け、さらには凡庸さから抜け出ることが出来ない、ゆえに「月並み」なのだと。
    むしろ、眼前の現実に眼を向けなさい。その対象を、つまりは人の顔を、街並みを、山野を、偏見なしに見て御覧なさい。よく見れば見るほど、その見慣れたはずの事物が、はじめて見るような奇怪かつ奇妙な姿をしていることに気づくのではありませんか、と。
    p158
    書くための認識を、しっかりと持つことが出来れば、自分の求めている文章がある程度は書けるようになります。
    p159
    書くための認識については、大別して二種類あります。
    第一は、書く文章の構造についての認識。
    第二は、自分が、何を書くということについての認識です。
    p182
    よく私なども、インタビューを受ける時に、「この本のテーマは何なのですか」という質問を受けますが、決まってそういう質問をする人は出来ない人です。
    というのも、テーマという言葉には、一言、一つかみで文章を括ってしまえる、あるいはくくって済ませてしまおう、という心根が見えるのです。
    p196
    そして、どんなにツイていても、あるいはスランプが厳しくても、そのフォームを崩さない、そのフォームを守りきる。
    フォームを維持することで、勝ち目をしっかりと拾い、停滞期にも大崩れすることなく、賭博師として生活していくことが出来るのです。
    p216
    取替えがきかないということを、普通に考えていくと、まずその人にしか書けないものがある、ということですね。
    つまりは、分野、ジャンル、扱う領域において、他に誰もやっていないことをやるということです。
    このことはデビューする場合には、とても有効です。
    というのも、それが使えるのは、一度だけなのですね。
    そこにずっとこだわっていれば、当然ですが一種の専門家になってしまって、その領域が脚光を浴びるときにしか、仕事が来ないわけです。
    それでは、プロの書き手としてやってはいけない。
    となると、「空き地」ではなく「混んでいる場所」へと出かけていかなければならないのです。
    つまりは、常に需要がある場所へ。
    ところがこれはなかなか困難ですね。
    とても厳しい競争を強いられるからです。
    そして、その競争に勝つためには、さまざまな意味での「取替えのきかない」個性が必要とされるのです。

  • 書評家のインプットアウトプットに関する本。
    いかに多くのアウトプットを出すためのインプットをするか。
    2001年の本だけど、メモの魔力のような、各種読書術本と共通する内容がある。
    本旨はよくあるハウツー本に近いように感じるのですが、それを彩る様々な小説家、本探し、本そのものに関する雑多なエピソードが教養あふれてて興味深い。

  • 実践的な内容。
    気になったページの耳を折り,読み返し,抜き書きをする,など。

  • これほどまでの巨人がいたのか痛感された一冊。いかに本を愛し、吸収し、自分のものにしているのか教えてくれた。当然のようにメモ書きした。プロとしての根性も教えてくれた。(図書館)

  • 本を読む時に大切な心構えは?


    それは目的を明確にして読むこと。効率的に読むためには役立つ本をしっかり選ぶ。書評、立ち読み。神保町の東京堂書店、三省堂。新宿の紀伊國屋。銀座の教文館。六本木の青山ブックセンター。万年筆で抜書きすることの愉しみ。翻訳書は原文を抜書き。難しい本は読む必要ない。いかにして情報を集めるか。そして発信するか。まず、自分にとって「何が必要」か。それが「どこ」にあるかを知っておく。「書くコツ」の身につけ方は、形式を意識すること。自分の能力(筆力)を知ること。メモ帳は1冊。

  • たくさんの情報を扱う・扱いたい人が読むといいかもしれない。欲しい文章をそのまま抜き書きすることも有効だし、文章のリズムを学ぶための方法も有効かな(私は今も使用中)。情報収集&処理・文章作法の本は他にもありますので、これでダメだったらまた違う本を読むといいかもしれないです。とりあえず、読んで損する本ではないと思います。

  • 欧米の新聞は日本と異なる。事実そのものは素材でしかなく、そこからどういう展望を付けるということが主眼となっている。日本にはそういう意味での新聞はない。

  • 再読。

  • アウトプットのノウハウ

  • 本を読む・書くということに大いに参考となった。

    読む
    まず、「目的」をはっきりさせる。自分は一体何のためにこの本を読むのか、この意識を明確にさせる。

    「目的」があることで、どうやって最小の労力と時間ですますのかという「効率」に関する問いかけが成立する。

    読んでいく中で、「目的」を広げないこと。「目的」を絞る。


    書く
    書くための認識については、2種類ある。
    ①書く文章の構造についての認識
    文章の構造というのは、書きたい文章が、どういう構造をしているのか、というのを分解・分析していく。

    ②自分が、何を書くという事についての認識
    つまり、自分が何を書きたいのか、ということについての認識。
    ここの認識を明確にしなくてはいけない。

    ・文章は一度結末まで書ききると、見通しがずっとよくなる。だから、一度頑張って終わりまで書いてみる、というのが大事になってくる。

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学名誉教授。『日本の家郷』で三島賞、『甘美な人生』で平林たい子賞、『地ひらく――石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。

「2023年 『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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