国際連合という神話 (PHP新書 168)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569618258

作品紹介・あらすじ

わが国の国連イメージは、常軌を逸した信仰のごときものになってはいないか。国際連合は国際社会を代表していない。恒久平和をめざしてもいない。戦争すら禁止していない-かくも「ないないづくし」の国際機関をまるで「平和を愛する諸国民の公正と信義」を代表するかのごとく思い込むのは「筋の悪い神話」である。わが国屈指の戦時国際法の専門家が、日本を呪縛する国際結社の「出生の秘密」に迫りつつ、歯に衣着せず書き下ろした国際連合論。

感想・レビュー・書評

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  • はじめに連合国に「国際連合」という別名を与えて目くらましとしたことくらいは知っていたが、国連がどれほど壊れているかを認識できていなかった。さらに
    ・国連大学を、主要国は審議にも値しない案件と見ていたのに、日本がただ一国熱狂し、日本の横車に国際社会が根負けする形で成立したこと
    ・拠出金分担率が敵国でありながら常任理事国三国を越える時に、問題提起するどころか負担が増えることを目出度いとする雰囲気であったこと
    も。

    筆者は、連合国の枠組の中で敵国である日本こそ、次の世代の国際機関を提唱すべきと言う。理想を夢見るのではなく地道で現実的な暫定的制度をめざせと。

  • ようやく国連という「美しき誤解」から目覚めさせてくれる適切な本がでた。左翼的国連礼賛よりもむしろ、常任理事国をと指をくわえている保守派こそが一読すべき書。

  • ▼本書はそのタイトル通りから国際連合を批判的に考察しているように思われがちだが、実際には、戦後日本と国連との関わり方を批判的に叙述していると言った方が正確。
    ▼確かに、国連は第二次大戦“中”から模索され、連合国のつくった機関であり、集団安全保障を高らかに謳いながらも、現実には集団的自衛権の延長線上にしかない。
    ▼だからといって「多数の主権国家が一般的な政治的了解を相互に模索するフォーラム」である国連を否定するだけでは無益だ。決して世界政府にはなれないという本質的な限界はあるが、その本質を理解した上で現実(=今の国連)を理想に近づけていくこと(=改革を進めること)は有益であろう。
    ▼ちなみに、本文中に「主権国家が明示に交戦権を否認することは国際法に照らして法的適合性を欠く」旨の叙述があるが、強制的にはく奪されたならともかく、持つのが自由なら、持たぬのもまた自由というものである(なお、ここではその是非には立ち入らない)。

  • かつては国連の調停機能がうまく働かないのは、大国による拒否権の乱用によるものと考えられていた。
    国連はいまや、多数の国民国家が並存し、しかも主権の意味が失われつつあるかのような変則的な世界に対しても、しかるべく対応せねばならない。国連が蘇生するには、外部から強烈に変化を迫るような衝撃を加えるよりほかに方策はない。
    中国語では、国連はいまだに、連合軍と書く。(中国語)
    国連大学に欧米はびた一文出していない。

  • [ 内容 ]
    わが国の国連イメージは、常軌を逸した信仰のごときものになってはいないか。
    国際連合は国際社会を代表していない。
    恒久平和をめざしてもいない。
    戦争すら禁止していない―かくも「ないないづくし」の国際機関をまるで「平和を愛する諸国民の公正と信義」を代表するかのごとく思い込むのは「筋の悪い神話」である。
    わが国屈指の戦時国際法の専門家が、日本を呪縛する国際結社の「出生の秘密」に迫りつつ、歯に衣着せず書き下ろした国際連合論。

    [ 目次 ]
    第1章 国連成立50周年の評価
    第2章 出生の秘密
    第3章 国連と戦争
    第4章 自衛権および敵国条項
    第5章 経済社会分野の問題点
    第6章 国連分担金

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    [ 参考となる書評 ]

  • 自分の価値観を疑わずにはいられない本。

  • 2007年10月12日
    国連の問題点について、日本と国連のかかわり方についての問題点について、非常にわかりやすく書いてあった。今まで知らなかったのが恥ずかしい・・・。

  • 国連をその創立史から問い直す国際法の大家、色摩氏の本。国連の問題点を安全保障、敵国条約等から明らかにする。日本にとって国連は無用だと最後まで主張し、国連を廃し、「古典的外交手段の延長と組織化」の為に政策調整フォーラムを設立すべきだという。しかし、政策調整フォーラムなどという主旨のものであれば、設立する必要性はあるのか?古典的外交手段における政策調整とは、国際政治における二国間、多国間の外交交渉であり、それにはフォーラムは要しない。結局は明確な代替案を提示できていないと言える。

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著者プロフィール

元外交官、評論家。1928年(昭和3年)横浜市に生まれる。
仙台陸軍幼年学校卒業後、陸軍予科士官学校入学。この年に終戦を迎える。
54年東京大学文学部仏文科を卒業後、外務省入省。
スペイン、ベトナム、OECD、ペルー、イタリアに在勤。
国連局社会課長、中南米第一課長、中南米参事官、
内閣官房インドシナ難民対策連絡調整会議事務局長、
在サン・パウロ総領事、駐ホンジュラス大使、駐コロンビア大使、駐チリ大使を歴任し、
92年に退官。
その後、浜松大学国際経済学部教授、2003年退職。国家基本問題研究所客員研究員。
主な著者に、『オルテガ』『アメリゴ・ヴェスプッチ』(以上、中公新書)、
『国家権力の解剖』(総合法令)、『黄昏のスペイン帝国』(中央公論新社)、
『国民のための戦争と平和の法』(小室直樹氏との共著、総合法令出版)、
『国際連合という神話』(PHP新書)などがある。

「2021年 『国防と国際法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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