- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569624594
作品紹介・あらすじ
「幸せになろうね」「私はほんとうに幸せ者です」…。世に蔓延する「幸福でありたい症候群」。だがその幸福感は、他人の不幸や「死」の存在を「知らないこと」「見ないこと」で支えられている。著者は、長年の哲学的考察のはてに-どんな人生も不幸である-という結論に辿りつく。この「真実」を自覚し自分固有の不幸と向きあうほうが、「よく生きる」ことになるのではないか。古今東西溢れる「幸福論」とその信者たちの自己欺瞞を鋭く指摘した上で、そう提案する。だれも書かなかった、「不幸論」の誕生。
感想・レビュー・書評
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この種のテーマコミュニティは居心地がいい。徹頭徹尾、ブレなく繰り返される論理(ちょっとくどい)。まあ最終的には平坦なのであるが...。
マジョリティが読み「まあそういう考え方もあるよね」と承認される程度には成熟した社会だと思いたい。
PHPが出す逆説(笑) -
私説・不幸論なのか?
本書の言わんとするところが良く分からなかった。様々な先哲の幸福論から引用される部分が多く、説明されているようだが、なぜか空しい様である。相対的な幸福、幸福の害悪として説明されるところがあるが、それが不幸につながるのであるのか?
著者のみが不幸であると考えている部分もあるのではないか?本書を読んで、幸せを感じることはなさそうである。
お前のためを思って、という項があった。まわりのものを巻き込み、自分の幸福を達成しようとし、その幸福が達成できず、妨げた者として、周りの者を激しく責める。 -
理解できる部分と理解できない部分が同じくらいあり難しい本だと思った。人は決して幸福になれないというのはただのニヒリズムではなくニーチェ的な能動的なニヒリズムを意味しているものだということは分かった。また世の中には幸福というもので真実を隠匿しそれを見ようとしないというのは実際そうだと思った。かなり難しいのでもう少し考えてみたい
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うじうじしとるかも
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幸福アピールする人や幸福ばっかり考える人は、実は幸福の中にいるのではなく、不幸や不安から逃げ出そうとしているだけ。かといって、不幸と向き合ってしまって解決策があるか、逃れられるかといえば、そうでもない。
やはり幸福というのは求めるものでもない。
本当は、幸福も不幸も相対的な感覚で実体はないのかも。
幸福も不幸も分離されるものではなくて、心の中に絡みついて天気のように入れ替わる。
ある時は、神に愛された確信や良き出会いの幸福を噛みしめるが、現実に悪い意味をつけていくことで自ら不幸を作り出してしまっている時もある。
不幸というのは、「嫌だ」と思う脳の働きにしか過ぎない。
不幸の正体を見極めることで、不幸ってそんなものでしかなくなる。
そして、幸福という幻想も、受け入れて、幸福や不幸よりもより深い生の領域に生きることが肝要だと知る。
人生の目的は幸福ではなくて、幸福というのは影のようにしてついてくるオマケみたいなもの。 -
幸福とは、その背後にある無数の不幸を想像しないことによって成り立っている。
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とても刺激的な本である。一言で言うなら、人間はどうやっても不幸なんだってこと。幸福とは、思考停止であり、錯覚であるということだ。そして幸福であることを求めるのではなく、不幸であることを受け入れ、自らを知ることの大切さを説く。僕には、とても説得力のある正論に感じた。
やや自嘲的に感じる作者の文章は、好みが分かれるようにも思う。またぬるま湯のような当たりのいいだけの人生論とはー線を引いているので、反感に近い感情を持つ人もいるだろうなと思う。しかし、「人は自分の見たいものだけを見る」生き物であり、そういうものを選び集めておいて「ほら、みんなそうだ」と納得したがる生き物なのである。こういうガツンと目を覚まさせてくれる薬は必要だ。
そもそも、哲学ってものはこうやって冷酷に真理を追いつめていかなければつまらないもので、僕はこの本の中に、ものすごく力強いものを感じる。強い風に逆らって突き進むようなものを感じる。風を観測するだけの人ではないと感じる。だから、この本に書いてあることは確かにその通りだろうと納得してしまう。表面的に感じる違和感のようなものを越える力があるからだ。
それでもなお僕の中には、人が生きていくには、錯覚や思考停止も必要なんじゃないかって思う部分がある。作者には怒られるかもしれないけど、僕には作者のように、人生の理不尽から目をそらさず、不幸を受けいれ続けるパワーはない。自分もそこそこ幸福だって「錯覚」しつつ、それに甘えそうになった時、はっと気づいて自らを戒めるくらいでいい。
ただちょっと思い通りにいかないくらいで、自分は不幸なんだって周囲にあたっちゃいそうな今の僕に、ぴったりの苦い薬だった。 -
自分が幸福な者だという錯覚だけを支持する人でないならば、読む価値のあるものである。
筆者の、不幸を身に染み込ませる考えを完全に受け入れることは難しい。
だが、同意できる部分が多分にあることもたしかである。
死は絶対的不幸であり、人は死ぬ。