「女系天皇論」の大罪

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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569648071

感想・レビュー・書評

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  • 自分が生きている間に初の女性天皇が見れると期待していたら駄目だった。残念。

  •  悠仁親王がお生まれになる前に盛んにされた議論の本。

     タイトルの通り、女系天皇反対派の人たちが書いた本です。

     反対派の人が書いた本ですから、賛成派の意見はけちょんけちょんに言われてます。
     まぁ、それはそれで良しなのですが、櫻井よしこなどは皇紀=天皇家の歴差の長さと論じているあたりには違和感ありあり(^^;)

     天皇の伝統や歴史を否定したりするつもりはないけど、皇紀の長さが天皇家のつないできた歴史と=だという所長はこんな書籍で言うべきことではないでしょう(こんなことを言っているのはこの本でも櫻井だけ)。

     女系天皇の賛否は悠仁親王の誕生によりなりを潜めましたが、いつかは向き合う必要が出てくるかもしれません。
     そんなときに世論を伝統が壊れても良い根拠とする軽薄な賛成派や、史実ではない伝統を持ち出して語る幻想の反対派の議論に巻き込まれず

     天皇とは何であるのか?
     それが日本にとって日本人にとって何であったのか?
     そして、今の天皇はどうあるべきなのか?

     ということを冷静に語り合う必要があるでしょう。


     何千年紡がれようが、必要がなくなった伝統は絶たれるのが定め。

     また、この本の中にあるように天皇が男系である必要があるかそうでないかを決めるのは世論ではない。

     世論が決めるのは「今の天皇を天皇と受け入れるのか否か?」だけだ。


     旧皇室を戻してその中から天皇を選ぶにしても、長子優先にするにしても、どちらでも良い。
     が、伝統というのなら天皇は国民に愛されてきた。だから、長きにわたってくにのトップ足り得た。ということが最大の伝統であることを忘れては行けないだろう。


     なにが守るべき伝統なのか?

     人が歩んできた長い歴史の中で、糸は複雑に絡み合ってきたが、天皇という糸はまっすぐな一本の糸として今に至っているという話が載っている。
     また、平原にある一本の巨大な大樹であるとのたとえもある。

     これらは、幻想派の戯言だと私は思っているが、所詮君主などというのは戦いに勝って天下統一した初代以外は共同幻想によって成り立っているのだから、幻想をむげに扱うことは好ましくない。

     結局、じゃあ天皇ってなんなの?

     なのである。


     伝統というのは、長い時間なにが守られたのか?ではなく、何で守られたのか?ということに本質があるのだ。

     そのことに関する議論が欠けていると思われる本書は今一つ説得力に欠けている。


     本書の冒頭で、有識者会議の結論に対しての異論がさんざん述べられているが、この本の著者たちがやっていることは反対と言うだけで同じことである。

     私は、長い歴史があるものは存在する理由があるのだ。だから、廃止や変更は十分に議論しなければ後の世に禍根を残す。と思っているので女系天皇の擁立には十分な時間と議論が不可欠だと思っている。
     悠仁親王がお生まれになる前であっても愛子内親王が天皇になることは女性天皇ではあるが女系天皇ではないので伝統上の問題はなく、単に皇室典範の問題だけであるから取りあえず男系の愛子内親王の即位認めて、その後について十分な議論を重ねれば良かったのだ。


     もっとも、反対派の意見を読むと彼らとはまともな気論は出来まいと思った。

     天皇が単に神道のトップとして祭事をつなぐ家柄というのなら天皇のことは天皇家だけで決めたらよい。
     天皇の元首としての地位を優先するならそれは国民の総意によるものである。

     賛成派にしても反対派にしても、国民の総意をどうとらえるのか?
     それが大事になるのは当たり前だ。


     ところが反対派は伝統を重んじないのは無知だからだという。
     確かにそのような側面があることは認めるが、それだけではあるまい。

     伝統だけを重んじるのなら、元首の地位を捨て去ればよい。天皇という家柄だけを残すのなら国民の意見を聞かずとも許される。
     が、反対派は元首としての地位にもこだわっている。
     だとしたら、国民の意思は無視できない。
     それなのに、天皇を女系にすることは今上天皇や国民には出来ない書く著者までいる。

     全くあきれるばかりだが、こんな反対派とは議論できない。

     幸い、この本は染色体を持ち出してきたのはわずかだったのでまだましかもしれないが。


     反対派の意見を聞き、皇室の伝統を知るのにこの本は役には立つだろう。

     が、結局天皇がどのような存在なのかは読んだ国民の意思による。

     天皇のこれから考えることは、これからの日本がどうあるべきかと考えることもおなじだ。

     早急な結論を出さず、また幻想に支配されずにしっかり議論をしてほしいものである。
     
     

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。文学博士。昭和8年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、旧西ドイツ・フランクフルト大学留学。東京大学大学院博士課程を修了し、平成6年まで東京大学教授。平成16年まで明星大学教授。現在、日本会議副会長。乃木神社中央乃木會会長。
主な著書に、『宰相鈴木貫太郎』(文藝春秋)、『森鷗外ー批評と研究』(岩波書店)、『靖国神社と日本人』『昭和天皇』『和辻哲郎と昭和の悲劇』(以上PHP研究所)、『和歌に見る日本の心』『皇位の正統性について』『象徴天皇考』(以上明成社)等がある。

「2022年 『國家理性及び國體について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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