人生の五計 困難な時代を生き抜く「しるべ」 (PHP文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569663869

作品紹介・あらすじ

いかに生き(生計)、身を立て(身計)、家庭を築き(家計)、歳を重ね(老計)、そして死を迎えるか(死計)――。この言葉は遠く南宗の時代に、見識ある官吏として多くの人たちに深く慕われた朱新仲の悠々たる人生訓である。▼本書は人間学の権威として世人の敬愛を集めた著者が、この教訓にヒントを得ながら、深い究明と実践により、独特の論法をもって唱えた『人生の五計』を、いかに現代に活かすかについて語り明かした講話録である。「日用心法」=「日々作用する、働く、その心掛けの法則」「朝こそすべて」=「本当にその時刻において、われわれのすべてが解決される」「師恩友益」=「”いい師””いい友”に巡り会わなければ、いかに天稟に恵まれていても独力では難しい」「良縁と悪縁」=「人生のことはすべて縁である」など、今日という日の重みを大切にし、真の幸福をつかむための智恵を解説している。▼相手の心を高め、善く生きるための深遠な教え。

感想・レビュー・書評

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  • これも安岡正篤氏に出会わなければ知り得なかった書である。
    宋の朱子と同時代の官吏でもあり、篤学の人でもあった、朱新仲の教訓とある
    長生きをするための教訓である。

     生計 いかに生きるか、人間の本質的な生き方
     身計 いかに社会に対処していくか、社会生活における価値観
     家計 いかに家庭を営んでいくか 一家の維持
     老計 いかに年をとるべきか 老いる計りごと
     死計 いかに死すべきか 死生一如の死生観

    人生の五計の根本は、「急がば回れ」にあり

    気になったのは以下です。

    ■生計
    ・朝起きて肝臓を養い、夕方に腎臓を休める
    ・熟睡とともに、安眠を考えなければならない
    ・夜が明けたらすぐ起きる、目を覚ましてからは、ぐずぐずするな。
    ・三上 枕上、馬上、厠上 有益な本を読む
    ・どんなところでも心を養う これが非常な効果がある。
    ・教育家が教育関係の本ばかり読んでいる。医者が医書ばかり読んでいる。いけない、なぜなら変化がないから
    ・多くの書を読む必要があると同時に、多くの人を知る必要がある。これは非常に大事なことです。社交という

    ■身計
    ・要約していうと、一番大切なことは、「師」と「友」である。いかに才能があっても、独力はいけない。
    ・「経の師には遭いやすく、人の師は遭いがたし」、学問の師にはあうことができるが、人生の師には出会うことがむずかしい
    ・友を通じて、益を受ける 直を友とする、諒を友とする いずれもまことのことです。多聞を友とする。道を拓くということです。
    ・政治とか、革命とかいうことも青年だけではだめである。老年だけでもだめである。青年と老年とをうまく配剤、合わせないといけない
    ・どんな地位についても、人から信用される。どんな仕事にあたっても何もはじめからできる必要はない。いつでも謙虚に、熱心にそれを学ぶ。学べば、必ず、人間は習熟することができますから、いかなる仕事にあたっても、容易に習熟するところの心構えができる、そういう人間を造ることが教育の主眼となります。
    ・原理原則、その模範的人物、典型、これが必要なんです。
    ・伝教大師の「一灯一隅を照らす」。自らが一灯となって、自らの座している一隅を照らす。自ら信ずるところを実践するよりほかに世の中を良くする方法ないのです。

    ■家計
    ・家計の出発点は結婚という問題であります。
    ・人間と単なる動物とを区別する最も根源的なボーダラインとは何か。それは、「敬」と「恥」である。
    ・父母は物質的・功利的な欲望や成功の話に関心をあまり示してはいけない。その言動を見て育つ子どもは、当然ながら功利的になる。功利的になると卑しくなる。
    ・「人世万事、喜怒哀楽の中に存する」ことは王陽明の名言であります。
    ・人間はいくら学問修養して偉くなっても、これは、一代きりである。残念ながらそういうものなんです。

    ■老計
    ・老いていくということは、みんな老衰することだと思うが、そうじゃない。これは老熟することなんだ。したがって老ということばは「なれる」とか「ねれる」と読む
    ・早い話、不養生とは自殺行為にほかなりません。
    ・頭は使うほど良いのです。頭は使わなくなると駄目になる。使うほどいい。

    ■死計
    ・仏教には有名な三身の論があります
     ①法身 性命、性霊の本体
     ②報身 法身が感覚的存在に発したもの
     ③応身 法身、報身が要請に応じて形に現れたもの
    私たちが死ぬことはとは、この法身にたちかえって永遠に千変万化していくことである

    ※ここでは、仏教の輪廻転生のことをいっています。だから、死ぬと、生計にもどる。

    目次

    文庫版のまえがき
    第1章 生計
    第2章 身計
    第3章 家計
    第4章 老計
    第5章 死計

    ISBN:9784569663869
    出版社:PHP研究所
    判型:文庫
    ページ数:200ページ
    定価:600円(本体)
    発売日:2005年05月23日第1版第1刷

  • 生計) 朝聞夕改
    身計) 文会輔人

  • 「論理ではなく情理、真理、道理」、「7、8時間寝る必要はない、大体は夢を見ている」、「黎明即起し、醒後 霑恋する勿れ」、「朝に墨を擦る」、「佳い人、佳い書、佳い山水」、「益者三友、損者三友。」、「政治、改革は青年と老年をうまく配剤、合わせる。」、「教師憲章」、「一灯一隅を照らす」、「男は齢四十になれば、己の人相に責任がある」、「父子の敬」、「最もいい言葉は苦言」、「人間は今やコンピュータを造って、前頭葉を失いつつある」

  • 「五計」とは、宋の朱新仲が定めた教訓とのことである。「五計」も「朱新仲」も、検索しても、安岡氏の著書の解説が上位に出てきて、なかなか十分な情報が出てこない(Wikipediaにも出てこない)。安岡氏が日本で広めたということか?

    五計とは次の五つである。
    一、生計ーいかに生くべきか。人間の本質的な生き方。
    二、身計ーいかに社会に対処していくべきか。社会生活における価値観。
    三、家計ーいかに過程を営んでいくべきか。一課の維持。
    四、老計ーいかに年をとるべきか。老ゆる計りごと。
    五、死計ーいかに死すべきか。死生一如の死生観。

    <目次>
    第一章 生計
     情理・真理・道理
     汚れきった空気と水
     「日用心法」
     内臓器官の充電時間帯
     「朝こそすべて」
     「朝聞夕改」と朝の読書
     木偶坊にならぬために

    第二章 身計
     師恩友益
     「損三」の友
     絶妙なる「絶交論」
     「学生憲章」
     立志と革命
     「教師憲章」と身計の覚悟

    第三章 家計
     恋愛結婚か見合結婚か
     「良縁」と「悪縁」
     子育て「いろはガルタ」
     「父母憲章」と敬
     失せてゆく家庭と父たち
     「立派な女房」論
     児童の素質と能力

    第四章 老計
     「老計」にみる人情
     益軒の『養生訓』に学ぶ
     文明に挑む頭脳

    第五章 死計
     「死生」は「昼夜の理」
     水天一碧の最後
    <hr>
    <学生憲章>
    第一章 特性は人間の本性であり、知能、技能は属性であり、習慣は特性に準ずる。三者相待って人間を大成する。
    第二章 学生はその特性を養い、良習を体し、知識を修め、技芸を磨くを以って本分とする。
    第三章 人間は鍛錬陶冶によって限りなく発達するが、その本具する諸々の性能は学生時代に成就するものである。古今人類文化に寄与した偉大な発明発見や開悟も、少なからず二十歳代に行われている。
    第四章 学生は人間の青春であり、民族の精華である。その品性・態度・教養・行動はおのずからその民族・国家の前途を標示する。
    第五章 学生は自己の学修及び朋友との切磋琢磨を本分とし、出来る限り雑事に拘わることを自戒せねばらなぬ。
    第六章 講説の師は得易いが、人間の師は逢いがたい。真の師を得ては、灑掃(さいそう)の労をも厭うべきではない。
    第七章 国家・民族の運命を決する重大時機に臨んでは、敢然として身を挺し、敬慕する先輩知己と共に、救民・革命の大業に参ずる意気と覚悟を持つことは貴い。

    <教師憲章>
    一、教育は職業的・社会的成功を目的とする手段ではなく、真の人間を造ることを使命とする。
    二、子弟が将来いかなる地位に就いても人から信用せられ、いかなる仕事に当たっても容易に習熟する用意のできておる、そういう人間を造ることが教育の主眼である。
    三、将来を担う子弟が、明日の行路を誤たず、信念と勇気をもって進む為に要するものは、単なる知識・理論や技術ではなく、人間の歴史的・恒久的な原理であり、典型である。
    四、教師は漫りに人を教うる者ではなく、まず自ら善く学ぶ者でなければならぬ。
    五、教師は一宗一派の理論や信仰を偏執して、之を子弟に鼓吹してはならない。
    六、教師は学校と教壇をなおざりにして、政治的・社会的活動をしてはならない。
    七、現代が経験している科学・技術・産業に於ける諸革命と相応する理性的・精神的・同義的革命が達成されねば、この文明は救われない。その「革命への参加」は、教師において、いかなる階級の奪権闘争でもなく、もっと内面的・霊的な創造でなければならぬ。

    <父母憲章>
    一 父母はその子どものおのずからなる敬愛の的であることを本義とする。
    二 家庭は人間教育の素地である。子どもの正しい特性とよい習慣を養うことが、学校に入れる前の大切な問題である。
    三 父母はその子供の為に、学校にかぎらず、良き師・良き友を択んで、これに就けることを心掛けねばならぬ。
    四 父母は随時祖宗の祭を行い、子供に永遠の生命に参ずることを知らせる心掛けが大切である。
    五 父母は物質的・功利的な欲望や成功の話に過度の関心を示さず、親戚校友の陰口を慎み、淡々として、専ら平和と勤勉の家風を作らねばならぬ。
    六 父母は子供の持つ諸種の能力に注意し、特にその隠れた特質を発見し、啓発することに努めねばならぬ。
    七 人生万事、喜怒哀楽の中に存する。父母は常に家庭に在って最も感情の陶冶を重んぜねばならぬ。

    <児童憲章>
    一 人間進化の機微は胎児に存する。胎児はまず最も慎重に保育されねばならぬ。
    二 児童は人生の曙である。清く、明るく、健やかなるを尚ぶ
    三 児童に内在する素質、能力は測り知れぬものがある。夙くより啓発と善導を要する。
    四 習慣は肉体となり、本能となる生きた主義理論であり、習慣は生活の作品である。良い習慣を身に着けること即ち躾は児童の為に最も大切である。
    五 言葉と文字は人間文化の血脈である。児童はなるべく早くから、民族の正しい言葉と文字を学ばねばならぬ。その学習能力を児童は大人よりも純粋鋭敏に本具しているものである。出来れば一、二の外国語を修得することも望ましく、それは又十分可能なことである。
    六 児童は祖国の歴史伝統に基づく勝れた文学・芸術や、世界と宇宙の限りない感興に誘う諸々の作品の裡に養われねばならぬ。
    七 いかなる艱難辛苦も、輔導宜しきを得れば、児童にとって却って大成の試金石となるものである。

    <メモ>
     絶妙なる「絶交論」(76)
    「比周、義を傷り(やぶり)、偏党、俗を毀り(やぶり)、志、朋游の私を抑えて、遂に絶交の論を著す。蔡よう、以為(おもへらく)、穆(やわら)は貞にして孤なりと。又、正交を作って、その志を広む」
    社会党だの共産党だの公明党だのというのは偏党・・・
    それは私心、私欲からのグループ活動である。そういう比宗、義を傷り、偏党、俗を毀り・・・とてもこういう輩と天下の政が行えるものではない。

     恋愛結婚か見合結婚か(110)
    結婚というものは、一人と一人の男女が結ばれて、新しい家庭というものを創造する非常に本質的な問題である。

     子育て「いろはガルタ」(128)
    「挨拶」・・・ものにピタリと撞着することを言うんです。ピタリと対応することを言うんです。だから、何か言うた時にピシッと返事する、痛いところをピシッと言い当てる、返事することを「一拶」を与えるというようなことを言う。「一挨」でもいいんです。

     「父母憲章」と敬
    人間と単なる動物とを区別する最も根源的なボーダーライン、境界の大事なものは何か?(132)
    それは「敬」と「恥」であります。愛ではない。
    人間に根本的に大切なものは愛よりもむしろ「敬」と「恥」、この二つであって、これを失うと、人間はあきらかに動物並になる。
    「敬」するということは、自ら敬し、人を敬するということ。敬という心はより高きもの、より大いなるもの、偉大なるものに対して生ずる。つまり人間が進歩向上の心をもっておることだ。
    日本語でもとも感服するのは、勝負をして負けた時に「参った」と言うことです。これは絶対に他の国にない。(135)
    参ったということは、負けた相手を偉いと認識、感服することです。

    2012.12.16 図書館で見つけて借りる

  • とっつきやすい内容なので「最初の一冊」に最適かも。まだ手に取ったことがない人は一刻も早く読むべし。

  • 人間の性命の根本である、人生の五計にまつわる話が語られている本。

    生計・われ、いかに生きるべきか。
    身計・いかにわが身を社会に対処させていくか、何をもって世に立つか。
    家計・家庭(夫婦、親子関係)はどうあるべきか。
    老計、いかに年をとるか。
    死計、われ、いかに死すべきや。

  • ----------------------------------------------
    ▼ 100文字感想 ▼ 
    ----------------------------------------------
    五計とは「生計」「身計」「家計」「老計」「死計」。いかに
    生き、いかに死すべきか。病気にならないように、毎日
    の生活に気をつけて、家庭も大事にしましょという指針。
    西洋、東洋問わない先人の言葉が、名言集の味わい。


    ----------------------------------------------
    ▼ 5つの共感ポイント ▼ 
    ----------------------------------------------

    ■英語の先生が英語の本ばかり、医者の先生が医学
     の本ばかり、これは案外良くないんです。別の分野の
     書も、随時忘れぬように、怠らぬように読む、勉強する
     ということであります

    ■教育とは、どんなことも初めからできる必要はない、
     いつでも謙虚に熱心に学ぶことのできる心構えをつくる

    ■実際に教えるということぐらい学問になることはない

    ■自ら一灯となって、自ら座している一隅を照らす

    ■人間に根本的に必要なものは「敬」と「恥」である。
     愛は他の生物にも見られるもの

  • 人生の柱

  • 【目的】
    人生の目的を学ぶ

    【引用】

    【感じたこと】


    【学んだこと】
    「参った」あの女は偉い。自分が頭が下がるような相手と結婚する。「愛している」では動物的。親は功利的な姿を子供に見せてはいけない

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著者プロフィール

明治31年大阪市に生まれる。
大正11年に東京帝国大学法学部政治学科を卒業
昭和2年に金鶏学院を設立。
陽明学者、東洋思想家。
終戦の詔の起草者の一人。
昭和58年死去

著書
『易學入門』『全訳 為政三部書』『東洋思想と人物』『暁鐘』『王陽明研究』『陽明学十講』『朝の論語』『東洋学発掘』『新編 経世瑣言』『新憂楽志』『老荘思想』『古典を読む』『人物・学問』『光明蔵』『政治と改革』『古典のことば』『この国を思う』『儒教と老荘』『旅とこころ』『王陽明と朱子』『人間維新Ⅲ』『憂楽秘帖』『明治の風韻』『天子論及び官吏論』(明徳出版社)

「2000年 『人間維新 III』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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