妖恋(ようれん) (PHP文芸文庫)

著者 : 皆川博子

• PHP研究所 (2013年7月17日発売)

作品紹介・あらすじ

冬に咲く桜の木の下で死ぬと望みがかなうという……。四季の風物に彩られた、江戸の七つの恋を妖しく切なく描く、珠玉の時代小説短編集。

感想・レビュー・書評

[sukonbuさんの感想 · 2020年3月13日]

江戸を舞台にした妖しく切ない短編集。

現実と幻の境界が曖昧な感じで幻想的。
時代背景故にすれ違ったり成就しなかったり…物悲しい空気が漂う。

[yamaitsuさんの感想 · 2013年7月29日]

時代物短編集。どれも面白かった！もののけのようなものが出て来る話もあるけれど、人間の情の怖さもあって、なんていうか、現代語で読める泉鏡花のおもむき。文章の美しさ、物語の構成、人物造詣、どこにも隙が無い。ここまでくると小説も職人技だなあ。堪能させてもらいました。満足しすぎると、感想の言葉ってあんまり出てこないものですね（笑）。

※収録作品
心中薄雪桜／蛍沢／十六夜鏡／春禽譜／妖恋／夕紅葉／濡れ千鳥

[橘さんの感想 · 2019年6月25日]

再読でも、ここに描かれる甘やかで残酷な世界にうっとりします。
どこから狂っていたのだろう、でもきっと最初から狂っていたのだと思います。
「心中薄雪桜」と「夕紅葉」が好きですが、「妖恋」の一文「おまえ、どうして、そう、化け物と人をわけるのだろう。どっちもたいして変わりはありゃあしないのだよ」にははっとします。
「夕紅葉」の、紅葉ケ原はどこ、に、ここじゃないか、とこころの中から声がするのもぞっとしました。そうか、あの時囚われたのだ、と。
絶望的な世界なら、彼方側に行ってしまった方が楽なのか…狂気を抱えて生きるのか。。
カバーの折り返しにも載っている、近藤史恵さんの解説もとても好きです。

[Morrisさんの感想 · 2017年6月7日]

美・情・狂
文章や人物の表に現れる美しさ
その底や背後にある情念
そして怪談的幻想的ともいえるが
一線を踏み越えてしまった狂気の世界
それに甘く妖しく浸る。
現代から描くお江戸を舞台に大人の怪談とも。

[tiroさんの感想 · 2014年11月3日]

皆川博子だなあ。短編より長編の方が好き、だけどこの妖しく美しい雰囲気はいい。

[ｼｬｲﾆﾝｸﾞｳｨｻﾞｰﾄﾞさんの感想 · 2014年5月20日]

江戸時代を背景とした短編集。
どのお話も、タイトルが艶めかしくも美しい。
この時代だからこその切なさが胸に迫る。
これを今の時代の言葉で言うならば、
大人のファンタジーか。

[sasakiさんの感想 · 2014年5月18日]

読み終わったあと、どこかぽっかりとさみしくなる。

[てろめあさんの感想 · 2014年4月20日]

１作約３０頁という短篇でありながら、読者を世界観に浸らせさらに主人公の狂気的な恋情を恐怖や絶望だけでなく切なさと幸福に変える文章に感服。
江戸なのに江戸ではない、江戸でないようで江戸の出来事。曖昧さ加減が絶妙で、そのなかで揺れ動く恋もまた絶妙で、この人にしか書けない文章だなと思った。
挿絵がまたきれいで、作品の雰囲気にとてもあっている。

濡れ千鳥が一番好き。

[ちょさんの感想 · 2014年3月20日]

　ファンタジーだなぁと思ったら、解説で幻想小説とあって納得。
　1話1話の重みが軽いんだけれど、よくよく読むと、がっつりと重い。そして酷い。
　それなのにきれいなのか文体のせいなのか、書き手の心根ゆえなのか。

[michiさんの感想 · 2013年12月25日]

文章が丁寧なので、こちらも丁寧に（いい意味で）読まされ読了まで意外と時間がかかった。
あとがきの解説近藤史恵さんの文章がしっくりくる、短編集。

著者プロフィール

皆川博子（みながわ・ひろこ）
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」