書店ガール 3 託された一冊 (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569761848

感想・レビュー・書評

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  • 本屋の意義、それぞれの家庭や職場での立場に、震災に合った人達との本を通じての関わり。
    本屋さんの仕事の奥深さと登場人物の抱える悩みに惹き込まれてしまう。
    単純な感想だけれども自分も一緒に働いている職場のような気にもなる、本当に面白い小説。

  • 吉祥寺の本屋、新興堂書店の店長として働いていた理子が、この巻では、エリア・マネージャーに昇格し、東日本の店全部を担当することになっていた。
    そして、新たに新興堂書店に統合された、仙台の櫂文堂書店を訪れ、その店の看板スタッフの沢村に会う。仕事はできるが無愛想な沢村は、実は東日本大震災で元妻を亡くし、今でも被災地の図書館にボランティアに行く度に義母を訪ねていた。
    理子は、沢村に被災地を案内され、震災後3年経って震災が忘れられかけていること、被災した人たちは、複雑な思いを抱きつつも前向きに生きようとしてしていることに気づく。
    そして、その春のフェアを"震災フェア"として仕掛けたところ、関東の他の支店も同時開催することとなり、震災関係の本の紹介とともに、沢村の義母たちが手作りしている雑貨を書店で販売し、好評を得る。
    今年が被災から10年ということもあり、震災の記憶が語られるシーンには一層涙を誘われた。

    また、母になった亜紀は、職場に復帰してからも、新しい部署で戸惑いつつ、仕事と育児の狭間で悩み、子供の麻疹をきっかけに、しばらくは書店の現場より新宿本店で事務をする決心をする。

    震災3周年が主題ながら、書店ガールたちは着実に成長していた。

  • 東日本エリアマネージャーになった理子が仙台の老舗書店をリニューアルオープンさせるところから始まる。被災地や被災者の現状も展開するので、大して影響がなかった私でもチリチリするものがある。

    ちょうど仙台旅行へ行く新幹線とアンパンマン ミュージアムとホテルで読んだのが偶然にしてはタイミングがよい。

    震災当日何をしていたか、直後に行った東北出張、あちこちの家でブルーシートがはられた屋根、岩手県で見せてもらった更地となって何台もの重機が動く海岸など、いろいろな物を思い出す。

    何の支援もできないけど、本文にもあった、東北に行くことだけでも支援になるという言葉を信じて旅行します。
    市街の本屋さんには寄れないけど、新幹線構内の本屋さんには寄ってみようと思う。

    亜紀と理子の絡みが減ってしまうのかな。さみしい。

  • 理子と亜紀の関係がとても素敵。1巻では距離があって意見が合わない者同士だったはずが、いろんな困難を乗り越えて信頼できる関係になっている。
    そういった書店員の成長過程がとても面白いし、今回は震災の事も絡めてとても読み応えがありました。
    「愛のゆくえ」いつか読んでみよう。

  • 好評の「書店ガール」シリーズも3作目。
    このシリーズ、いいですね。
    もうすぐドラマ化されるのも楽しみ☆

    書店員の若手で目立つ存在だった小幡亜紀も今や30歳。
    産休が開けて半年後という。
    新興堂書店・吉祥寺店の朝礼から始まります。
    決まっている挨拶を皆で唱和するのですね。
    ささやかなようでも、大事なことをさりげなく。

    一方、店長の西岡理子は、昇格して、東日本地区を統括するエリア・マネージャーを兼任しています。
    仙台の櫂文堂が吸収合併されたため、店名はそのままだけれど、そちらの指導へも出かけなければならない。
    こちらを敵視しているかもしれない店員たちの中に乗り込む難しさ。
    しかも、カリスマ的なほど有名な副店長・沢村稔もいた。
    最初はよそよそしい沢村だが、実は互いに会う前から認めている存在だったとわかってきます。
    震災の影響が大きかった仙台で、理子が見聞きしたこととは‥

    亜紀は担当が替わって、知識のないジャンルの質問にも答えなければならないが、自信喪失気味。
    働く母親としての悩みもリアルです。
    幼い子供がいて働くのは大変なこと。
    保育園に預けていても、ちょっと熱が出ればすぐ呼び出され、引き取りに行かなくてはならない。
    夫は協力する気が全くないわけではないけれど、仕事が忙しくて結局頼りにはならない。実家が近くて、母親が協力的だから成り立っているとはいうものの‥
    定時には帰り、遅番も固定と、何かと優遇されている亜紀に対して、冷たい視線もあるとは大変ですねー。

    震災後3年がたち、離れているところではやや風化しかかっているかもしれない。
    書店で何が出来るのか?
    理子たちの企画に、亜紀や、後輩のバイト生・愛奈が協力し、書店の一角に特集コーナーを設けることに。

    日常的だけど決して離れられないリアルな悩みにあくせくする日々に、震災という大きな出来事が突きつけられます。
    自分たちのささやかな体験を振り返るのも大事なことだという気がしました。
    おそらく綿密な取材から選び抜いた表現であるのでしょう。
    震災を扱った本が多数上げられているのも、参考になると思います。
    震災は今後日本のどこで起きるかわからない、どこで起きてもおかしくないのだから‥
    小さなことでも何かを心がけていかなければ。

    言葉の力、それをまとめておくことのできる本の力。
    非常時にも人は本を必要としたという。
    本を人に届けようとするさまざまな努力に胸を打たれる心地がしました。
    最後はいつもの仕事場で、晴れ晴れと挨拶するシーンで、よかったです☆

  • 今回は東日本大震災のあった東北の本屋さんとの関わりがテーマになっている。
    そこで理子はとても辛い経験をした
    書店店長沢村さんと出会い
    東京でイベントを企画する。
    とても重いテーマだけど
    みんなきちんと向き合って
    真剣に取り組む姿に
    やっぱり彼女たちは素晴らしいと思った。

    他にも亜紀の子育てとお仕事のことや
    元気なバイトちゃんが登場したり
    3巻もいろんなお話がうまく同時進行して
    読み応えがありました。

    書店ガールが7巻まであることを知り
    びっくりするとともに
    「しゃばけ」の次は
    書店ガール読破だな、と
    また楽しみが増えました。
    頑張りまーす♪

  • 大好きなシリーズ、第三弾。
    震災をテーマにした事に賛否あるようだが、私はそれもひとつの形としてアリだと思う。

    あくまで碧野さんの描く物語のお話なのだけれど、読めば読むほどリアルに感じる。
    シリーズ1作目、2作目は書店で奮闘する模様が印象強かったけれど、今回は人との関わりが大きな支柱になっていた気がする。
    いろんな角度から人と出会い、関わり、言葉を交わし、感情を抱く。
    そして自身の書店員としての在り方を悩み考える。

    震災に遭われた方がこの本を読んだらどう思われるだろうか。
    もしかしたら不快に感じる方もいるかもしれない。
    でも、私はこの一冊を大事にしたいと思う。

    やっぱり好きです、書店ガール。

  • 東日本大震災と、働く女性(特に子を持つ母親)との、二つの大きなテーマで、展開する第3作。
    大きなテーマではあるが、相変わらずの小気味よいコンビの、理子と亜紀の活躍が、絶好調。
    そして、新しいメンバーも加わり、先行き、ますます楽しみなシリーズ。
    次回作も楽しみ。

  • 書店ガール第3弾。
    第1弾、第2弾、そして第3弾とどんどん好きになっています。
    シリーズの中ではこの本が一番良かった!
    毎日、いろんな事件が起こって、東日本大震災の記憶が薄れていくのが恐ろしい…
    この本を読むと、やっぱり本屋さんに行きたくなる!

    • honno-遊民さん
      今回、9個もの「これいいね」ありがとうございます。
      「この本を読むと、やっぱり本屋さんへ行きたくなる!」同感です。本屋では何気に本棚を眺め...
      今回、9個もの「これいいね」ありがとうございます。
      「この本を読むと、やっぱり本屋さんへ行きたくなる!」同感です。本屋では何気に本棚を眺めていますが、その裏では書店員がどんなに苦労しているか、『書店ガール』を読むとわかりますね。
      2015/08/18
    • azu-azumyさん
      hongho-遊民さん
      こちらこそ、「いいね」とコメントをありがとうございます!
      本当に!『書店ガール』で初めて、書店員さんの大変さがわ...
      hongho-遊民さん
      こちらこそ、「いいね」とコメントをありがとうございます!
      本当に!『書店ガール』で初めて、書店員さんの大変さがわかりました。
      最近は、ちょっと違った意味で書店に行くのが楽しみになっています。
      シリーズ4もぜひ読んでみたいと思います。
      2015/08/27
  • 本って良いな~と改めて思う。
    シリーズ3冊目。

    実は一冊目を読み始めた時、ワガママな女の争いが
    エンエンと続く冒頭に、げんなりで・・・
    途中で放ろうかと何度思ったことか・・・

    この3冊目では、3.11以後が描かれる。
    忘れないでいたいのに、日常のめぐりは早すぎて・・・
    ああ、こんな風にすればよかったんだと頷けた。
    このあたり、賛否両論、あるいは好き嫌いの分かれるところ?
    「お仕事エンタティンメント」と言い難いかもしれないから・・・
    しかも、ちょっとしたブックリストにすらなっている!
    私は好きだけし、実際に、これで良いんだよと
    背中を押してもらったようで、泣けちゃったけれど。

    東北で被災した人から見たら呆れられるかもしれないけれど、
    あの日のことは私も抱えている。

    ああ、本って良いな。
    物語にちりばめられたあの日をめぐる、さまざまなエピソードにも
    そして、この書店ガールたちの生き方に、
    自分も本が大好きであることに、心から感謝。

著者プロフィール

愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家デビュー。大人気シリーズ作品「書店ガール」は2014年度の静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」を受賞し、翌年「戦う!書店ガール」としてテレビドラマ化され、2016年度吉川英治文庫賞にもノミネートされた。他の著作に「銀盤のトレース」シリーズ、「菜の花食堂のささやかな事件簿」シリーズ、『スケートボーイズ』『1939年のアロハシャツ』『書店員と二つの罪』『駒子さんは出世なんてしたくなかった』『跳べ、栄光のクワド』などがある。

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