竜の雨降る探偵社 (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569765228

作品紹介・あらすじ

昭和三〇年代・新宿。珈琲店の二階に住むその美しき青年は、雨の日だけ探偵業を開き、怪事件を鮮やかに解決するというのだが……。

感想・レビュー・書評

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  • 竜頭湖の古い神社の元神主が、新宿で探偵に。「雨の降る日しか営業していない」と噂の探偵社にもちこまれる謎を推理する連作短編集。

    ミステリーの探偵にしては珍しく、変人臭がまったくない。ジャック・リッチーの「カーデュラ探偵社」のように、探偵がその特技をいかしまくるのかと思っていたけれど、そこまで派手に技を炸裂させたりはせず、地道に聞き込みをして謎を解いていく。氏子の悩み相談をうける神主だったためか、聞き上手で、コミュ力が高い。

    謎自体は、途中でなんとなく想像がつく。トリックがどうというよりも、全体にただよう昭和レトロでノスタルジックな感じを楽しんで読むのがいいと思う。

  • 三木笙子さんの今回の物語の舞台は、昭和の新宿です。干拓工事がほぼ決まってしまった竜頭湖を守っていた神主の櫂は、湖を離れ東京で探偵社を開き生きていく決心をします。共に湖の傍で過ごした幼なじみの慎吾とは、東京に出てきてからも友情は続いていました。けれど慎吾にとっての櫂への思いは、彼を裏切っている罪悪感、自分は櫂の敵だという口に出せない思いに苛まれているものでした。そのワケは湖の干拓を進めているのが、自分も属する父親の会社だったからなのです。櫂は自分のことをどう思っているのか、それを知るのが怖いのです。
    櫂の探偵社に持ち込まれる謎は、今回も時代とマッチングしているような昭和の空気を感じられるもので楽しめました。特に第三話『好条件の求人』では、あの麗しの有村礼さまのお名前と版画が登場されるとは、おおっ!感激です。ご本人は登場されていませんが、別作品の登場人物と意外なところで偶然ばったりってのは嬉しいモノですよね。でも、70歳を超えておられるのか。想像出来ない・・・けれど今でも美貌は衰えていないとは、さすがです。それなのに礼さまを爺さん呼ばわりするとは、慎吾のやつめぇぇ!その礼さまの描かれた『別れの雨』は美人画ではなく、男性とのことで、たぶんこれはあの人がモデルだろうな・・・と。えーん、どんな別れだったの?興味のある方は『帝都探偵絵図』シリーズをどうぞ。
    ちょっと(だいぶん)横道にそれましたが、ラストの謎はお伽噺のような櫂の正体に触れ、さらに苦しい胸の内を吐き出した慎吾が櫂の包み込むような大きな愛によって心の棘を溶かされる、ふたりの絆が一層深まるような余韻を感じさせるものでした。タイトルもそのままズバリ納得ですね。

  • 戦後の新宿にある探偵社が舞台の短編集。
    全体的に優しい雰囲気で静かな湖面を想わせる物語。リアルとファンタジーの狭間に在る感じが好みかな。
    友人のために大切なものを躊躇いも後悔もなく捨てた櫂の気持ちが温かい。
    子供の頃から自分を気遣ってくれた慎吾の幸せを思う気持ちが伝わってきた。
    干拓されてしまうけど、湖面は二人の中で静に波打ち続け、色んなものを運んでくれると思う。

  • 最後の話はもう少し工夫した方が面白い気がする。引っ張ったわりにはサラッと終わった。

  • 三木さん独特の透明感のある作品です
    表題の意味は最後まで読まないと分かりません
    ミステリーとしては物足りなさを感じましたが、最後まで読むと、なるほどと思います

  • 昭和の新宿を舞台にした連作短編。元神主の探偵・櫂と、幼馴染で大家で建築会社社長な助手役・慎吾。神主から探偵に転職というのは珍しいと思ったが、最後まで読むと表題の意味も含めて諸々納得。「竜の雨降る探偵社」間違って届く郵便物の謎。「沈澄池のほとり」友の死を悼む女性の真意と消えた手帳の謎。「好条件の求人」奇妙にして大胆な手口。「月下の氷湖」理屈じゃないんだろうな。少しは慎吾の心も軽くなればいいけど。

  •  2016-08-14

  • 舞台は昭和(戦後)の新宿。「雨の日だけ営業」と噂される元神主が営業する探偵社をめぐる物語――

    今回もたっぷりイケメン二人によるブロマンス成分満載で(さらに、今回は一方が相手に負い目を背負いながらの関係が…エモい)。物語の設定と事件の謎が良い感じに絡み合って今作も大満足です。

  • ふらりとよった書店で。何の因果かサイン本があったので買ってしまった。
    軽い読書にちょうどいい。読後感もなかなかいい感じ。
    昭和後期、新宿の片隅で小さな探偵社を営む主人公と幼なじみのバディもの。日常の謎系。なぜ郵便物がまちがって届くのか?友人が自殺した池のほとりに毎日現れる女の真意は?一件割りのいいバイトの募集の正体は?兄はなぜ弟を助けなかったのか。どの謎にもちゃんと一定悪意があるところに作者さんのこだわりを感じる。
    ほのかに感じる薔薇の匂いが女性の方に受けるのかしらん

  • 最終章…すごく好き
    自分が大事な相手から疑われようが
    大事な人の為に愛のある嘘をつき、守り続ける…
    そんな深くて本当の愛…なかなか難しいよね…

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著者プロフィール

1975年生まれ。秋田県出身。2008年、第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作となった短編を改稿、連作化した短編集『人魚は空に還る』(東京創元社)でデビュー。他の著書に『クラーク巴里探偵録』(幻冬舎)、『百年の記憶 哀しみを刻む石』(講談社)などがある。

「2019年 『赤レンガの御庭番』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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