日本人だけが知らない「本当の世界史」 なぜ歴史問題は解決しないのか (PHP文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569765617

作品紹介・あらすじ

なぜ、日本は“敗戦国”から抜け出せないのか?――新進気鋭の憲政史家が、歴史認識を根本から改める覚悟を日本国民に迫った戦慄の書!

感想・レビュー・書評

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  •  この人が自分で解釈した世界史の見方を凝縮した1冊で、単に歴史上の出来事をだけ書いた「世界史」の本ではない。西欧のキリスト教徒は700年もの間、イスラム教国に負け続け、1492年にやっとイベリア半島を回復するのだが、700年間もの間恨み続ける宗教的執念を私たちはわからない。
     西欧がキリスト教を公認してから、文化は衰退し科学や学問や芸術も皆神の僕となってしまった状態を、私たち日本人はずっと進化し続けていたので、わからない。異教人を殺すことは善であり、改宗させて殺すのはもっと善であるという発想を私たちは理解できない。
     日本は敗戦国から抜け出そうとしても、日本が敗戦国のままでいることをアメリカや中国などの他の国が望んでいるのだから、いくら日本が謝罪しようが賠償しようが敗戦国から抜け出ることに協力してくれるはずがないのである。
     鉄と金、すなわち軍事と経済は国家の問題であるが、紙すなわち文化は国民全体の問題なのだ。国民が敗戦国の歴史認識のままでは、いつまでたっても歴史問題は解決しないというのはとてもよくわかりました。

  • 序章p21にある、
    “ロシア語には「安全」という語はないと聞く。あるのは「無危険」だけだという。”
    というのは本当の話なんだろうか?
    さすがに、お国柄ジョークだろーと思うんだけど!?(^^;
    でも、ロシアじゃあり得るのかもなぁーと思ってしまうのは、やっぱり今回(2022年3月)のロシアの蛮行があるからだろう。
    ずいぶん前に買って積読だったこの本を急に読んでみようと思ったのも、その蛮行があったからだ。

    自分が子どもの頃は、親戚等に戦争(第二次大戦)に行った人、あるいは敵機から面白半分の機銃掃射を受けたと言っていた人が、まだ結構いた。
    子供だったこともあって、詳しいことを聞いたわけではなかったが。ただ、たぶんそれらのことはアメリカとの戦争での話だったように思う。
    でも、それらの人が一様に言っていたのが、「ソ連だけは信用するな」だった。
    その後、90年代初めにソ連は無くなり、ロシアになって。
    ここ10年くらいは日本とロシアの間に平和条約を結ぼうなんて話がよく聞かれていたわけだが、あの蛮行であらためて思った。
    戦争に行った人や戦争の被害に遭った人が言っていた、「ソ連(ロシア)だけは信用するな」というのは、今でも本当のことなんだなと。
    それは、ウクライナから避難してきた人たちにポーランド等東欧の人たち手厚い支援をしているのを見ても言えると思う。
    東欧の国々の人たちは第二次大戦後、ソ連(ロシア)によって酷い目に遭ってきたからこそ、ウクライナから避難してきた人たちの苦難が全然他人事じゃないんだろう。
    というか、全然他人事じゃないというのは、ロシアと国境を接している我々日本も同じだ。
    そういえば、自分が子どもの頃は冷戦真っ只中だったから、子供ながらに漠然とまたソ連と戦争になって。自分も戦争に行くことになるんだろうなぁーと思っていた記憶がある。


    そんなウクライナでの状況をTV等で見つつ読み始めたこの本だが、第一章は中世までの世界史のざっとしたおさらいで、正直面白くなかった。
    でも、第二章になってからは俄然面白い。
    第一章の中世までの世界史をざっくりとぶっちゃけたその感じが、第二章ではむしろいいのだ。
    ざっくりだから、風が吹いて桶屋が儲かる的な、その時代の流れが大まかに俯瞰できるし。
    また、ぶっちゃけだから、今の世界の常識的(つまり、欧米や戦勝国にとって都合のいいタテマエやキレイゴトとしての戦争反対)ではない、私たち日本/人にとってそれがどういうことだったのか見えてくる。
    また、断片的に知っていたことが繋がることで、そこにどういう意味があるのか/あったのかを示唆してくれているように思う。
    ぶちゃけついでにさらにぶっちゃけちゃうとw、絶対王政下だからこそ戦争に合理性を求めるようになって、宗教戦争や無意味な虐殺をなくそうという方向にいったのに。
    その後、植民地争奪や覇権争い等お金儲けがからんでくることで、戦争に大義(正義)が必要になって。さらにフランス革命やロシア革命でのしあがった庶民が理想や理念の名の元に意見の違う人たちを「反革命」と決めつけ、短絡的に殺戮しまくるようになっていった。
    その流れに染まるのを恐れた国々は、元首が自らの権力を守ろうとして国民の支持得ようと虐殺を復活させる。
    そんな自らの国に国民は熱狂。
    その熱狂が、空襲等による都市殲滅、そして原爆へとつながっていく。
    その流れ(戦争ということの変遷)がなんとなーーーく見えてくる。
    そこはすごくよかったと思う。

    もっとも、上記は本当にぶちゃけだからw
    世界史に詳しい人に「いやいや。そういう単純なことじゃないんだって…」と怒られちゃうのかもしれないけどね(^^;
    ただまぁとっかかりとしては、そんなざっくりした流れでもいいんじゃないのかなぁーと思うんだけどなw
    とはいえ、もっと詳しいことは今後の課題(^^)/

    というか、(日本人だけが知らない本当の)世界史を200ページちょいでわかるわけはないので、これを読んだだけで訳知り顔になるのは確かに危険だろう(^^;
    とはいえ、世界史というのは、世界の歴史と言うだけあって、国によって世界史の常識は違うわけだ。
    お行儀のよいタテマエで書かれた世界史は確かにスタンダードなんだろうけど、でもそれは80年近く前の戦勝国にとって都合のいい歴史でしかないのも確かだろう。
    極端なこと言えば、今の国連の常任理事国である、「80年近く前の戦勝5か国」って、本当に戦争に勝った国なのか?って話だ(^^ゞ
    ま、アメリカはわかる。
    でも、フランスはドイツに占領されたわけだし、イギリスだってアメリカが参戦しなかったらどうなっていたかはわからない。
    終戦時戦勝国として名を連ねたのは、現中国の中華人民共和国ではなく、現台湾の中華民国だし。
    そもそも、その当時にロシアなんて国はなかった(^^ゞ

    そんなことを言いたくもなるのは、今回のロシアの蛮行は元より、ミャンマーの政変や10年続くシリアの内戦等々に国連は全くなす術がないからだ。
    そのことは、ウクライナのゼレンスキー大統領も言っていたし。
    先週TBSの番組で、ミャンマーの若い女性がネットを介してのインタビューで「ウクライナは世界中が支援してくれるのに、わたしたちの国は誰も助けてくれない」と言っていたのは本当に胸が痛かった。
    80年近くも前の戦争に勝ったと自称する5か国が「常任理事国」だろうとなんだろうと、それらの出来事で酷い目にあっている人や国をちゃんと救って問題を解決出来るならそれでいいのだ。
    でも、起きている現実の数々はそうではない。
    なら、もういい加減、80年近くも前の戦争に勝ったと自称する5か国がなんで「常任理事国」って威張ってんの?という声をあげなきゃダメだ (^^ゞ

    あと、この本を読んでいて、いろんな国がしたり顔で唱える「過去の歴史認識」って、心底クダラナイなぁーとつくづく思った(爆)
    以前、某国の元首が言っていた「千年忘れない」を聞いた時、「えっ、元寇で元の兵隊として攻めてきたのって、まだ1000年経ってないけど。それって、文句言わなきゃダメだったの!?」と、笑ってしまったことがあったが(^^ゞ
    このロシアの蛮行にしても、(大っぴらには言ってないが)旧ソ連の威光みたいのが底にありそうだし。
    そういば、この本にも出ていたけど、中華帝国が「化外の地」と言ってきた台湾を、歴史的に自分の国の領土だと言うのは無理がある。
    なんでも明帝国の勢力範囲を中国領だと言ってるみたいだけど、だとしたらその明帝国が築いた万里の長城より北側は歴史的には領土外になるわけだ。
    ていうか、歴史云々言ったら、モンゴルが中国を領有してもいいことになるし、アメリカは今すぐ先住民に返さなきゃダメなことになる(^^;
    ていうか、「国譲りの神話」によればヤマトは出雲から国を譲られた(奪った?)ことになっているのだから、日本は島根県に遷都しなきゃならなくなる(爆)
    ていうか、そもそも人類って、オルドバイ渓谷以外に住んじゃダメなんじゃないか?(^^ゞ

    ヒトラーがやったことの多くは絶対悪いことだ。
    でも、P194にあるように、“ナチスの悪魔化は戦勝国によって都合のよい歴史観”というのは確かだし。
    それに続くP195の“必ず「日本の非道と残虐行為」について言及するのが欧米の学術書の暗黙の掟”も確かだろう。
    なぜなら、“ナチスの悪魔化”は、戦勝国、“特にヨーロッパ人にとっては、自らが封印した暗黒面そのもの”(P195)、つまり、中世のヨーロッパで当たり前のように行われていた国(?)による殺戮や強奪を時代を経て、今度は植民地(世界中)で行ってきた歴史を、「ナチスこそが悪魔」だと自分たちが被害者面することで、「なかったこと」にしてしまったのだから(^^ゞ

    その他、P174にある、“アメリカ人は自らが騙したプロパガンダに自己陶酔する悪癖がある”とか(爆)
    そんな風に、ぶっちゃけだからいろいろ見えてくるんだけど。
    ただ、「こういう時」こそ、ぶっちゃけでわかりやすい意見は注意しなきゃならないだろうし。
    また、今の日本は、金儲けのために他者にすり寄ることを言ってきたり、共感してきたりする人や会社が多いから。
    他者の意見に接して、それが自分の考えを代弁してくれていると感じたら、自分の考えに近いからこそ「これは変だ」と疑わなきゃだろう(^^;
    ★を一つ減らしたのはそういう理由。

  • 戦争と総力戦の違い。
    今までの歴史観の学び直しの必要性と周辺諸国との付き合い方。
    この本の全てが正しいとは思わないが、自分の知らない歴史があった。

  • 過去に目を背けるものは、現在に対しても盲目になる。

    我々は西洋社会の歴史が唯一の真理と考えがちだが
    本書その思い込みを解いてくれる。

    欧州のウェストファリア体制から生まれた国際法が
    米国の殲滅主義でいかに歪められたか。

    中国台頭で新たな世界秩序が生まれる中、狭間に
    いる日本はどう進むべきか?

    ヒントの詰まった一冊です。

  • 近代日本がいかに成り立ったか、そして何故いまだに敗戦国のままでいる(それはどんなに国連への貢献度が高いとは言え)のかを十分に理解させていただいた。
    やはり先ずは日本人が歴史を知る必要があり、それを踏まえての行動と言動をしていかないと、ただでさえルールを守れないアメリカや中国などに喰い物にされていくだけであることを思わざるを得ない。
    すでに西欧中心の歴史教育を受けて、自然と(潜在的に)そういった考えが脳内に意識されている人には是非とも読んでいただきたいものである。
    そして戦後レジームからの脱却には、戦争に勝たなければならないということは、表面上は平和である今においていかに戦争を想定して備えておかなければならないということであり、果たして今の日本が充分と言えるのかは疑問である。

  • むむむ、、難しい。。。これまで学んできた世界史と日本史を総動員させて、それらをなんとなくくっつけていくと、なんとなーく理解ができた感じ。この歳になって、歴史認識の重要性は痛感しているので、引き続きお勉強していかないとなぁ。

  • 著者は言う。
    「歴史問題の解決とは、もう一度戦争に勝たねば解決できないほどの難問なのである」

    確かにその通りだ。
    米国は戦後、国体を大きく毀損させる日本国憲法を強制し、事後法による極東国際軍事裁判というただの私刑を遂行して法の精神を踏み躙り、偏向した教育によって徹底的に贖罪意識の刷り込み行なった。これにより日本を永遠に敗戦国に貶め、欧米に立ち向かう気概を喪わせた。
    これこそが戦後レジームであり、未だにその呪縛から自らを解放出来ないばかりか、政治家自らの無知で未だに自国を貶め続けている。河野、細川、村山談話しかりである。

    そのレジームからの脱却こそ、現代日本人の悲願であり、先の大戦を戦った先人達に対する責務なのである。

  • ・近代の欧州諸国や日本は無差別戦争観。戦争のやり方には善悪があり、軍事合理性に反する無意味な殺傷を軽減・根絶するが、戦争そのものには正義も悪もない。敵とは利害が異なるものであり、犯罪者ではない。
    ・一方、アメリカは差別戦争観、すなわち正義の戦争があるとする考え方。自分の行う戦争は常に正義で、相手は悪魔。悪魔との妥協は許されない。敵と犯罪者の区別がつかず、戦争とは犯罪者を退治する保安官。自分が正義で敵を悪魔だと思う戦争を宗教戦争という。
    ・総力戦として戦われた世界大戦により、決闘としての戦争は終焉する。敵の銃後への攻撃が行われ、戦闘員と非戦闘員の峻別が否定された。
    ・教皇も皇帝も紛争の当事者となった欧州と違い、超然とした存在としての天皇がいたことが日本では大きかった。
    ・ウェストファリア体制下の法体系は戦国時代の日本そのもの。合戦はすべて目的限定戦争。日本にとって当たり前がが、欧州では当たり前でなかった。

  • 憲政史家の倉山満が、世界史について独自の分析を行った一冊。

    三十年戦争後のウェストファリア体制が近代国家の始まりで、そこから国際法が生まれ、現代にも影響を与えているというのは、目から鱗だった。

  • この本の著者である倉山氏には、「嘘だらけシリーズ」でお世話になっていますが、彼が最近(2016.4)、この本を書かれました。

    タイトルは、日本人だけが知らない本当の世界史、です。今から20年ほど前に、清水馨八郎氏の本を読んで、私が高校時代に習ってきた「西洋史」は、西洋人から見たものであることを感じました。

    それ以来、自分なりに世界史を学び直そうとは思っていますが、膨大な範囲であるため、なかなか良い本に巡り合うことができませんでした。

    この本は、特に、ウェストファリア体制以降の近代史について詳しく書かれていて、大変ためになりました。その国の成り立ちをある程度知っておくことは、ビジネスにおいても大事だと思っている私にとっては、この様な本が今後も出てくることを期待しています。自分の意見を確立する前に、様々な人の考え方を吸収したいと思っています。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本はアメリカにこそ敗北したが、その過程でオランダを踏みつぶし、大英帝国と刺し違えている、日本と戦ったがゆえに、オランダもイギリスもその版図を失った(p21)

    ・死刑制度は被害者遺族救済の側面がある犯人の死刑執行により心の決着をつけて、遺族は次に進めると考える(p30)

    ・ペルシア戦争、アレキサンダー大王、五賢帝の3つは、ヨーロッパ古代史の例外で、欧州がアジアに優越していた(p34)

    ・330年にコンスタンティヌス帝は、ローマからコンスタンティノープルへの遷都を決断し、395年に帝国は東西に分裂する。ローマ帝国は、西欧を切り捨てて生き延びようとした、西ローマ帝国は476年に滅亡する(p35)

    ・北方十字軍は、16世紀まで続き、スウェーデン、デンマーク、そして東プロイセンのドイツ騎士団を従えたポーランドが大国化していく(p41)

    ・イエスキリストはキリスト教の創始者ではない、生涯を通じてユダヤ教の改革派、パウロがキリスト教の創始者に仕立てた。ローマ教会が常にキリスト教会の頂点に位置したわけでない、東ローマ皇帝は、キリスト教と世俗の双方の頂点に立った(p42)

    ・異端の罪は異教の罪より重い、というのがカトリックの理屈(p43)

    ・フランス革命までパリの知識人の日常語はラテン語だった(p44)

    ・ルクセンブルク家は、百年の間に三代、神聖ローマ皇帝を輩出したヨーロッパ随一の名門である、だから独立国としていまも存立している(p50)

    ・ルネッサンスで主唱された「ヒューマニズム」は、人道主義の意味ではない。主(God)ではなく、人間を価値観の中心に据えるように、カトリックの教えにとらわれて生きるのをやめようという運動である(p53)

    ・贖宥状が許せなかったのは、プロテスタントの教義の本質は豫定説であり、天国にいくいかないは、人間に自由意思はなく教皇に贖宥状を発行する権利はないということ(p55)

    ・まず貿易商人が、次に宣教師が、最後に軍隊がやってくる。貿易で関係を持ち、その土地の住民を改宗させて手なずけておけば、領主に逆らうので簡単に軍事占領できる(p58)

    ・奈良時代にキリスト教は伝来していたが、景教ことネストリウス派であり、三大キリスト教宗派(カトリック、プロテスタント、正教会(オーソドックス))の全てがネストリウス派を異端としているので、日本のキリスト教徒が認めない(p63)

    ・宗教的狂熱から覚めた君主たち(イングランドのヘンリー8世やエリザベス1世、フランスのアンリ4世、ネーデルランドのウィルレム)はローマ教会の影響を排除しようとした、絶対主義の形成である(p63)

    ・1493年に教皇アレクサンドル6世が、トリデシリャス条約を制定、教皇子午線より東はポルトガル、西はスペインとしたが、異を唱えた国が2つある。イングランドと日本(p65)

    ・アルマダ撃破は日本では、スペイン無敵艦隊撃破とされるが、イングランド艦隊の精強さよりも、神風が勝利をもたらしている。アルマダは大艦隊の意味(p66)

    ・インドネシアではイングランドがオランダ海軍に完敗し、東アジアから100年の撤退を強いられていた、カトリックを敵視した日本人は、プロテスタントのオランダと通商を続けた。江戸幕府はカトリックを禁止した(p69、70)

    ・カトリックは主(GOD)を万能の絶対者として「奇跡」を根拠とする、プロテスタントは「豫定」を根拠とする。有色人種は天国に行けるように定められていないので、布教という無駄なことはしない(p70)

    ・朝廷と幕府の有力者を護衛していたのが、奉行衆(足利義教政権の親衛隊)で、戦国時代は応仁の乱ではなく、明応の政変において奉行衆が解体されたことに始まる(p78)

    ・応仁の乱は他の全ての大名を没落させたが、堺商人の利益を代表する細川氏と、博多商人のそれである大内氏だけは勢力拡大した(p74)

    ・30年戦争は最後の宗教戦争で、その和約である、ウェストファリア条約(1648)により現代の我々が想像する近代国家が出来上がった、それまでに13度の戦争、10の平和条約が結ばれた。当時、欧州の公用語であったラテン語の不使用が提議され、各国代表は自国語を使用した(p82、84)

    ・戦争とは、宣戦布告で始まり、講和条約発効で終了する法的状態のこと。これは双方の合意により解放され終結する(p89)

    ・ウェストファリア会議において、「異教徒を殺さなくてよい」という画期的な一言を言い放ったのが、戦勝国スウェーデンのクリスティーナ女王、「殺してはいけない」という価値観が欧州で定着するのは、まだ数百年かかる(p99、100)

    ・教皇も皇帝も紛争の当事者となった欧州と違い、超然とした存在として天皇がいたことが日本では大きかった(p104)

    ・1571年のレパントの海戦勝利は強調されるが、1538年にプレヴェッザの海戦で大敗したことは語らない、地中海の制海権はオスマン帝国に握られたままなので、大西洋に飛び出すしかなかった(p112)

    ・1683年にオスマン帝国がオーストリア・ハプスブルク家の首都ウィーンを包囲すると、欧州の殆どの国が援軍をだして、帝国は撃退された。カルロヴィッツ和平条約で、戦勝国となるオーストリアはオスマン帝国領ハンガリーを割譲させた。欧州が東方アジアに勝利した瞬間(p112)

    ・北方戦争でスウェーデンを叩き潰したのが、モスクワ大公国のピョートル大帝(戦勝以前は大公)、この戦争を記念して、国号をロシア帝国とした(p117)


    ・1763年、講和条約であるパリ条約が結ばれた時、イギリスは欧州の最強国となっただけでなく、世界の最強国となった。英仏墺普露の欧州5大国が世界の五大国となった年(p121)

    ・イギリスは、7年戦争で大ピットが得たアメリカは失ったが、インドとジブラルタルは死守している、ここでは勝った(p124)

    ・中世以来のフランスは、北部が南部を侵略していく歴史である、北部の首都パリでは知識人の公用語はラテン語であるが、フランス革命後に、フランス語を話し、フランス国民という意識を持つフランス国家が形成されていく(p129)

    ・傭兵に依存した軍隊は、戦場で逃げないように密集隊形、軍楽隊の太鼓に合わせて移動するので遅い、大砲が主武器となる時代には不向き。ナポレオンは散兵戦術を採用した、国民軍は傭兵の3倍の機動力を持ち、大砲の集中砲火で敵軍を個別撃破した(p130)

    ・有色人種である日本がロシアに勝利したからこそ、国際法が真に国際社会の法となった、200年に及ぶ欧州世界支配に風穴があいた(p168)

    ・連邦離脱を明言する南部諸州に対し、リンカーンは奴隷制維持を餌に翻意するように工作する、これに南西部諸州は従ったが、南東部は無視し、アメリカ連合国の建国を宣言した(p172)

    2016年5月5日作成

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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