一行怪談 (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569767369

作品紹介・あらすじ

「公園に垂れ下がる色とりどりの鯉のぼりに、一つだけ人間が混じっている。」一行のみで綴られる、奇妙で恐ろしい珠玉の怪談小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 1ページに1つ、一文だけで構成される怪談小説集。

    タイトルにも書いている通り1話1行程度ですので、ものすごく怖い……! というものではないですが、不思議で不気味な雰囲気が魅力。たった1文に、とても想像力を刺激されます。

    さらっと読めてしまうのですが、1ページ毎にもう少しこの世界を感じたいと思えるような1冊です。

  • これはすごい。たった一行でこんなに恐怖の世界に連れて行ってくれるなんて!
    ショートショートの極み!!
    ギュッとギュギュっと濃縮された言葉のひとつひとつにの向こう側に真っ暗な恐怖が広がっている。そこをこそりと覗き見る醍醐味。うーむ。これからこの「一行怪談」ってのが1つのジャンルになったりして。

  • たしかにゾクっとさせられる話がある。
    それ以上に、幻想的な世界、奇妙な世界、
    それとパロディ、ユーモア作のような
    クスリとさせられる話がある。
    それらが凄いのは、たった一言、一瞬で
    その世界、オチに突き落とされるスピード感、瞬発力。
    大喜利、ipponグランプリに通じるような。

  •  「罰として永遠の眠りにつく呪いをかけられた男が極稀に目を覚ました際、それまでの期間に見た悪夢を一行で書き記したもの」という前提のもとに(もしかすればこの「前提」すらも怪談の一篇に過ぎないのかも知れない)展開される一文きりの物語。
     想像力を働かせれば働かせるほど描き出される光景の異様さに気付く短文集。

     「怪談」と銘打ってはいるものの、どちらかといえばシュルレアリスム的絵画の文字起こし版という印象が強いか。たとえばルネ・マグリットの描き出すあの得も言われぬ不可解な景色が好きな人間なんかには馴染みやすい気がする(と言ってみたものの私がマグリットの絵画が好きなだけです)。
     シュルレアリスム的な光景、日常の中にある非日常、純粋に「わけのわからない」類の話等々、ページを捲るごとに様々な「不気味さ」「薄気味の悪さ」を体験出来る一方で、構成の性質上一気に読むと途中で中弛みを感じる(どうしても単調さは拭えないものね)ので、或いはその日の気分で適当なページを開いて読む、いう読み方もあるかも知れません。

     最後にお気に入りの一篇を。
     「幾度も地上が焼け野原となり、全ての死者が復活してまた滅んだ後もなお、あの人と墓の下で待ち合わせるという約束を、私は頑なに守り続けている。」(本文150頁)
     怪談的要素もシュルレアリスム的要素も無い一篇ですが不思議な切なさがある「悪夢」です。

  • 一行の中に織り込まれた日常とそこから数歩離れた異界とが溶け合って、驚くほどの密度で物語が存在している。
    暇つぶしに買ったのだけど、とても面白かった。
    ページを次々捲りたいのだけれど、今の一行をもう一回読みふけりたい。そんな気持ちで読了。
    最後のページの一行が一番怖い。

  • 1ページ1文の掌編集。
    怪談というよりも奇妙な気分になるフックのような感じだし、物語というよりも詩集に近い。

    一行怪談のルールとして詞ではなく物語であり、その中でも怪談である。一続きの文章。とあるけれど、文章が上手いので引っかからずに読めるのがいい。二つに分けるとかえってつっかえそうになり、そうなると想像しにくくなる。
    自発的に想像するよりも、ふっと湧き上がるものの方がかえって怖い?

  • その名の通り怪談を1行で表現するという内容。「ちょっと怖い」から「かなり怖い」まである印象。

  • たった一行で怖い。
    その背後に何がいるのか、探れば探るほど怖い。

  • 怪談だから怖いと思ってたけど不思議な話が一行で書かれている感じ(もちろんゾッとするのもある)
    恋をした日に家の猫が死んでいた話と、飼い猫が妻に愛を語る話と、恋文兼遺書を燃やしてくれと言った話が好き

  • 一行だけの怪談集

    一行怪談凡例
    ・題名は入らない。
    ・文章に句点は一つ。
    ・詩ではなく物語である。
    ・物語の中でも怪談に近い
    ・以上を踏まえた一続きの文章。


    異様な状況を表した一行だけの文章
    「怪談」と銘打ってあるので、その背景を想像すると怖いものがある

    しかし怪談ではなく、SF、ギャグ、ファンタジーとして想像できるものも多数
    あと、風刺の効いたものもある

    「世にも奇妙な物語」系の話を一行で表現したというのが一番近い気がする



    個人的に「怪談じゃないかも?」と思ったもの

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    夕方にあの坂道に近づかない方がいいのは、いつも午後5時のサイレンとともに、汗だくのオバさんが自転車のペダルを必死にこぎながら、急坂をゆっくり下っていくのに出くわすからだ。
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    考えようによっては、日常の謎じゃね?


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    つい携帯電話を盗み見たばかりに、恋人が「の」という人物を「の」の字だけでやりとりしている、何十通ものメールの意味に悩まなければならなくなった。
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    モールス信号とか、暗号化してたんじゃね?


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    ひょんなことから「肉」と呼ばれるものの本当の正体を知り、慌てて皆に教えてまわるも、そんなことすら知らなかったのかと呆れられてしまう。
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    SFで植物性の疑似肉という可能性もある


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    転校先で渡された生徒手帳にある「渡辺について話すことを禁ずる」という校則について尋ねても、みんな苦笑いするだけで何も話してくれない。
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    「脳みそぷるん」という不条理ギャグマンガで、「山田」系のネタで似たようなものが多数
    芸人さんがこんなネタをやるのもありえそう


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    ある朝目覚めると、全ての家具に噛み跡がついていた。
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    子供とかペットとかの仕業では?


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    無限の解像度をもつ一枚の風景写真を、どこまでも拡大し続ける仕事に任命された。
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    フラクタル構造のGIFを見るようなもの?



    読む人によって、どれが刺さるかは違うと思う
    物語のパターンを知っている人や、背景を色々と想像できる人ならかなり面白いのではなかろうか?

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著者プロフィール

怪談研究家。1980年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、ライター・
編集活動を開始。怪談サークル「とうもろこしの会」の会長をつとめ、
オカルトや怪談の研究をライフワークに。テレビ番組「クレイジージ
ャーニー」では日本の禁足地を案内するほか各メディアで活動中。
著書に『一生忘れない怖い話の語り方』(KADOKAWA)、『オカルト探
偵ヨシダの実話怪談』シリーズ1~4巻(岩崎書店)、『怖いうわさ 
ぼくらの都市伝説』シリーズ1~5巻(教育画劇)、『恐怖実話
怪の残香』(竹書房)、『日めくり怪談』(集英社)、『禁足地巡礼』
(扶桑社)、『一行怪談(一)(二)』(PHP研究所)など多数。

「2022年 『現代怪談考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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