ロボットは涙を流すか (PHPサイエンス・ワールド新書 14)

  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569775630

作品紹介・あらすじ

機能的・哲学的に難解なロボットの諸問題を、SF映画の話題作を通して分かりやすく論じる。複雑なロボットの骨格を学ぶには『ターミネーター』を、ロボットと我々の間に生じる「哲学的な障壁」の教本は『A.I.』『サロゲート』、C‐3POとR2‐D2はロボットの社会における役割を教えてくれる。果たしてロボットはどこまで人間に近づけるのか?知能ロボティクスの第一人者が考える近未来が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 映画の中のロボットの描かれ方を通して、
    研究につながるリアルさ、人間を問う視線のありかたなどを検証。
    「社会のループ」に入れれば、
    ロボットであっても人間と同じ、
    コミュニケーションの取れる存在として認識される。
    人間にしたって、その心が本当にあるのかどうかを
    検証することはできないのだから。
    ジェミノイドのスイッチを切ることで、
    普段は目にすることのない「死」を感じるというくだりは
    ちょっとショックだったなー。
    ロボットに競争心を持たせることの可能性には、
    危ない部分もはらんでいると思うが、
    なかなか興味深い視点だと思った。
    「マトリックス」「サロゲート」ちゃんと見てみようかな。

  • 夏目漱石アンドロイドの話を新聞で見かけて、そういえばたしか…とこの本を思い出して読んでみた。
    ロボットはそこまで人間とかけ離れた存在でもないんですよ、というのが一冊のなかに溢れに溢れていて、これから実用化されるものが増えるであろう未来が楽しみになってきた。あと、最後の最後で「攻殻機動隊」が出てきてテンションあがった! たしかにあれもロボットの一種なのであった。あまりというか、ほぼ意識してなかったけど。

  • SF映画と現実のロボット技術との対比の中で、「ロボットとは何か?」「人間とは何か?」を考察していくという内容。

    何かについて考察するときは、それに非常に近いものとの対比することで、「その差はどこから生まれているのか」を考えるというのが一番ストレートなやり方になる。

    ほとんど人間の代わりになるロボットが出てくるSFの世界では、「じゃあ、ロボットと人間の線引きはどこになるんだろう」という疑問を考えずにはいられなくなる。それは、やはり私たちが人間であり、人間に近いものに注目し、その差を意識する、という性質を持っているからだろう。たぶん究極的に言えば、それが人間かどうかを気にするかどうか、というのが「人間らしさ」なのかもしれない。

    あげられている映画の内容について結構触れられているので、できればある程度映画は見てからの方がより楽しめるだろう。
    「アイ、ロボット」「ブレードランナー」「サロゲート」「マトリックス」あたりはチェックしておきたい。

    あと、もちろん「攻殻機動隊」も。

  • 3:こちらは工学的アプローチからロボット、アンドロイドとヒトとの関わりについて述べたもの。人は人工皮膚を張ったアンドロイドに体温を感じるそうです。ふーむ。ジェミノイド一回見てみたいなあ。

  • 2017年12月12日読了。自分そっくりのロボット「ジェミノイド」で有名な石黒教授とサイエンスライターの池谷氏の対話から構成された、という本。教授の研究成果の様々なロボットたちの紹介と、SF映画に描かれてきたロボット・アンドロイドに対する紹介が折り重なっておりとても読みやすく、興味を引く。「他人に対して怒ることができなかったが、意識して怒るようにしたらそのうち自然にスイッチが入るようになった」という教授の個人的な挿話も、いかにも研究者というか逆に人間臭いというか独特の面白さがある。「人間とは何か?」なんて答えもないしいつまでも考え続けられるものだが(「植物とは何か?」という問いだって、答えるのは簡単ではないだろう)、技術の進歩によって問いが深まり身近になり、それが人類の進化なのである、という考え方はとても面白い。

  • 最近ロボットやアンドロイドが気になるので取っ掛かりの一冊として。
    いくつかのSF映画の中でのロボットの扱われ方について、技術的な部分とともにストーリーにおける役割、意味づけを考察。「心」が存在するのかどうか、実は確かめようがないのは人間もロボットも同じ。「心」は他者との関係において承認され付与される。話しかければ頷き、笑い、返答し、コミュニケーションを取れるロボットは社会の一員として承認され得る。ではその時、ロボットと人間の違いはなにか、つまり、人間を人間たらしめるものはなにか?
    ロボットの動きを人間に近づける技術、そして人間と「人間のようにふるまうもの」をめぐる哲学的な問い、という大きくふたつのアプローチからの議論が平易な言葉で展開。おもしろかったー、入り口に選んでよかったです。

  • 石黒教授へのインタビュー?のような共同著作。
    スタートレックやマトリックス、サロゲートにターミネーターなど色んなSF映画を引き合いに出してアンドロイドに関して語っている本。

    現在技術的に出来ること出来ない事、人間の感性によっての対応の話とか相変わらず面白い。

  • 義手など機械化した人間を人間でないとは言えない。一方で人間生活の中に組み込まれ、人間と同じ役割を果たすロボットを人間でないとは言えない。人間とロボットの境界はどこなのか。

    sf映画のアンドロイドはどれも「人間になりたい」と思っている。「人間とは何か」が問われる。
    ロボットのシステムにゆらぎを追加すると効率良く行動できる。 

  • 様々なSF映画を題材にして、ロボットと人間や社会との関わりを考察している科学新書。大して分量もないので読みやすい。

    著者は、いきなりプロローグで「人間とロボットのあいだに明確な境界はない」と言い切ってしまう。生き物を勉強してきた自分にとっても、「人間が核酸とタンパク質のロボットである」と言うことに抵抗はない。それならば「ロボットが金属の人間だ」と言ってしまうことも、十分うなずける考えである。

    もちろん人間とロボットは違うモノだと考える人もいると思う。そこで特に言われるのは、感情の欠落だろう。しかしむしろ著者は「アンドロイドだから、いくらでも表情を豊かにすることができる」と述べている。あらかじめ様々な表情と身振りができるようにして、さらに言葉も表現力豊かなものをアーカイブしておけば、表現することに関して人間が敵うはずがない、という訳である。これは全くその通りで、人間であれば「あの時こう伝えられたら良かったのに」という場面は、ロボットから無くすことができるはずである。逆にその不完全さにこそ人間性があるのだと言われたならば、ある程度ロボットの機能を落とせばいい話なのだし。

    それは不可能だ、と思われるかもしれないが、実際それは現実になってきているように思う。例えば質問をすると答えてくれるSiriは、データベースから言葉を紡ぐことができるという証明である。それに、自分はあまり知らないのだけれど、仮想の彼女を作るという某携帯ゲームにハマって、ゲーム機片手に一人でデート旅行するような人もいたらしい(今もいる?)。これなんかはまさに、人間が錯覚してしまうほどに、造られた感情が本物の感情に近付いてきている現れではないだろうか。

    しかし、だからこそ著者は「人間は何をやるべきか」「人間とは何か」と何度も問うている。冒頭で「人間とロボットのあいだに明確な境界はない」と宣言した人物が、実は最も人間とロボットが違う存在なのだと信じたい人間なのかもしれない。

  • ロボット研究をここまで哲学的に見ることができるのが石黒教授のすごいところであろう.たくさんのロボットに関連した映画がネタに出てくるが,映画の見方も一味違う.

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著者プロフィール

石黒 浩
ロボット学者、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(栄誉教授)。1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了(工学博士)後、京都大学大学院情報学研究科助教授、大阪大学大学院工学研究科教授を経て、2009年より現職。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。オーフス大学(デンマーク)名誉博士。遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞、2015年文部科学大臣表彰及びシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞、2020年立石賞受賞。『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』(講談社現代新書)、『どうすれば「人」 を創れるか アンドロイドになった私』(新潮文庫)、『ロボットと人間 人とは何か』(岩波新書)など著書多数。

「2022年 『ロボット学者が語る「いのち」と「こころ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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