- Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569779171
作品紹介・あらすじ
美男子なのに後ろ向き、高貴な出なのにマイペース…それでもみんなに愛された「なりひら」の恋物語。
感想・レビュー・書評
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10/07/16 軽い在原業平もの。楽しく読める。
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稀代のプレイボーイ在原業平の恋の物語。歴史や古典で習う色んな人が出てきて色んな歌も出てきて。
でも「くん」付けで呼び合い、口語で語り合っているのでほんの隣にいる誰かさんのようで親しみやすい。
業平といえば愛知県人なら間違いなく「かきつばた」の句を思い浮かべるだろうな。授業で習ったような切実さがなくあっけらかんとしていてちょっとびっくりしたけど。 -
在原業平を主人公にした物語。伊勢物語を読んでると、おお、こんなふうに勝手に解釈したのか(じゃなくて、オリジナリティとしたのか、か)と、苦笑しながら読み進めてしまう感がないわけではなかったが、ま、藤原高子との恋愛は有名な話として伝わっているし、惟喬親王とのこともちゃんと書かれているし、もちろん、通い路の関守もあるし、芥川も、都鳥も。個人的には鷹狩りのことが頭の中でクリアになったのが、ストーリー展開とは別に収穫だった(って、私の認識不足というか勉強不足だったな、って思ったのだった)。
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このなりひらの恋の話を読んでいると、在原業平ってなんかバカっぽいなあと思います。
恋のかけひきと歌には秀でていても、政治的にはからきしですな。視野が狭く近視眼的。主人公がへなちょこでは小説があまり面白くならない・・・・。 -
つまんない男のつまんないところを強調して書くとこうなるのか?最初の章の若い頃の話ならこういう口調(文体)で書いているのも雰囲気出ていて面白かったけど、最後の最後、五十代後半までこれで押し通すのはちょっとどうか?と思ってしまった。でも、まだ地の文は軽い調子で押し通してもいいけれど、歌の訳はひどすぎました。欲もやる気も能力も運もないけれど、顔と血の良さと歌のうまさだけが自慢なんだから、歌をきれいに楽しませて欲しかったです。最初のフタツくらいからは訳文は目に入れないようにして元の歌だけ楽しませていただきましたよ。
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作者のあとがきにあるように「軽い小説」。
帝の血をひき美男子だけど、ぱっとしないなりひら。
物語も私にはいまいちぱっとしなかった。
収穫は遠い昔に習った伊勢物語の背景がわかったこと。
8歳の高子を見初めるって…ロリコン?
こういうのも源氏のモデルの一人とも言われる所以かな。 -
同じ著者による菅原道真の本を読んで、まあまあ面白かったので、この本も借りて読んでみました。
イケメンで和歌の達人である業平は、祖父が平城天皇、ということで、とっても血筋がよいのですが、その人生は、決して順風満帆ではなく、それゆえ、イケメンで和歌の達人であっても、凡人が共感できる内容になっています。
小野小町や菅原道真など、業平と同じ時代を過ごしつつも、世代が異なる人との関係性については、こういう本を読むと、印象に残りますね。
ある意味、いい勉強になりました。 -
少し前に読んだ「菅原道真 見果てぬ夢」の作者さんが書いた「なりひら」のお話。すごーく楽しく読ませてもらえた上に、業平、道真の周りの人間関係を整理できたので★5つ!
「菅原道真」のほうは、資料を元に淡々と道真の立場と考えを推測した小説になっていたけれど、こちらの小説は、在原業平の小説ではなく、業平の資料を元にちょっと創作しちゃった「なりひら」くんというキャラクタの物語。
当時の権力争いの構図や、事件などを踏まえた上に、伊勢物語に描かれたようなちょっと脚色された物語を融合させて、「皇族の血を引いていて美男子で和歌が得意だけど、政治にとんと興味がなくて、高子にぞっこんだけど、引き裂かれてしょぼんと生きてる後ろ向き美青年(〜美中年w)」というキャラクタを創作しての「なりひら像」を、ラノベみたいなノリでサラサラと書いてある。読みやすいうえに、歴史や古典の上澄みをしっかりおさらいできるという優れもの!
物語の中に、業平や当時の歌人たちの和歌がたくさん引用されていて、その現代語訳がまた楽しい。「古典の現代語訳」ではなく、ラノベの主人公「なりひらくん」ならこんな風に表現しちゃうだろうなぁ、かっこ笑い、的な気軽さ。
扉に書かれていたのはこんな言葉。
「この世に 桜なんてものがなければ 春の心も のどかなんだけどね」
このページを見ただけで、この小説の雰囲気がわかりますよね。素晴らしいデザインだと思いました。
最後の方は、紀長谷雄との交流記みたいになっていたのも楽しかった。途中で交流のある天才少年道真くんもいい味が出ていて◎。
楽しい小説でした。
これ、文庫本になってくれないかな。いや、電子書籍になってくれないかな。気軽に読み返したい! -
「なにをやってもダメダメ。とぼけたなりひらくんの恋物語 」
桓武帝の皇統に連なる血筋ながら臣下に下り不遇で、美男だけどどこか冴えない在原業平。世にプレイボーイと噂されるも、そのイメージからはかけ離れた彼の一世一代の恋とははたして?
帝のお妃候補・高子(たかいこ)を密かに盗み出す「伊勢物語」のエピソードから光源氏なみのプレイボーイの良い男を想像してましたが。本書では一転、一途だがまぬけたところもある「なりひらくん」。
現代のサラリーマンよろしく、表舞台からははずされ出世からは縁遠い不遇の同輩を見つけては酒飲んで亀の歩みより遅い出世ペースを嘆いたりしてる。
21歳年下で当時まだ少年の菅原道真に「…のぼせやすくて、世をすねていて、態度がでかく、高望みをし、目立ちたがりやです。ねえ、それではだれも評価してくれませんよ」などと指摘され「どうして、わたしのこと、知っているのですか」って…。
そんな彼の一世一代の恋も奮ってる。蔵人として宮中の雑事に携わっていた17歳のなりひらくんは、五節舞で帝のお妃候補として舞う姫のつきそいの童女に選ばれた藤原高子に一目惚れする。本番前に童女たちの点検に現れたなりひらくんに向かって8歳の高子、言い放つ。
「あんた、だれ」
高ビーで時にはS入っちゃってるのではと思わせる名前顔負けの姫キャラの高子と「この女の子の、しもべになりたい」と彼女を生涯思い続けたなりひらくんの恋の顛末。
「伊勢物語」ではこの二人の恋の逃避行を描いた芥川の段が有名なわけだが、この恋のクライマックスで業平は結局、高子を兄たちに取り返されてしまう。伊勢物語の業平は「鬼にさらわれた」みたいなロマンチックなことを言うわけだけど、これも帝のお妃候補を後先考えずにかっさらって結局取り返されてるってところがやっぱり「なりひらくん」だよね。とどめは、妹を帝の妃に上げて出世を画策しようとしていた兄・国経に妹を傷ものにしたと責められても「それなら、わたしの妻に、ください」…。
著者は業平について、戦乱はなかったもののそれなりにどろどろの政争のあった平安の世で、のんきに恋をし歌を詠んでいた特異な人物と評している。なりひらくん本人が嘆くように、確かに不遇ではあったかもしれないが、見ようによっては権力争いに傷つくこともなくマイペースで気楽な人生だったかもね。